横浜院長のひとりごと No.273 できるけど疲れる

横浜院長の柏です。私事に取り紛れブログをサボっているうちに年末となってしまいました。年内最後のエントリーとなります。年末年始、当院は例年通り12月29日から1月3日までお休みとさせていただきます。年末年始は混み合うことが予想されますので、早めのご予約をお願いしますね。

ちょっと時間がたってしまいましたが、先月NHKで放送された怒涛の発達障害特集、ご覧になりましたか。アバターによる仮想空間でのコミュニティ(これは再放送でしたが)とか職場改革の話とか、なかなか見ごたえがありましたが、私がなかでも「おっ」と思ったのがこの言葉です。


「できる」と「できない」の間に「できるけど疲れる」がある


愛知コロニーの吉川徹先生(Twitterいつもフォローさせていただいております)の言葉ですが、なにかとてもしっくり来ます。まあ言葉通りにとれば誰にでも、私にでもあることですが、発達障害者の場合、この「疲れる」の疲れ方の度合いが...なんと申しますか、質が違います。特性から考えて苦手なこと、不安が強いことを無理してするため、なんでそんなに疲れるの?というくらい疲れてしまいます。相手の意図をうまく汲めないまま人とつきあう。こだわりたいところを曲げて仕事をする。どうしても周囲に注意が行ってしまう中、集中力を保つ。音に敏感なのに、職場の音を我慢しながら仕事をする、などなど。これまでの人生で遅ればせながらも周囲のやり方に気づき、それを真似ようと頑張る。頑張ればなんとかできるけど、疲れる。なんとかできるから、周囲からは「やればできるじゃないか」と見られ、次にできないとサボっていると見られ、他者評価も自己評価も下がってしまう...こうした悪循環が日常的に起こっているのです。
ゲーム好きの方には、HPの減りが異常に早い状態といえばわかりやすいでしょうか。防御力が足りず、相手の攻撃を露骨にくらってしまう状態ですね。対策としては、防具をしっかりつける(職場環境調整、ADHD治療薬、二次障害の治療など)ことや、強い敵・相性の悪い敵のいるフィールドに入らない(職種、職場選択など)ことなどが大切となるでしょう。
この「できるけど(質的に)疲れる」というのは、発達障害でとくに明らかですが、精神障害でも同じことが言えます。うつ病、強迫性障害、統合失調症などなど、病的状態のまま日常活動・就労を行うのは同じく早いHPの減り、そしてHPの回復の遅れをもたらします。うつ病で病状が強い場合、宿屋で一晩寝ても、ドラクエみたいにきれいに回復しないのです。その場合、いったん十分期間バトルフィールドを離れて(休職して)しっかりとHPを回復させないといけません。薬物療法(抗うつ薬)はHPを早く回復させ、また減りを少なくする効果が期待されます。ただの疲れ(宿屋で一晩寝れば回復する)とは質的に異なるものであることをしっかりと認識しなくてはいけません。

hitorigoto-273a.jpgさて、年の瀬に発達障害本の真打ちが出てきました。大学同期の盟友、本田秀夫先生の「発達障害〜生きづらさを抱える少数派の「種族」たち」です。
おもに、いわゆる「グレーゾーン」と言われる、診断基準は満たさないが(あるいは軽いが)特性を認め、あるいはASD, ADHD, LDに縦断的な特性を持ちうるような人たちについての記載が中心となっています。当事者の方々、ご家族や周囲の方々、自分もそうではないか?と思う人達、支援者の方々、みなにお薦めさせていただきます。私自身もいろいろ気付かされるところが多い本でした。
ADH(なぜDがついていないか...本をお読みください)の過集中をASの特性(こだわり)の重複ととらえるところ(p.141)など、私と意見が違うところもあります。そのあたりは年明けからぽつぽつ、ここで書いていくことにしましょう。
今日のテーマとの関係では、聴覚過敏の方に音を我慢するよう訓練しろというのは、われわれが「黒板をキーと引っ掻く音」を我慢するよう訓練しろといわれるのと同じ、といった内容の記載がありました。考えるだけで鳥肌たってきまして(ワタシコレダイノニガテ(^^;;)、彼らの困りごとをイメージしやすいですよね。

では今年最後の今日の一曲。年の瀬の夜、NHK-FMでダヴィッド・オイストラフ特集を毎晩楽しみに聴いているのですが、今夜(12/27)聴いたバッハの二つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043、オイストラフとメニューインの素晴らしい掛け合いでした。動画がありましたのでどうぞ。バッハを聴きながら、皆様よいお年を。新年も当院、および当ブログをよろしくご愛顧のほどお願いいたします。


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