横浜院長のひとりごと No.284 発達障害とLGBT

横浜院長の柏です。今年は桜の開花後に花冷えが続き、おかげで桜を長く楽しめましたね。今日は、冷たい雨の中東京医科歯科大学のスタバでドヤリング中です。

さて、「翔んで埼玉」なる映画が話題となっていたようです。前回出てきたGacktも出演していますね。埼玉県民をディスることがテーマのようですが、まぁそのまた奥、秘境グンマー出身としてはそれはどうでもいいことっす。ただ、私が大学教養部のとき、駒場祭で隣のクラスが自主制作映画を作っていたんですが、これがたしか「埼玉県民はこうして文字を覚えた」「駅で『お前埼玉県人だな!』と逮捕される」とかなんかそんな内容でして、なんだこの映画パクリじゃんか、作者誰じゃい...と調べたらなんとミーちゃん、もとい魔夜峰央大先生ではないですか!私はそれこそ大学教養部の頃に当時連載中の「パタリロ!」にはまっておりまして、コミックスもかなり買いました(今回調べて、今でもパタリロ!は現役連載中と知りかなりびっくり)。魔夜峰央先生は、もともと怪談・怪奇系の漫画を得意としておりまして、パタリロ2巻にオマケでついてる牡丹燈籠って怪談物の短編があるのですが、これが怖い。ホンマに怖くて、今思い出しても鳥肌が立つほどです。
ではここで今日の一曲、パタリロ!のエンディング「美しさは罪」をどうぞ。

はてさて、パタリロ!を知らないそこのあなた、この動画を見てどんなアニメを想像しましたか。「ベルばら」路線の美女美少年漫画と思う人がいてもおかしくないですよね。実は、パタリロ!はその本質はスーパーギャグマンガです。全盛期のギャグのセンスたるや余人を持って代えられぬ魅力・魔力にあふれています。しかし、ギャグがパタリロ!の縦線だとするともうひとつ、横線と言うべきものがあります。それは動画からも伺われる美少年・同性愛というディープなテーマなのです。

さて、パタリロ!から精神医学のお話へ。「同性愛」は病気ではありませんので精神科診療の対象とはなりませんが、「性的違和感」となるとそれに伴う精神的・身体的困難が大きいことから、そうしたテーマでご来院いただく方はいらっしゃいます。俗にLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)と呼ばれる方は最新の調査では人口の8.9%とのことで、左利きやAB型の方の割合とほぼ同じとのこと。一般の感覚よりずっと大きな数字ではないでしょうか。LGBTのT, トランスジェンダーとはこころと体の性別に違和感を覚えている人たちのことですが、その一部に性同一性障害(gender identity disorder; GIDとも呼びます)の方があります。ヒトは受精の段階で男女の身体の性別(男性は性染色体XY, 女性はXX)が決まりますが、性別の意識(こころの性別)は胎児の間、適切なタイミングでホルモンのシャワーを浴びることで完成すると言われています。GIDの方の場合、このホルモンシャワーが適切なタイミングで行われないことにより、体とこころの性別にズレが生じてしまう、というのが定説となっています。この場合、体とこころの性別が完全に反対となるため、性別適合手術を積極的に希望される方が多いようです。

当院では発達障害の方を多く診察させていただいておりますが、発達障害、とくに自閉スペクトラム症(ASD)の方の中にはトランスジェンダーをはじめ、かなりの割合でLGBT傾向をお持ちの方があり、治療的にもそこを避けては通れないことがしばしばあります。彼らの場合、GIDの場合のようにホルモンシャワーの問題ではなく、ASDの本質に関わる発達課題がその原因と考えられます。No.216で内海健先生の説をご紹介しました。ASDの方は自分以外の他者の存在に気づくのが遅れ、自他が地続きとなる。(ここからは私の仮説ですが)そうなると「自分は何者か」についての認識が育ちにくく、性別を含めたアイデンティティの育ち方が定型発達者とは違った形をとるのではないでしょうか。他者を客観的に見る目が育ってはじめて、自らのことも客観的に考えることができる。自分が何者か、そこを捉える力が弱いASDの方には、その方の特性について客観的にそれを捉え、分析して本人に伝えていくサポーターの存在が大きな力になります。仕事や生活のあり方については、得意と苦手、できることとできないことの凸凹を知ることで大きな改善が期待できます。LGBTに関わる問題については、無理に変えようはとせず、自分の志向性を大切にしていけるように支持的に関わり、周囲の理解を求めていくことでストレスを軽減していくことが基本となります。さて、このように発達障害とLGBTの問題を考えていくと、性別のアイデンティティというのは染色体とホルモンだけで決まるわけではなく、生まれたあとの周囲との関わりの中でのアイデンティティの確立と関わる部分も大きいことがわかります。ASDでとくにGIDの人が多いということはない、と報告されていることも裏付けの一つになるかと思います。

平成もあと半月あまり。GWの10連休、当院は例によって(もともと休診日の日曜以外は)通常診療いたします(27日のみ20時まで、他は祝日扱いで17時まで)。私自身は4/30〜5/4まで5連勤です(泣)。GWもお仕事の皆さん、一緒に頑張りましょうね。ではまた。

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