横浜院長のひとりごと No.314 発達障害と複雑性PTSD

横浜院長の柏です。新型コロナウイルスに関して政府から方針が出ています。私たちのクリニックでも、ご来院いただく方々の感染予防に細心の注意を払っております。当院は心療内科・精神科専門医療機関ですので、身体疾患・呼吸器疾患の診療はできません。当面の間、体調の悪い方、熱のある方は原則として来院をお控えいただき、お薬が必要であれば健康なご家族や代理人による代理受診をお願いいたします。それも難しい場合は無理に来院されず、まずはお電話でご相談いただければと存じます。院内感染防止のため、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。
コロナは私自身も影響を受けておりまして、3月には西日本と中日本でそれぞれ講演会を頼まれていたのですが、いずれも中止となりました。楽しみにしていたので残念(T_T)。7日と14日の午後を休診とお伝えしていたのですが、通常通り診療いたします。
その新型コロナへの不安が強い方も増えてきましたね。前から申し上げておりますが、基本的には厚労省の通達どおり、手洗いを石鹸で十分に行い、可能であればアルコール消毒も外出後は必ず、そしてこまめに行うことが一般市民にとっては一番大切なことですね。ウイルス予防としてのマスクの効果は限られますので(私はないと思っている)、花粉症の方優先にしてあげたいところですね。
厚労省は頑張っており頭の下がる思いではあるのですが、船に関しては岩田教授の指摘通り、ちょっと下手を打ちましたね。桜を見る会対応みたいな、そんなやり方では人々は誤魔化し切れてもウイルスには通用しません。ウイルスや病気は厳然と存在するものであり、忖度は効かないのです。アメリカのように CDC(疾病予防管理センター)を作らないとだめだと痛感させられます。新型コロナ対応もそうですが、ここでしつこく書いてる子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)も、反ワクチン運動家やそこに便乗する弁護士に忖度し、医学的常識を無視する構図は全く同じです。私は、日本版CDCを創設し、強力な力を与えて国民の健康維持に資するべきだと思います。このまま行くと日本から他国への入国を拒まれ、そのためアメリカ留学中の長男が帰ってこれなくなる事態もあるそうなので何とかして欲しいところです。子宮頸がんも、このままでは地球上で日本と北朝鮮だけの風土病になるよ、いやホンマに。これはもう健康管理というより国家安全維持、国防に関する問題です。安倍総理、CDCと、あと宇宙人襲来に備えてウルトラ警備隊の創設よろです。

さて、前回までにPTSD、そして複雑性PTSDについてお話ししました。ここからは、発達障害と複雑性PTSDの関係性について書いていきましょう。発達障害を抱えた方々と多く、そして毎日お会いしているのですが、多くの方がなんらかの強い心の傷を負っており、一部の方では発達特性そのものよりも、むしろこちらのために強い苦悩を抱え、社会参加が制限されています。杉山登志郎先生たちが発達障害、愛着障害、トラウマ、複雑性PTSDと複合的な視点や治療の重要性を強調されていますが、これは大人の発達障害者の場合でも同じです。なぜ発達障害者がトラウマ関連の課題を抱えることが多いのか、そこには複合的な要因がありそうなのです。まとめてみると、

1. 記憶のしまわれ方の違い
2. 知覚・感覚の違い(過敏性)
3. 特性による親や周囲との関わり方の違い(困難)
4. 特性による親や周囲からの本人への関わり方の違い
5. 親や近親者自身の発達特性、愛着課題の可能性

といったポイントが上がってくるかと思います。これらが複合的に絡み合うことにより、愛着やトラウマの問題、その延長上の複雑性PTSDの問題が上積みされてくるようです。ではこれらについて、順に考えていくことにしましょう。なお、「発達障害」とひとくくりにしておりますが、当然ながらASD特性の強い方、ADHD特性の強い方などお一人お一人のバリエーションは大変大きいものです。ここでのお話は最大公約数的とならざるを得ません。それぞれの方が、個別によく分析頂く必要があることをお断りしておきます。
では今日は上記5つのポイントのうちサンダーバード1号、「記憶のしまわれ方の違い」についてお話します。これは、主にASD特性の強い方にあてはまります。ASD(自閉スペクトラム症)の方の中でも、とくにサヴァン症候群と呼ばれる方に一番特徴的なのですが、一度見たものをバシャッと写真に撮ったように記憶できる人がいます。これはテストの時とか便利だよなー、と思いますがいい事ばかりではないようで、これが「記憶できる」だけでなく「忘れられない」という特性もあったりするんですね。ヒトの脳はその数%しか活用されていないと言いますが、サヴァンの方々はそこをもっと有効に活用するといいますか、小さい頃からの様々な記憶を、ほとんど見たままにいくつになっても覚えている、という才能があるのです。記憶が重なりすぎると脳コンピュータが混線したりしないのかと思うのですが、彼らの脳はそれをしっかり積み重ねていく力を持っているようです。ただ問題なのは、嫌な記憶も残ってしまい、消えていかないということです。考えてみてください。私達は、試験の時には自分の記憶力の悪さを呪いますが、しかし記憶が続かないから、いやなことを忘れて明日に向かって歩き出せるわけです。いやな記憶がずっと続いてしまうとしたら...考えるだけでも恐ろしいことです。いやな記憶の中でも、虐待やネグレクト、いじめなどのいわゆるトラウマ記憶の場合、通常でもその時の恐怖などの感情の動きが大きいことから記憶に残りやすいのですが、こうした特性があるとその残りやすさが何倍にもなるものと考えられます。写真、というよりも超リアルな動画として、視覚だけではなくその時の音、におい、身体感覚から恐怖などの感情までがそれこそ「氷漬け」になって残ってしまうわけです。
一方のADHD特性の強い方ではどうでしょうか。ちょっと考えると、ADHDの方では不注意が強く忘れっぽいから、嫌なことがあってもすぐ忘れてしまうのではないか、となりそうですよね。たしかにそういう幸せな方もあるのですが、やはり出来事のレベルによるのだと思います。ADHDの注意障害は、不注意だけではなく厳密にいうと「注意力のムラ」すなわち注意力の変動性です。不注意もありますが、逆にハマるとすごい集中力を発揮することもある。トラウマ記憶の場合、ADHDの方でも特性はそちらに向かってしまい、結果的にASDの方同様にトラウマ記憶として固定されやすくなるものと考えられます。
ASDとADHD、本来の特性は全然違っている、というかむしろ逆を向いていることも多いのですが、結果的に起きている事態(困りごと)としてはこのように同じようなことが起きてくる...ここが発達障害の奥深いところだと思います。では次回以降で(脱線しなければ(^_^;;)サンダーバード2号〜5号についてお話して参りましょう。
hitorigoto-314.jpg今回のNHKファミリー・ヒストリーはフジコ・ヘミングでした。No.156でお話した弟の大月ウルフの若き日の写真も出てきて感無量。今日の一曲は、フジコの演奏でラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。なんと美しい旋律、美しい響きであることか...。ラヴェルの曲をご紹介するのはスカルボ以来、まだわずか2回めなんですねぇ。まだまだ紹介したい曲が沢山...クラシック音楽の世界は奥深いです。ではまた。


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