横浜院長のひとりごと No.312 陰謀論

hitorigoto-312a.jpg横浜院長の柏です。月曜はお休みなので、スーパーボウルを見ながら書いております。49ers(長男留学先のほぼ地元)ガンバレ〜。あ、負けてもた(^_^;;。
さて、PTSDのことを書いていたら、ちょうどNHKで安克昌先生の「心の傷を癒やすということ」がドラマ化されているではないですか。阪神・淡路大震災。未曾有の大災害は、多くの人々のこころを蝕み、PTSDをはじめとする多くの精神科患者を生み出しました。こうした非日常の世界の中でわれわれ精神科医は何ができるのか。30年以内に大地震が来る確率90%以上という横浜市。きたるべきその日に向けて、いろいろ考えさせられる良ドラマでした。次回最終回が楽しみです。

連日新型コロナウイルスのニュースが続き、不安な皆さんもいらっしゃるのではないでしょうか。SNS時代の今、いろいろな人がいろいろなことを書き込むことから情報が錯綜し、なかなか正しい情報にたどり着けないという大きな問題点があるわけです。政治や経済など、社会的なテーマで議論が盛り上がるのはいいことでしょう。このあたりはいろいろな考え方があり、どれが正解か決められるものではありません。しかし、医学になると「ある程度の」正解があります。「ある程度の」というのは、その時点での医学的水準に照らして、データからエビデンス(医学的根拠)があるとされる程度の、ということです。医学知識はどんどんアップデートされますので、数学や物理学などと比べると正解が変わることは確かにあります(まあ、数学、物理学だってアインシュタインの登場のように常識が変わることももちろんあるわけですが)。私が学生の頃には胃がんの原因の多くがピロリ菌などという話もなかったし、成人発達障害などせの字もありませんでした。時代とともに医学はどんどん進化していくのですが、そこにトンデモが入り込む余地を許してしまっているのも事実です。SNS社会はそのトンデモやデマを広げる役目を果たしてしまっていると言えるでしょう。新型コロナウイルスに関しては、日本が滅亡するとか中国の陰謀だとか紅茶が効くとかアルコール消毒は無意味とか...困った書き込みが一部見られるようです。今のところはインフルエンザや風疹・麻疹のほうがはるかに心配される状況であり、あわてず冷静に通常のインフルエンザ対策を励行していくことで(新型コロナウイルス対策としても)十分です。まずは手洗い、うがい、アルコール消毒、咳エチケット。厚労省のHPをご参照ください。(マスクは、感染者が感染を広げないためには有効ですが、予防の効果は限定的です。)アメリカでは新型コロナウイルスではまだ1人も死んでいない一方、今シーズンすでに1万人以上がインフルエンザで亡くなっています。新型コロナウイルスよりもまずインフルエンザ、そして麻疹・風疹対策をいつも通り行っていくことが大切です。情報源としては前述の厚労省のHPが基本ですが、いまいちわかりにくいところもあり、医学研究者のHPとして米国NIHの峰先生のブログがわかりやすく、かつ正しい情報が整理されています。なお、峰先生は私がここで何度も書いている子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)についても、大変わかりやすくまとめてくださっております。そちらもぜひ御覧ください。
人はとかく、よくわからない物に対して不安、恐怖を抱くもの。そうした状況で跋扈(ばっこ)しやすいのが「陰謀論」です。曰く、新型コロナウイルスは中国の生物兵器だ、WHOも中国と裏でつながっている、HPV(に限らず)ワクチン推進は製薬会社の陰謀だ、うんぬんかんぬん...。こうした陰謀論はネットで拡散され、よくわからないが不安な人の一部がそれに飛びつき、さらにその一部の人がもはや「妄想」といってよい思い込みに襲われる...。対象がはっきりしない不安より、(事実でないにせよ)対象がはっきりしている方が安心できる、という人のこころのジレンマが産む悲劇ともいえます。
hitorigoto-312b.jpg正体の見えない敵より、○○星人とかロケット団とか、敵が見えるほうが安心できるわけですね。しかしよくわからない時こそ落ち着いて、正しい知識を得るように努力することが大切なのです...これは病気になったときも同じですね。精神科領域の病気になられた皆さん、そしてその周囲の方々に少しでも正しい知識を届け、安心につながるよう、当ブログも頑張っていきたいと思います。
今日の一曲、前回に続いてピアノ連弾(デュオ)の小品にしましょう。フォーレ作曲ドリー組曲をユッセン兄弟のピアノでどうぞ。ではまた。

コメント(4)

柏先生、こんばんは。
今日は先生がこのブログを書かれておられる思いがわかりました。
精神科領域の病気になられた方、周囲の方々を、正しい知識で安心につなげてくださっているのですね。本当に感動いたしました。
音楽は、クラシックで一番大好きな「ドリーの子守歌」から始まるピアノ連弾曲でした。
フォーレは音楽院の院長のとき、まだ評価をされず苦しんでいた(のちに高名な作曲家になる)どなたかを支援した、とか優しい人柄について何かで読みました。フォーレの美しい音楽は柏先生のイメージと重なります。
前回のドビュッシーの小組曲に続いて、美しい音楽に癒されました。ありがとうございました。

先生、(たぶん)2回目のコメント失礼いたします。

一般の人は医療情報に対する知識がないので、
今回のように「未知のウィルス」と煽られると、誰しも不安を覚えるのではないでしょうか。
不安だからこそ、沢山流れてくる情報を信じてしまうのではないかと思います。本当は一つ一つ情報を吟味しないと、ですよね。
今回お教えいただいたリンク先を勉強して、不安に対して対処していきたいと思います。ありがとうございました。

音楽大好き先生
いつもコメントありがとうございます。
タモリ倶楽部で四万十川を見ました。美しいところですね!
「ドリーの子守歌」一番大好き、と来られましたか。わかります。
フォーレの曲はこれまでも何度も紹介しておりますが、他の作曲家にはない純粋な美しさがありますね。私も大好きですし、イメージと重なるというのは畏れ多くもありがたいお言葉です。
ブログで正しい知識を皆さんに届けなくてはいけない、という思いは前からあるのですが、子宮頸がんワクチンの問題で
衣笠先生@dr_kinugasa 峰先生@minesoh たぬきち先生@TOTB1984
といった皆さんがtwitterで頑張っておられるのを見て、勇気をもらっております。

名無しの権兵衛さん
コメントありがとうございます。
かつてNo.108でウイルスのことを書きましたが
https://www.heart-clinic.net/2014/08/no108-virus.html
「復活の日」のMM88とは違って、新型コロナウイルスそんなに恐れなくて大丈夫と考えています。
心配になるのは当然と思われますが、『正しく心配する」ことが大切ですね。
このテーマでは、専門家として
岩田先生@georgebest1969 EARL先生@EARL_Med_Twをフォローしております。

コメントする