横浜院長のひとりごと No.318 三密

横浜院長の柏です。今日はちょっと連載から脱線しますよ。

4月となりました。4月1日は当院の開院記念日でした。おかげさまで丸11年が経過し、12年目のスタートを切ることができました。当院も新型コロナウイルス感染症の影響は大きく、大変神経を使って診療、運営にあたっております。来院される皆さん、そして当院スタッフ、お互いの安全確保、院内感染予防のため、感冒症状のある方はあらかじめお電話いただくこと、また来院者、職員全員がマスク着用することを徹底したいと思います。ご協力をよろしくお願いいたします。

今年の4月1日は水曜日でしたが、実は開院日の2009年4月1日も水曜日だったんですね。私が担当している方でもお二人でしょうか、これが一瞬で計算できてしまう方がいますよね。自閉スペクトラム症(ASD)の中でも「サヴァン症候群」と呼ばれる、特定の分野で天才的な能力を発揮する方々です。神経回路の組み立て方の違いでしょうか、人間の脳の驚異をまざまざと見せつけられます。天才といえば、8年の査読をへてついに天才数学者・望月新一教授の新理論(ABC予想を証明するもの)の正しさが認められ論文となったとのこと。独創的すぎてほとんどの数学者にも理解できないという、これ以上ない天才ぶりでした。新型コロナで沈んだ2020年の明るい話題となりました。

そして4月2日は世界自閉症啓発デー。今年は新型コロナの影響でイベントは行われなかったようですが、シンボルカラーのブルーをこんな形でお祝いいたしましょうか。みんな、どの戦隊かわかるかな?




今日のテーマは「三密」です。壇蜜じゃないよ(^_^;;。感染爆発防止のため、今言われているのが「三密(密閉、密集、密接)」を避けましょう、というお話ですね。なんかネットでは、密接を接「近」として、シューキンペイ(集・近・閉)のほうが覚えやすいという話もあるようですが(^_^;;。
ウイルスは、人から人に移ることによって自らを広げていきます。人と人との接触を避けることで、人間界におけるウイルスの増殖を避けることができ、理論的には2週間これをしっかり続ければその間に感染者には抗体ができて感染力を失い、感染は広がらなくなるわけです。そのためのメッセージが三密回避なのですが、欧米ではソーシャルディスタンスというメッセージが使われ、例えばカリフォルニアでは隣の人と6フィート(約2m)離れることが義務付けられています。日本でも2m離れる、あるいはお互いにマスクをしていれば1mでよい、とするほうが感染予防からは効果的と考えます。

さてその三密ですが、本来は密教の用語でして、精選版 日本国語大辞典によると


仏語。秘密の身・口・意の三業。すなわち、仏の身体と言語と心によってなされる不思議なはたらき。また、密教の行者が手に契印を結ぶ身密と、口に真言を唱える口密(くみつ)と、心に本尊を観ずる意密とをいう。



私は仏教に詳しくはないのですが、精神科医の視点から少し考えてみましょう。


身・口・意、身体と言語と心。



身:身体=からだ。脳で考え、思うことはバーチャルですが、身体はあくまでもリアルです。本物なんです。脳が体を支配している、と考えがちですが、実際は逆で、かの養老孟司先生も「中枢は末梢の奴隷である」と喝破した通りです(No.175参照)。われわれは身体を離れて生きることはできません。


そして口:言語。口に真言を唱える=仏の言葉を覚えて口にすることで、仏の教えを学び、ものにするということでしょうか。私的な解釈ですが、ここでいう口:言語とは、知的な理解、他者からの伝達:コミュニケーション:社会性といったものが含まれていると思われます。


最後は意:心。知的な理解ではなく、自然にこころに浮かぶもの。五感を通して感じること、感性の動き。そんな意味合いでしょうか。

このへんで古参の読者の皆さんはピンときたかも?そうです。かつてNo.176でお話ししましたbody, mind, soulに非常に近いですよね。さすがingressは奥が深いです(^_^;;

メンタルヘルスにとっても、この3者は三位一体の関係にありまして、これらのバランスを考えることはとても大切です。臨床の場面では、「口」のところからほころびが来ることが多いでしょうか。複雑な現代社会。情報過多のこの時代において、「真言」にとどまらない多くの情報が脳に流れ込みます。新型コロナウイルスに関する連日の情報もしかり。そしてコミュニケーションにおけるストレス。発達障害の方々のみならず、多くの現代人が対人関係からストレスを受けています。ここから、脳内のバーチャルな神経回路に変調をきたすこととなります。それが一定のレベルを超えると、身や意にも影響が及びます。「意」すなわちこころ。心に本尊を観ずることができなくなる...正しいこと、美しいもの、真善美を捉える力が落ちてしまう...うつ病における精神運動抑制がその典型でしょうか。また逆に、例えばうつ病でエネルギーが低下すると、知的な理解や他者交流が困難になる、つまり「意」が一定以上下がると「口」も下がってしまうのです。

「身」の問題は、当然ですがまずはからだの病気です。からだの病気は、当然ながらメンタルにも(「口」にも「意」にも)大きな影響を与えます。逆に「口」や「意」の不調が「身」に及んだものが、心身症と呼ばれます。喘息、胃潰瘍などはとくにストレスとの関連が高く、また摂食障害や不眠なども体へのダメージが大きいところ。ここのところの大きな気温変化(一日で20℃下がったり)は、メンタルが揺らいでいる方でより強く体への影響があるように感じられます

精神科医としてこれら三位一体、いずれも軽視することなく診ていく必要があるなと改めて感じる次第です。

今日の一曲。チェリストのヨーヨー・マが、新型コロナウイルス医療の第一線に立つ医療従事者に向けての演奏を公開しています。バッハの無伴奏チェロ組曲第3番からサラバンド。心して聞きましょう。ではまた。



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