横浜院長のひとりごと No.322 コロナ・リテラシー

横浜院長の柏です。NHKで未来少年コナンのデジタルリマスター版の放映がはじまりました。月曜0:10から(つまり日曜の深夜ですね)です。どこから見ても宮崎アニメ。コロナ禍の現代にこそ、ぜひご覧頂きたいアニメです。「俺たちの世代はコナンといえば探偵じゃなくてこっちなんだよね」と言ったら次男にうそこけと言われましたが、本当です。はい。


診察室で新型コロナウイルス(以下、コロナと表記します)への不安を語る方も増えてきました。緊急事態宣言による外出自粛、仕事や学校で影響を受けている人もたくさんいます。テレビをつければどのチャンネルもコロナ、コロナ...まあ不安になるなというのが無理な状況ではありますが、ここをお読みの皆さんはぜひ「正しく」不安がるようにして下さい。
以前、No.204No.241で医療リテラシーについてお話しました。情報は正しい情報源から取ること。このテレビで言っていることは正しいのか。とある医師が言っていることは正しいのか。情報の質を見分け、正しい情報をつかむ能力、それが情報リテラシー、ここではコロナ・リテラシーなのです。私は一介の精神科医ですから感染症は専門外ですが、医学を習得し、かつて学生時代に半年間東大医科研でウイルスの研究をしていた者として、自分なりの考えを書いてみることにします。No.312の話ともかぶりますがご了承下さい。
コロナ・リテラシー。まず、基本の「き」は厚生労働省のサイトです。厚労省は、たしかにHPVワクチンの積極的接種推奨をしないなど問題はいろいろありますが、なんといっても日本のヘッドクォーター。日本のコロナ対策の基本方針、そしてデータがここにあります。
テレビはどうでしょうか。最悪なのは民放のワイドショーです。モーニングショーなんてもう最悪ですよ。よくわからない(医者ではない)おばちゃんと、ただのテレ朝社員のおっさんが、デマや誤報をもとに不安を煽る煽る。だいたいPCR, PCRの大合唱してんのもこの番組だよね。そういえば通院中の患者さんでも、会社からPCR検査してくるよう言われた、なんて方がありましたね。以前にも書きましたが、PCR検査は偽陰性が30%以上あるため、陰性という結果が出ても感染していない、とは言えません。つまり、安心のためとしては使えない検査なのです。テレビでまともなのはNHKだけですね(だからぶっつぶしちゃだめ、です)。
次はインターネット。Twitterでいろいろな医師、研究者をフォローしているとだんだん誰がまともで誰がトンデモかが見えてきます。ここでも、有名人が必ずしも正しいことを言っているわけではないので注意が必要です。以前ご紹介した峰先生のブログがコロナ専用になっており、ポータルサイトとして大変有用と思います。ところで上昌広さん、鉄門(東大医学部)の恥をさらすのはそろそろお止めなさい。先輩として忠告しておきます。


日本のここまでのコロナ対策は素晴らしいものでして、実際に感染者、死者数とも欧米より極めて少ない水準に留まっています。専門家会議は、限られた検査、医療資源からクラスター対策というわが国にあった方法を確立し、第1波を抑え込み、第2波に対しては緊急事態宣言による外出自粛により危機を乗り越えようとしています。自粛によりクラスターを追える水準まで感染者数を減らし、その水準になったら緊急事態宣言を解除してクラスター対策を徹底する。そしてまた第3波、第4波が来たら、再度緊急事態宣言(内容は適宜吟味していく)を行う。見事な戦略です。
中国、韓国などは徹底した検査や追跡で感染者の強力な封じ込めを行い、現時点では感染をほぼ収束させています。しかしそれは政府による個人情報管理を伴うもので、わが国で行えるかは疑問があります(個人的にはやってよいと思いますが、コンセンサスは得られないのでは)。その中韓でも、行動緩和とともに新たな感染が見られています。免疫をもつ者が少なく、ワクチンや治療薬がない間は、どうやっても流行が繰り返されます。現時点での治療薬の効果は限定的ですし、ワクチンは早くても1年、最悪できない可能性もあります(SARS, MERS, AIDSなどはワクチンまだできてません)。スペイン風邪の時と同様、2−3年にわたり流行が繰り返される可能性は十分にあると思います。オリンピック?なにそれ美味しいの?
というわけで、わが国のコロナ対策は世界に誇れるものです。卓越した方法論(西浦教授は天才だと思います)と、衛生観念の発達した国民性(私もアメリカに住んではっきり感じました)。政府の動きには苛立つことも多いですが、私は今の専門家会議の方向性を全面的に支持します。検査が足りていないから感染者を正しく数えていないという議論がありますが、死者数も圧倒的に少ない(人口比で言えば韓国より少ない)ことに注目すべきです。今どき肺炎で(最悪PCRができなくても)CTを取らないことはないわけで、医師が関わってのコロナ死であれば必ず補足されています。路上死などで見つかるケースが取り沙汰されていますが、数は限られています。死者数が多くないこと、同様に重症者についても総数は補足されていることから、たとえ軽症者や無症状者の見落としがあったとしても決定的な問題にはならないはずです。
最終的には、超過死亡数といって、流行のない時期と比べてどれくらい死亡数が増えているかを計算する指標がありますが、これの最新データが出てくることで明らかになると思われます。

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ワイドショーの「大変だ」デマに惑わされず、われわれにできることは不要不急の外出をせず、出るときはマスク着用、帰ったら石鹸でよく手を洗うこと。羽海野チカ先生のこのポスターはこちらからダウンロードできますよ。


ワイドショーでノイローゼになってしまいそうなあなた、テレビを消してゆったり音楽でもいかがですか。生誕250周年がコロナの年になってしまったベートーヴェン。演奏会の企画目白押しだったはずですが、厳しそうですね。今日はのんびりしたい時におすすめ、交響曲第6番「田園」をバーンスタイン指揮、ウィーン・フィルのライブ演奏でどうぞ。演奏のところを切り出しましたが、一番最初から見るとバーンスタインの解説が聞けます。ではまた。


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