横浜院長のひとりごと No.344 ASD=ニュータイプ論


横浜院長の柏です。今年最後のエントリーになります。山下埠頭のガンダム、地元ですしこれは行かねばですねぇ...チケット取らねば。ガンダムといえば、当ブログでもミノフスキー粒子について私の妄想(^_^;を書いたことがありましたね。


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今日は年末記念ということで(?)、ちょっとリキを入れて「妄想ニュータイプ論」一発行ってみましょう。ニュータイプ...そう、シャアとかララァ・スンとかのあれですよ。えっ、写真ですか?シャアですよ、シャア(No.339参照)。さて、ここ数回にわたってASD, ADHDと発達障害の成り立ちについて書いてきました。これはかつてNo.275でも書いたのですが、ぶっちゃけ、私はASD=ニュータイプだと思っています。今日はそのあたりの私の妄想を書いてみましょう。まずはお堅い進化論の話から。

No.048でふれましたが、人類は、生物の進化の過程の中でとくに脳を進化・巨大化させ、知力により万物の霊長たる地位を確立しました。しかし、今後さらに脳を進化させるには限界があることが知られています。理由は主に二つあります。一つ目は、人類が脳を巨大化させるのに大きな貢献をした、直立歩行そのものにあります。四足歩行の動物の場合、首が体の前に出ていることから、脳が大きくなるとその重さが首にまともにかかってしまいます。人類は直立歩行により、脳が首の真上にくるようになり、首の負荷を下げることができたため、脳をさらに大きくすることができたと考えられます(それでも、首や肩の負担は大きく、首や肩のこりとして現れます)。しかし、直立歩行により骨盤も変形します。これまで脚と背骨が90度曲がっていたため、お尻の方向に向かって大きな広がりを持つことができた骨盤は、直立歩行によりより小さくなる方向への変化を強いられることになりました。その結果、骨盤は小さく...つまり産道は細くなっていきました。赤ちゃんの脳がどんどん大きくなり、逆に産道がどんどん細くなると、当然ながら赤ちゃんが産道を通るのは難しくなってきます。その結果、あらゆる動物の中で人類が一番、お産が大変になっているわけです。動物が簡単に子どもを産み落とすのに比べると、人間のお母さんは「産みの苦しみ」が大きく、帝王切開をせざるを得ない場合もままある、というのが実態なのです。そしてこれ以上脳が大きくなると、もう全員帝王切開でないと生まれられない、なんてことになるわけですよ。
そして二つ目の理由。それは、脳の血管構造にあります。脊椎動物、哺乳類、霊長類と進化に伴い脳は大きくなりましたが、霊長類、そして人類でとくに大きな進化を遂げたのが大脳新皮質です。

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人類ではその大脳新皮質がどんどん大きくなりましたが、大きくなった大脳新皮質にも当然ながら栄養を送らないといけないわけですが、実はヒトの脳の血管系というのは決して十分なものではないのです。


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この図にあるように、心臓から脳に向かう動脈はわずかに2本。専門的な話になりますが、図の右下、根っこの太いのが総頸動脈で、これは太い内頸動脈と細い外頸動脈に別れます。根っこのもう一本、細い方は椎骨動脈です。外頸動脈は上に伸びて、大脳皮質を外側から栄養します。内頸動脈と椎骨動脈は、脳底部でウィリス動脈輪と呼ばれる環状構造を作ります(図の緑の部分)。ここから大脳皮質全体へと栄養を供給すべく血管系が構築されるのですが、この動脈輪自体、見ての通りそんなに大きなものではありません。となると、大脳皮質がどんどん大きくなっていくと、その先の方まで十分に栄養を送り込む力(当然、老廃物を回収する力もです)はこの動脈輪にはないものと考えられます。おそらくは、もっと脳が小さい進化段階ではこの動脈輪システムが最も効率的な血管システムだったのでしょう(そんなに脳が大きくなることを想定していない)。こんな大きな脳になるなら、本当は最初から違う血管システムがよかったわけですが、進化とは後戻りができません。というわけで、脳血管系システムからも、脳はこれ以上大きくなれないことが示されているのです。

と、しつこく書いてきましたが、人類はこれまで通りに脳を外側に大きくしていくやり方で「より賢くなる」ことは難しくなっているのです。では、今後人類の進歩はどうすれば可能なのか。そこで登場するのが「ニュータイプ」ASDの方々です...というのが、私の仮説です。定型発達では、No.341でお話した通り、生まれてきた時にたくさんある神経細胞、神経回路の「刈り込み」を行い、環境に応じて必要な回路を残すことでその環境に最適な脳を作り上げます。ASDではこの刈り込みが遅れるため、とくに子どもの頃には、より多い神経細胞、神経回路が残っています。通常は、この脳は定型発達の最適化された脳よりも効率が悪く、その結果がASDの「症状」とされるものとして現れ、場合によっては治療の対象ともなるわけですが、条件が整えば定型発達脳を超えた能力を発揮することもあるのです。例えば「サヴァン症候群」と呼ばれる天才的ASDの方がいます。未来のカレンダーの曜日を当てたり、読んだ本の内容や見た映像の内容をほとんど覚えていたりする、といった特殊能力です。知覚過敏、感覚過敏と呼ばれる症状も、通常は大変不快な困りごとなのですが、もしかすると、例えば彼らだけが無臭に近い毒ガスを感知して逃げられるとか、特別な環境下では生き残る切り札となるかも知れません(糖尿病の方が、氷河期のような低栄養状況では生き残る可能性がより高いことが連想されます)。骨盤とウィリス動脈輪の限界を超えた、ニュータイプの誕生です。

ニュータイプとは「時空を超えた非言語的コミュニケーション能力を獲得し、超人的な直感力と洞察力を持つ、新しい人類」(Wikipedia)とあります。ASDの特性として「コミュニケーションの質的障害」というのがありますが、これは定型発達者のコミュニケーションパターンからの逸脱という意味であり、ニュータイプの定義にあるような力は、彼ら・彼女らのもつ質の異なる知覚・感覚が生み出すものなのではないでしょうか。ミノフスキー粒子だらけの3次元宇宙空間でモビルスーツを自在に操る力もそうでしょう。
定型発達としての人類の進化が限界に達し、温暖化をはじめとする環境変化、IT技術などによる人類のあり方自体の変化、こうした劇的変化が予想される近未来においても人類が生き残るため、神が遣わしたのがASDではないか。未来の環境においては、進化論に基づきASDが生き残り、定型発達者は滅亡する、そんな時代だってありうるのではないか...そんなことを夢想する年末でした。

さて、本日最後の患者さんと診察室からお別れし、年内の私の全診療を終了いたしました。今年も多くの患者さんの伴奏をさせていただきました。精神科医という仕事のやりがいと責任と、改めて噛み締めたこの一年でした。
今年最後の今日の一曲は、そう、機動戦士ガンダム「翔べ、ガンダム」しかないですよね。クリニックは29日から3日まで、年末年始のお休みをいただきます。では、皆様よい年をお迎えください。


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