横浜院長のひとりごと No.360 薬の減らし時

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    横浜院長の柏です。日曜ですが朝から雨。コロナ禍でもあり、自宅でまったり過ごしております。自宅からポチポチと、仕事しながらポケモンGOのイベントやってたら色違いだけでこんなにたまってしもた(いや、仕事はちゃんとやっています・・・・たぶん(汗))。誰か欲しい人いたら診察室でお声掛けくださいねー(うーん、交換している時間あるのか!?)。
    前回、治療の終結について書きましたが、書ききれなかったところもいろいろあります。ぼちぼちと付け足して行きたいと思います。


    まずは薬物療法の経過と終わり方について補足します。例えばうつ病の場合、急性期には抑うつだけではなく不安、不眠も強いことが多く、治療当初には抗うつ薬だけではなく、抗不安薬や睡眠薬が併用されることがあります。抗うつ薬は治療の中盤からはしっかりと気分を、エネルギーを回復させてくれる、うつ病治療の核にあたる薬です。うつ病をどれか一つの薬だけで治療しろ、と言われたら私は躊躇なく抗うつ薬を選びます。しかし、抗うつ薬は効き始めるまでに1〜数週間、しっかり効くには数週間〜数ヶ月はかかるという遅効性の薬です。患者さんによっては、初診で来られた当初に強い不安焦燥や不眠を伴っている方もあり、医師としてはその「今目の前にあるつらい症状」を取って差し上げることも重要な務めです。そこで使われるのが抗不安薬、そして睡眠薬です。かつてはこの両者でベンゾジアゼピン系(略してベンゾ系と呼ばれることも)と呼ばれるグループの薬が使われていましたが、最近は睡眠薬ではメラトニン作動薬、オレキシン作動薬といった新しいグループの薬が主流となってきています。とくに先日お話したデエビゴはベンゾ系に遜色ないスリープパワーを持っており注目されます。


    さて、抗うつ薬が効いてくるなどしてうつ病が回復軌道に入ると、当然ながらうつ病の症状であった不安や不眠は自然と軽くなってきます。うつ病になる前にとくに不眠で困ることがなかった方であれば、うつ病がよくなれば不眠症もよくなっているはず、ですよね。気分がある程度回復してきた段階で、抗不安薬や睡眠薬については減薬、中止を試みます。ベンゾ系の中止プロセスはいろいろコツもあるのですが、長くなるのでこれはどこかで改めて書きますね。遷延したストレス下にある場合など、減量中止がそう簡単でない場合もありますが、基本的には急性期を過ぎたら抗うつ薬だけになっているのが理想です。なお、非定型うつ病や、いわゆる「ソフト・バイポーラー」と呼ばれるような双極性の要素を認める方の場合、双極性障害の治療薬が用いられる、あるいは抗うつ薬と併用される場合もあり、この場合は抗うつ薬だけとはならないことを付記しておきます。
    そして抗うつ薬だけ、あるいはプラス最小限の薬となり、うつ病としては寛解状態が維持され、復職もなされ安定した社会生活にご本人も自信を持てるようになってくると、治療の目標は寛解導入・回復導入から再発予防へとシフトしていくことになります。ここで重要なのが、再発リスクをどう見積もるか、です。再発リスクには、次の3つの要素があります。


    【再発リスク】
    1. 個体要因=脆弱性:再発歴,家族歴,パーソナリティ,発達特性など
    2. 環境要因
     マイナス要因:環境ストレス
     プラス要因:援助者(家族,同僚,上司,福祉など),サポート資源
    3. 治療要因:治療の継続性,薬物療法,精神療法,カウンセリングなど


    まずは患者さんご自身の打たれ強さ。次に置かれた環境の評価。これらのプラス、マイナス要因を分析し、再発リスクを評価。その上で治療方針、どんな強度でどんな期間の治療継続が必要かを判断します。その際、どんな治療がどのように効果を上げているかの評価も重要です。これらの評価が良好で、前回お話したようにうつ病では単一エピソード(一度だけのうつ病エピソード)であれば、適切なタイミングでの治療終結、薬物でいえば減薬中止をはかることになります。一般的には回復から3-6ヶ月程度が目安となりますが、このあたりは個人差もあります。医師の目から見て、しっかりした回復感、生き生きとした表情、会話の流暢さと充実、家族や周囲の評価、などを見ていくわけですが、実は薬物の減量中止についてはもう一つ面白い現象があるんです。


    精神科の薬物がなぜ効くのか、実はまだわからないことが多いですが、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質のコントロールがその中心であろう、ということになっています。抗うつ薬であれば、セロトニンやノルアドレナリンを適切にコントロールすることがその作用と考えられます。とすると、非常にざっくり言いますと、急性期にはセロトニンがすごく下がっていて、十分量の抗うつ薬により適切なセロトニン量になるのが、状態が安定してくると脳内のセロトニン自体が回復してきて、それで同じ量の抗うつ薬を使っていると逆にセロトニン過剰な状態になる、みたいなことが起こりうるわけです。そうなると中には「ハイ」になる人が出てくることもあるわけですが、これは抗うつ薬による「躁転」(厳密には、躁転までは行っていない方が大部分ですが)として扱われ、この場合は抗うつ薬中止、気分安定薬への切り替え、が原則となります。さて、私がここで書こうと思っていたのはこのことではなく、実は副作用に関わることなのです。


    病気がよくなってきて、それでも同じ量の薬を使っている時にしばしば見られること。それは、それまで目立たなかった副作用が現れてくるということです。抗うつ薬であればだるさ、眠気などが出たりします。抗精神病薬だと、それまで目立たなかった錐体外路系副作用(手の震えなど)が突然出てくることもあります。病気がよくなるに従って、脳や身体でのバランスが変わった結果と思われますので、これは薬を減らしましょう、というサインと受け止めるべきです。ご注意いただきたいのは、治療初期に出た場合はあくまでも通常の副作用であり、この場合はただ減らすのはだめ(病気がまだ治ってない!)で、副作用対策をした上で薬物を継続あるいは減薬するか、他の薬物に切り替えるのがセオリーです。このように、患者さんご自身の身体が薬の減らし時、止め時を教えてくれるんですね。こうした点も含めた繊細な観察眼がわれわれ精神科医には求められますし、患者さん側でもこうした変化に目を光らせ、気になることがあったらなんでも診察の際にお伝えいただけると、治療方針の大きな参考になります。あ、だからといって勝手に薬を調整しないでくださいね。自己判断せず、診察室で、あるいは急な副作用ならお電話で、きちんと専門家の目を入れた上で薬は調整しましょうね。


    さて、今日の一曲。懐かしの特撮シリーズに戻りましょう。先日ファイヤーマンをお送りしましたが、今日は同じ1973年、すなわち今から48年前の作品、ロボット刑事のオープニングです。いやぁ、この頃の曲はどれも素晴らしいなぁ。1973年は第一次オイルショックが始まる年でして(両番組終了後、秋のようです)、戦後高度成長時代はこの年までとされているようです。高度成長時代の大詰め、曲には未来への夢と希望が込められ、われわれ少年の心に力を与えていたんですよね。次のライダー、戦隊の主題歌、渡辺宙明先生に頼んでまたこの時代の路線に戻しましょうよ。テレ朝さんどうかな??

    前回前々回と続けて掲載直後に動画が消滅してちょっとガッカリのワタクシ。ブログは新鮮なうちにどうぞ、ということでその方法を2つ伝授しましょう。一つは私のTwitterアカウント@psydrkをフォローいただけますと、掲載直後にツイートでお知らせしております。ブログより新鮮なネタもご用意しておりますが、ingressやポケゴなど精神科以外のツイートも多いのでご了承ください(^_^;。なお、ハートクリニック横浜のTwitterアカウントはこちらでして、こちらでは当日の診察状況に加えて、新患枠のキャンセルが出た場合の告知なども行っています。こちらもよろしくお願いいたします。
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