行政訴訟とは、行政活動に関する紛争につき裁判所によって解決を図るための特別の制度であります。
そもそも国民は行政活動によって権利や利益を侵害された場合に民事訴訟によってその権利や利益を守ることができるのであるが、民事訴訟とは別に行政訴訟という制度が設けられたのは、行政活動が一個人の活動ではなく公益の実現を目的とするために私人ではみられない権力的な活動を伴うからであります。
行政事件訴訟法は、この行政訴訟制度について定めた法律であります。大日本帝国憲法の下では、行政活動に関する紛争については通常の裁判所とは異なる行政裁判所が設けられ、訴願法という不備な法律によっていました。その後日本国憲法の下で行政訴訟は行政上の不服申し立て制度とともに行政争訟といわれるが、行政訴訟は審査機関が裁判所であるのに対して不服申し立ては行政内部の救済制度である点に大きな違いがあります。
行政訴訟には抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、および機関訴訟があります。前二者は国民の個人的な権利利益の保護を目的とする主観訴訟であるのに対し、後の二者は客観的な秩序維持のための訴訟であり客観訴訟といわれます。このうち、行政庁の公権力の行使に対する不服の訴訟である抗告訴訟が行政事件訴訟法の中心になっています。