横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.134 うつ病の症状論(その5)

hitori134-a.png高田延彦のブラック将軍にぶっ飛んでいる横浜院長の柏です。
「次は東京、東京、この電車の終点です」東海道線のこのフレーズもついに聞けなくなりましたね。前職で8年半、東海道線通勤をした者としては、帰りに東京駅で座れなくなるのは改悪としかいいようがないですね。東横線渋谷駅も同じですが、「便利になればなるほど不便になる」のはどうしたものでしょうか。まあこのことは、ネット社会でも何にでも共通したことのように思えますね。
さて、うつ病の症状論、7番目は「無価値感、罪責感」です。うつになると、「自分には生きている価値がない、社会に対して申し訳ない」と考えるようになってしまうようです。negative thinkingの最たるものですよね。この世で価値のない存在はありません。一度に発射される精子の数は数億個と言われますが、その中で受精に至るのはたった一つです。そのたった一つから生まれた生命。日本中の人間から一人を選ぶより、もっと少ない確率にあたったわけです。それだけでも生命の神秘。神に選ばれた生命なのですよ。生きている意味?価値?以前にも書きましたが、私は普段そんなことは考えていませんよ。大宇宙の中、太陽系の中、この惑星の中、この大地の上で大自然の一部をなしている、人ひとりの生命なんてそんなもんです。少し動く元気があるなら、どこか大自然の真ん中で横になって、空を見ながらぼうっとしてみるのもいいですよ。
「無価値感、罪責感」がひどくなると、微小妄想と呼ばれる状態に至ります。自分が取るに足らない微小な存在である、という思いが確信の域に達したものです(妄想とは、事実でないことを事実と思い込み、訂正できない状態のことです)。この中にはうつ病の三大妄想といわれる、心気妄想・貧困妄想・罪業妄想が含まれます。心気妄想とは、自分が重大な病気にかかってしまっている、あるいはそれでもう助からないという妄想。貧困妄想とは、読んで字のごとくお金がなく生きていけないという妄想です。このために、治療費が払えないからと病院に来られなくなってしまう方もあります。罪業妄想は、過去の自分の行動を、とんでもないことをしてしまいもう取り返しがつかない、逮捕されるなどと考えたり、自分の存在自体が罪深いなどと考えてしまう妄想のことです。もちろん、うつ病であっても被害妄想や追跡妄想など、統合失調症でも見られるような妄想が出現することもありますが、とくに微小妄想のことをDSM-5では「気分に一致する精神病性の特徴」と記載することとなっており、その例として個人の不全感、罪業感、病気、死、虚無感、報いとしての処罰などがあげられています。こうした妄想が見られる場合はうつ病としても中等度以上と考えられ、十分な治療が不可欠と言えます。
さて、今日の一曲は今週の診察の際にUさんと盛り上がった、あの名作アニメのテーマをどうぞ。

コメント

  1. パバゲーナ より:

    無価値•自責感は、症状として怖いですね。自傷•自殺企図の行動がその先に見えるようで…>_<…
    お陰様で、自分はまだその域まで達してしまったことはありません。今後もそうならないように祈るばかりです。
    ファーストステージのルパン三世は、チャーリー•コーセーの荒削りなオーブニングとエンディング曲、挿入曲のスキャットもカッコ良かったですね♪(^。^)

  2. 隊長 より:

    「無価値」と感じることは少ないですね、今まで。むしろ罪責感が強いです。
    「楽しんでいることが多い」から?
    落ち込んで、無力でいても、少しずつでもなんとか復活して楽しいことを模索してそこを目指しているからでしょうか。
    日曜日も、ほんの数回バスで一緒に帰った高校時代の友人が走るので横浜マラソンの応援に出向いたり(残念なことに彼には会えませんでしたが、間寛平さんとハイタッチしました)、午後には野球観戦したり。
    このテーマ、もっと深い内容まで食い込んで欲しいです。
    あさってはミューザ川崎でのマンドリンもありますね。
    『星に願いを』 『Let It Go』 『月に寄せる歌』(ドヴォルザーク) 等々。 12:45開場です。

  3. いちご大福 より:

    先生、こんばんわ!
    うーん…なんかデジャヴ感が…
    無価値、自責の思考回路が深くなると行動に移ってしまうのは問題ですね。
    最近それを感じます。
    ほんと、この思考は恐ろしいです。
    と言っても自分に価値があるともあんま思えないし…
    自責は前よかかなりマシになったと思います。
    ダメですね…暗い思考に向くと歯止めが効かなくなるのは…
    診察の時、自分が落ちてると先生は見透かすように気付いてくださいますね。
    私ってわかりやすい奴なのかな…汗
    先生から存在を肯定していただけた時、すごく救われた気がします。
    本当はこういうの自分で修正しなきゃいけないんですよね…
    ここに来るといろいろ自分を知るキッカケを見つけたり整理できるのでとてもありがたいです。
    いつもありがとうございます。

  4. 横浜院長 より:

    パパゲーナさん
    ♪足元にからみつく赤い波を蹴って・・・うーんカッコいいっす。
    隊長さん
    もう少し深い内容まで食い込みたいですが、それやってるといつまでも・・・。
    いちご大福さん
    治療は、自分でできるようになるための訓練みたいなものですよね。
    そのうちできるようになりますよ(^^)

  5. パバゲーナ より:

    いやぁ〜、柏先生がハートボイルドなこの曲のフレーズをご紹介くださるとは、なんだかうれしいッス(≧∇≦)v

  6. まねきねこ より:

    いや~ババケーナ様からは身に余る光栄なお言葉をいただき、お恥ずかしい限りです。私は無価値観から自傷に至ったというより居場所がないと言う感覚でそうなる場合が多いです。無価値観は年がら年中なので。しかし、最近は細胞の研究などが進み、山中教授が出演していた特集とか数週間前に加藤雅也さんが宇宙人に扮し、地球人の体を調べるという設定の生命の神秘と壮大なロマンを扱った特集がありました。特別偉いことをしなくても、生まれてきて生きているということそのものが偉大な事なのだなと思い知らされますね、ああいう壮大な生命の営みを見せられると。とかなんとかで、最近、少しづつでも上向きになってきているので、余計、そんなことを考えてしまうまねきねこです。

  7. パパゲーナ より:

    まねきねこ様
    ワタクシもまねきねこ様のように、同病•同苦している方に勇気とエールを送ることのできる存在になりたいと切望しています。病というマイナスの価値を、同苦する方々を勇気付けるプラスの価値に転換することのできる、まねきねこ様。無価値の意味の真逆の尊貴な存在であられます。