横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.179 エビデンス

青信号?なんですかそれは。信号は緑ですよ、み・ど・り。いまだに毎日緑化活動(ingressです)に勤しむ、横浜院長の柏です。

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hitorigoto-179c.jpg先日、たぶん大学生時代以来なので数十年ぶりですが、渋谷の名曲喫茶ライオンを訪れました。No.037でもお話しした通り名曲喫茶フリークの私ですが、なぜかここはご無沙汰となっていて、かつなぜか昔の記憶が曖昧なのですが、いやよかったですね。店内撮影禁止なので中はご紹介できませんが、内装、オーディオ、ずらりLPの棚、談話禁止とフリークの私を唸らせるものでした。今時貴重な存在です。なぜ昔の記憶が曖昧なのか、これが自分でもよくわからないところですが。
いただいたこのパンフレットも、何ともいえずいい味を出していますね。
さて、間があいてみなさんもお忘れかと思いますが、うつ病についての連載を一昨年の秋から(N0.111から)行っておりましたが、脱線と遅延でまだ終わっておりません(汗)。そこで、まずはこれを完結させませしょう。残っているのは精神療法です。基本となるべき小精神療法についてはお話ししましたので、最後にうつ病治療で有効性のエビデンスがあるとされる、認知行動療法と対人関係療法についてお話ししてこの項を終わりたいと思います。「エビデンスがある」というのは、きちんとコントロールされた臨床研究によりその有効性が統計的に証明されたもの、ということです。ここで大切なことは、この2つの手法だけが有効で、ほかは有効ではない、ということではない、ということです。治療の有効性の評価は、精神科の場合とても難しいところがあります。肺炎の改善がレントゲンでわかるとか、肝機能の改善が血液検査でわかるとか、精神科でも画像や血液検査などの診断技法は日進月歩の進歩を遂げているものの、まだ臨床評価に使える段階ではありません。うつ病の改善の評価は、あくまでも気分、意欲、身体症状などを面接の場で得られる情報から行います。抑うつの程度、睡眠障害の程度・・・こうしたものを点数化して定量化するわけですが、例えばよく使われるハミルトンうつ病評価尺度というやつだと、抑うつも不眠も同じ1点。さらに、不眠は入眠困難、中途覚醒、早朝覚醒と3つあるので不眠が強いと3つ点がついてしまう・・・てなわけで、定性的・定量的に線形性をもって評価できる基準としては不十分です。そもそも、以前からお話ししている通り、脳は複雑系を成しており非線形の挙動をとります。しかし複雑系の評価は現代科学を超えているところもありまして、今のところはそうした評価尺度のほかに適切な方法がなく、評価をしないことはもっと危険である(自己流の怪しい治療がまかり通ってしまう)ことから、慎重な目をもって現在の研究を見て行くしかないわけです。では次回、認知行動療法からお話しすることとしましょう。
今日の一曲は、むかしNHK-FMのクラシック番組(番組名は忘れましたね−)のテーマだったショパンのマズルカ、作品24-4です。なつかしいですね。サンソン・フランソワのピアノでどうぞ。

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