横浜院長の柏です。すっかりブログからご無沙汰となっております。年の最後に、今年一番の大問題、薬の欠品問題について書いておくことにしましょう。
昭和の最後の年に医師になり、すでに37年半が経過しておりますが、これまで患者さんに必要な処方薬が手に入らないということは、まず記憶にありませんでした。それがこの数年でしょうか、原材料の輸入ができない等々の理由でちらほらと向精神薬の欠品が見られるようになっていました。そして大きな問題として最初に現れたのがアモキサン欠品問題でした(ブログNo.396で詳しく扱っています)。アモキサン、1981年発売ですから私が医師になるより7年も早く市場に出ていた三環系抗うつ薬です。古い薬ですが、三環系の中では不思議と効果が出るのが早く、またしっかりした切れ味の薬で、SSRI, SNRIなどの新規抗うつ薬全盛の現在でも、私の中では切り札の一枚でした。この薬が、前述のブログNo.396でも述べましたが、発がん物質でもニトロソアミン化合物の含有量が規定量を超えていることから発売停止となり、結局そのまま発売元のファイザーは発売を再開することなく、市場から消えてしまったのでした。
次いで同じニトロソアミン問題が発生したのが、これも三環系抗うつ薬のノリトレン(ブログNo.391参照)でした。こちらは、現時点では販売中止にこそなっておりませんが、問題発覚当初から「新規の患者様への本製品のご処方を控えていただくとともに、本製品を服用中の患者様におかれましては、離脱症状を避けるため、一定の期間を設けて漸減中止し、他の抗うつ薬等への切り替えをお願いさせていただく」という御触れが出たままになっています。こちらも抗うつ薬としてはパワフルでよく処方していた薬でもあり、使いにくい状況が続いていること(今後発売中止の可能性が高そうなこと)を危惧しています。
そして今(2025年末)現在、一番ホットな薬物不足問題が起きているのがADHD治療薬(No.353からNo.357までの一連のブログ参照)です。ことの発端は同じくニトロソアミン問題で、ストラテラにおいてこの問題が発覚し、発売元のイーライリリーが限定出荷をへて出荷停止という状態が長らく続いています。後発薬メーカー(アトモキセチンという名称)も当初は同じ問題に加えて出荷量の問題もあり(他のメーカーが出せなくなっても出荷をすぐに増やせるわけではない=こちらは過敏性腸症候群治療薬のコロネルが2024年1月に発売中止となり、同成分のポリフルもすぐには増やせず玉不足となったことがありました。なおポリフルも製造過程の問題からその後出荷停止になっています)、つい最近までアトモキセチンは流通がきわめて不安定な状態が続き、必要な処方ができずにご迷惑をおかけしました。後発品メーカーはかなり頑張ってニトロソアミン問題をクリアしてきており(東和薬品のプレスリリースを御覧ください)わが国の製薬メーカーの底力をみる思いですが、一方で早々にアモキサンをあきらめたファイザー、ストラテラでやる気がまったく見えないイーライリリーと、今回は外資系メガファーマの日本市場への姿勢がよく見えたと思います。ファイザーはコロナワクチンで、イーライリリーに至っては認知症治療薬ケサンラ、そして例のマンジャロなどですさまじい売上を上げており潤沢な資金を持っているにも関わらず、安価な抗うつ薬アモキサンや、後発薬が出て薬価も下がりもうけが少ないとふんだストラテラは見捨てるわけです。もちろんここにはわが国の薬価切り下げなどの保険行政の課題もあるわけですが、処方を受けている患者がたくさんいる状況をどう考えているのか、と怒りを感じざるを得ません。
ファイザーに関しては、禁煙補助薬チャンピックスで同様の問題がありましたが、「本製品に含まれる N-ニトロソバレニクリンが基準値以下となる よう製造方法等の変更を行い」出荷を再開しています。儲かる薬だと違いまんなーファイザーはん(プンプン)。
先発品のストラテラはいまだに出荷停止が続いておりますが、患者さんの中には先発品でないと効かないという方がたしかにいらっしゃいます。先発薬メーカーには、きちんと最後まで責任を持った行動をお願いしたいと思います。
さて、このようにストラテラ・アトモキセチン不足問題が起こっている最中、同じADHD治療薬のコンサータも同様の品不足問題が発生しています。こちらは原因が今ひとつ明らかにされていないのですが、アトモキセチン不足からこちらに流れたADHD患者さんがいた可能性が疑われます。ヤンセンファーマはこの問題が起きる前から精神科領域の情報提供者削減を打ち出していて、こちらにぜんぜん情報が上がってきません。過剰な情報提供もどうかと思う時もありますが、このような重要局面では情報をきちんと出していただきたいものです…ここも外資系だ…。実際コンサータも薬局にない状況がたびたび発生しており、ヤンセンからも「限定出荷期間中におきましては、新規患者様へのご使用や既存患者様の用量変更をお控えいただきますようお願い申し上げます」という御触れが出ているので、私の外来でも新規処方を待っていただいている方が複数あるというのが現状です。
現在アトモキセチンについてはほぼ正常出荷が戻ったようで、コンサータも年明けからは一定の流通確保ができるのではないかとの情報があります。しかし、今回の薬価改定でもさらなる薬価引き下げも謳われているなど、今後も薬を巡る環境には不確実なものがあります。各製薬会社におかれましては、安定供給へのますますの努力を期待するところです。
こちらも久々になってしまいますが、今年最後の今日の一曲です。50年続いた戦隊シリーズが終了し、「超宇宙刑事ギャバン インフィニティ」がはじまるという特撮ファンにはワクワクが止まらないニュースが飛び込んできました。というわけで、初代宇宙刑事ギャパンのオープニングで今年を締めましょう。「若さってなんだ?振り向かないことさ」還暦を過ぎて聞き直すとジーンとくる山川啓介の歌詞もいいですね。若い皆さんは振り向かずに前に進んでいきましょう!ではまた。皆様よいお年を。


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