横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.380 精神障害者自立支援医療

すっかり久々になってしまいました。原稿の山に追われてなかなかブログが書けませんでした(>_<)。毎日ブログ書いてる先生とかどうやってんだろう…謎だ…と悩んでいる横浜院長の柏です。 今回から、通院中の多くの方も活用されているであろう、精神科に関する公的支援制度について簡単にご紹介しましょう。それは、三種の神器とも言うべき、「自立・手帳・年金」です。順にご紹介しましょう。今回は自立=精神障害者自立支援医療についてです。手帳、年金は次回以降でお話します。 制度1.自立:精神障害者自立支援医療 (参考資料:横浜市 厚労省
(当院PSWによる過去ブログ・精神保健福祉便りNo.003No.004No.005もご参照ください)
精神科の通院治療は、長期に渡ることが少なくありません。急性のストレス障害で、異動などでストレッサーが解消した場合などは短期で終了することもありますが、そうした一部を除くと精神疾患は基本的には慢性疾患です。高血圧症、糖尿病などと同じで生活習慣病の一種といえます。治療が長期に渡ると、通院費用、薬代とそこそこかさんできます。そこを一部公費で負担しようというのが自立支援医療制度です。通常、保険診療ですとクリニックでも薬局でも一般的には3割負担となりますが、これを原則1割、さらに収入により上限額が決まる(それ以上は支払う必要がない)という優れた制度です。初回および更新時(毎年必要ですが、診断書が必要なのは2年に一度)に診断書が必要なので診断書代がかかりますが、ほとんどの方はそれをお支払いいただいても余裕で元を取れるはずです。
基本的には、精神科の疾患はすべてこの制度の対象となりますので、申請しないだけ損、と言ってもいいでしょう。ただし、収入が一定以上(市民税所得割23万5千円以上=サラリーマンかつ妻帯者でおよそ収入400万円以上、条件により異なる)の場合は、実は本来の制度上では自立支援の対象ではありません。しかし、経過的特例というのがあり、これらの方でも「重度かつ継続」という条件を満たせば、1割負担かつ上限月額2万円までという形で自立支援の対象となっています。
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この特例については、毎年延長されるのかどうかヒヤヒヤなのですが、実際には毎回延長され、現在は令和6年3月末日までは継続が決まっているようです(図は参考資料の横浜市のサイトより。経過的特例についてはこちらも御覧ください)。そういえばうちのPSWが同じことをこちらに書いていましたな。こうして延々と延長されているわけです…。
では、「重度かつ継続」とは何ぞや?となりますが、上記厚労省のサイトからの引用がこちらです。
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精神科通院では多数回該当の方はまずいないでしょう。なので基本は①〜⑤にある病気の方々が対象でして、これはWHO(国際保健機構)が定める診断基準ICD-10分類でF0〜3およびG40(てんかん)に相当する方となります(横浜市のサイトは、F0が抜けていますが間違いですね)。ICD-10については、はるか10年前のブログNo.002もご参照ください。大まかには認知症、物質依存、統合失調症、うつ病・双極性障害、てんかんが対象となります。となるとそれ以外(F4より後)がどうなるかですが、
F4 不安障害、心身症、強迫性障害など
F5 睡眠障害、摂食障害など
F6 パーソナリティ障害など
F7 知的障害
F8 自閉スペクトラム症、学習障害など
F9 ADHDなど
となっておりまして、これらの場合は「情動及び行動の障害」または「不安及び不穏状態」のために計画的・集中的精神医療が続けて必要である、という条件がつきます。なので、例えば単純な不眠症(F50)などの場合は、これを満たさない場合もあるわけです。F8, F9の発達障害圏の場合は、「情動及び行動の障害」に相当することが多く、基本的には対象になると考えて大丈夫です。
精神科の通院は長い旅となることも多いです。私も、一番長くお付き合いしている方は東京医科歯科大学時代から、かれこれ20年くらいになるはず。お互い年を取ったね〜という感じですね。精神科の場合、他科以上に生活や人生そのものとお付き合いしていくことも多いと思われます。精神科医って、前にも書いた気がするけどいろんな方々の人生の伴走(伴奏)をすることができる、私にとってかけがえのない、しかしそれだけに責任も重い仕事です。こうした長い旅を安全に行うためにも、自立支援のような制度は重要ですよね。
こちらも久々、今日の一曲のコーナーです。極寒のロシアシリーズ、今回はチャイコフスキーのスラブ行進曲にしましょう。ほのかに東洋的な匂いもさせつつ、しかしいかにも凍てつくロシアの地の音楽やなぁ、という逸品です。同じスラブ民族であるウクライナとロシアの戦争が回避されることを願いつつ、エフゲニー・スヴェトラーノフ(ロシア人)の指揮するNHK交響楽団の演奏でお聴きください。ではまた。

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