こころの健康アラカルト

母が認知症ではと心配

「母が最近、物忘れがひどく、ぼんやりと無表情でいることが多くなりました。年齢的に認知症ではないかと心配です。」37歳・女性からの相談です。
ご相談者のお母様(67歳)は5年前にうつ病と診断され、それ以降、薬の服用を続けているそうです。
親戚の名前や顔を思い出せない、つい最近あった出来事を忘れる、一日中ぼーっとしているなどの症状があるそうで、「認知症なのではないか」と心配されています。
物忘れや感情の起伏がなくなるといった状態は、典型的な認知症の周辺症状であり、お母様の場合、年齢的にもその可能性が十分あります。しかし、抑うつ状態による気持ちの落ち込みや集中力の低下でも同様の症状が起こることがありますし、そのほかの身体的疾患や薬の副作用も考えられますので、判断が非常に難しいケースです。
基幹病院の「物忘れ外来」などを受診すると、心理検査や画像診断などによる検査がありますが、現在の医療では、うつ病なのか認知症なのかを完全な精度で判断することは難しいのが現実です。
ただ心配なのは医療上の適切な処置がとられないことですので、こうした点をご理解いただいた上で早目に専門医にご相談することをおすすめします。まずは経過を観察しながら、治療を進めることになると思います。

ハートクリニック院長 浅井逸郎

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