横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.089 レジリアンス

横浜院長の柏です。前々回、ハウス加賀谷が回復の軌跡を辿る際、治療者に余計なことをしてほしくないと思っていた話を書きました。彼の中では、「感情が解き放たれていく」回復への変化が起こっていたこと。専門的には、これをレジリアンス(résilience)と呼びます。フランス語ですね。適切な日本語訳がなく、我々もレジリアンスと呼んでいます。意味としては、縮んだバネが自力で伸びようとする(元に戻ろうとする)ような回復力のことです。自然回復力とか、自然治癒力といったニュアンスが近いでしょうか。
この領域では、かつてはvulnerabilityという言葉がよく使われていました。ヴルネラビリティー、これは言いにくいので、日本語では「脆弱性」という訳語が一般的には使われています。ぜいじゃくせい。これはこれで難しい言葉ですね。読んで字のごとく、病気になった方に見られる脆さ(もろさ)、弱さを意味する言葉です。私自身も、研修医を終え、国立精神神経センターでの最初の研究テーマは統合失調症の脆弱性メカニズムでした。ひたすら動物舎にこもって毎日ラット(ネズミ)に覚醒剤を注射していた日々がなつかしいですね。当時の考え方は(いや、もちろん今でも大切な考え方ですが)、脆弱性を持った人をいかに発症させないか、いかに再発させないかを重要視するものでした。病気をいかに「悪くさせないか」という考え方ですね。統合失調症にしてもうつ病にしても、一度病気になると脆弱性を獲得してしまい、高い再発リスクが生まれる。だから、脆弱性をいかに抑え込むかが大切・・・こういった考え方ですね。
レジリアンスの考え方はちょっと違います。病気になったことはきっと何か意味があることだけれども、そこを乗り越えて元気になる過程をどう援助するか。患者さんがもともと持っているレジリアンス(自然回復力)をいかに伸ばし、いかにそれを妨げない治療をするか。たしかに、ハウス加賀谷の言うように、よくなる方にはスッとよくなる時期、時間があります。そういう時は、ただ治療の効果が上がったというよりもご本人の力を感じることも多いですね。治療は、あくまでも触媒として「よくなるモード」に入るのを援助するに過ぎないように思います。
再発を防ぎつつ、自然治癒力をどう伸ばし援助するか。脆弱性からレジリアンスへ。われわれ治療者に課された大きな課題だと思っております。
さて、今日の一曲コーナー。フランス語ネタということでフランス物にしましょう。ちょっと古いですがポルナレフはいかが?若い方も、CMにもなったシェリーに口づけはご存じでしょう。ここでは、私の好きなHolidaysをどうぞ。

コメント

  1. 匿名 より:

    歌詞の日本語訳お願いします。

  2. 隊長 より:

    なるほど、戻る。か。
    自分が戻ったらちょっと怖い気もします。
    22日で46歳になりましたが、それなりになってきた感があり、20代のころの暴れん坊的な自分はもういないでしょう。
    ポップスもいいですね。

  3. パパゲーナ より:

    過日、クリニックに伺いしたとき、院長先生にワタクシの長きに渡る、うつの脆弱性について訴え、質問させていただきました。
    ワタクシの場合、易疲労性が甚だしく、すぐお疲れモードに。ショータイム(起床から就寝までの時間)が、短く困りあぐねて早、半年。。。
    病によって身に付いてしまった“脆弱性”毎日、考えない日はありません。
    ワタクシもポルナレフは大好き。いまだにターンテーブルで“ポルナレフ・ベスト”を聴いてしまいます(^^;)
    ホリデーは名曲ですネ。ワタクシが小学校2年生くらいの時に世界的なヒットとなりましたが、今聴いても、美しいメロディやフレンチポップスの素敵感。。。全く精彩を失っておりませんネ。
    歌詞はチョッピリ、ダダイズム的だったように記憶しております。
    子供でも知っている英単語の歌詞ホリデーの後に続く、フランス語。。。
    幼心に優美に感じたものです。
    ポルナレフ、今はロングの白髪で頑張っているようです!!
    ポルナレフ万歳!!

  4. 横浜院長 より:

    Anonymousさん
    すみません、フランス語はぱっぱらぱぁです(汗)。↓このあたりをどうぞ。
    http://blogs.yahoo.co.jp/alfonsinayelmal/7472425.html
    パパゲーナさんのおっしゃる通りダダイズムなのか、謎の多い歌詞です。
    隊長さん
    もちろん、戻るといっても年齢相応に、ですね。
    パパゲーナさん
    脆弱性よりレジリアンスです。前に向かいましょう。
    なんとここにもポルナレフファンが!驚きです。やはりこのメロディーにはフランス語のアンニュイ感でないと、ですよね。

  5. mos-mas より:

    「脆弱性」…おもいっきり 「きじゃくせい」 と読みました。
    どうでもいいことですが…漢字って難しいですね(笑)
    病気になったことは何か意味がある…ですか。
    私は「うつ」や精神疾患がテレビでテーマになりつつあるころから「自分にもその要素がある」ということは自覚していました。でも、それはいわゆる「パンドラの箱」のような「開けてはならないもの」としてありました。そして先生の所へ通うことになった今でも「あの日、あの時がなければ…」とパンドラの箱を開けてしっまったような気がいつも思ってしまいます。
    あー早くその意味を見つけてほしいです、頼むよ自分!て感じです。

  6. mos-mos より:

    あ、そういえば
    残念ながら期待を裏切って申し訳ないのですが「mos-mos」の由来は「モスラ」ではなく、初カキコするときに、たまたま「モスバーガー」にいたので(^_^.)
    でもモスラも好きですよ。あんまり詳しくないのですが、あのモサモサしてるやつですよね?かわいい部類に入れちゃダメですか?
    女子なので(女子って年齢でもないですが。)なんでもカワイイ!と言いたくなります(笑)

  7. 横浜院長 より:

    mos-mosさん
    パンドラの箱→後悔→自責→落ちこみ、とならないようにしましょう。
    過ぎたことは仕方ありません。大切なのは今であり未来です。
    どうやってバネをまた伸ばすか、ご一緒に考えましょう。
    ・・・たしかに、モスラならmothですね・・・。もちろんカワイイ部類です!!

  8. まねきねこ より:

    病気にはならないで一生過ごしたかったと、どんな病気の人も思うと思いますが、私も、この病気になったからこそ、得たものもありました。うつ病は几帳面で責任感が強い人がなりやすい病気だとも本で読んでいたので、うつ病だと診断されたときは、私とは全く縁がないじゃないかと、なかなか信じられませんでした(苦笑)。統合失調症も、真面目で繊細な人がなりやすいとか。でも、考えてみれば体を鍛えているスポーツ選手だって、がんになる時はなるのですから、病気なんてそんなものですね。とても苦しい闘病だったはずなのに、全部嫌な思い出と言うわけではなく、どこか少し懐かしいような気がするのが不思議です。一所懸命闘病していた自分が愛しいのかな?とか。
     あ!消費税増税までもう間もないですね。先生も皆さんも、どうなさっているのでしょうか?なんだか、衝動買いをあおられているような気がします。で、実際、衝動買いの良い言い訳になっています。

  9. 匿名 より:

    増税前理由をつけて少しでも買おうと思えど財布は空っぽ。ちょっとよく詠めてるでしょ。(^^)

  10. パパゲーナ より:

    院長先生もポルナレフファンとは、ワタクシ結構ウレシイ(光栄)です(^^)
    アメリカ人も楽しくて明るくて大好きですが、どうやっても身に付かないのはヨーロピアンの持つなんともいえない優雅さですかね。。。(笑)
    フランスという哲学の国から生まれたポップス歌手、ポルナレフ。
    タダモノではないですね(^^)

  11. 横浜院長 より:

    消費増税・・・結局愛車の買い換えは見送り。間もなく17年目に入ります(^o^)
    さっき、ガソリンだけ入れてきました。