横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.197 発育阻害

花家センセ、「お医者さんごっこは病院でやってろ」ってそれ違うから。ポッピーピポパポがお気に入り、横浜院長の柏です。
朝日新聞にこんな記事がありました。発育阻害、Stunting(スタンティング)。妊娠中から生後に十分な栄養を与えられないために起きるもので、健康や脳の発達に影響が出る可能性が指摘されています。ユニセフによると、発育阻害の子どもは将来成人病になるリスクも高く、生涯賃金が2割少ないとのこと。国内情勢の安定しない国では50%程度の子どもに見られる反面、先進国ではドイツ1.3%, アメリカ2.1%と割合は低い。その中で日本は7.1%と、おとなり韓国2.5%の3倍近い数字が出ています。ユニセフは妊娠中の9ヶ月と2歳になるまでの「はじめの1千日」に適切な栄養を採ることが大切と訴えています。そこで気になるのが、やはり日本女性のやせ願望ですね。妊娠前から妊娠中に及ぶ過度のダイエット、食事制限が胎児に与える影響について、われわれはもっと真剣に考える必要があるではないでしょうか。
欧州では、スペイン、イタリアに続き、本年からはファッション大国フランスでも、やせすぎモデルを規制する法律が施行されました(記事参照)。こちらのニュースによるとBMIが18以下のモデルを雇用した業者には罰金、禁固刑が科せられるという内容だそうです。BMI=18といえば、身長160cmで46kg、身長150cmなら40.5kgです。どう思われますか?世界保健機関は病的なやせをBMI=18.5以下としていますが、日本では人種特性などを考え17.5以下を病的とするのが標準的です。そこから考えてBMI=17、すなわち身長160cmで43.5kg、身長150cmなら38.2kgを切るモデルや歌手の雇用の規制は、真剣に考えてよい問題だと思います。これは摂食障害の予防ということだけでなく、生まれてくる子どもたちの健康、ひいては日本の未来を考えてのことでもあります。精神科医の立場から気になるのは発達症(発達障害)との関連です。発達症、とくに自閉スペクトラム症の患者数は世界的にも急激に増加している事が知られています。米国のデータでは、この40年でなんと70倍以上です。これには診断基準の変更や認知度の向上といった要素も大きいのですが、それだけで説明がつくには数字が大きすぎるように思われます。わが国での低体重児の出生割合は、この30年で5.2%→9.6%と倍近くになっています。こちらも、もちろん産科医療の進歩によるところも大きいでしょうが、それにしても大きすぎるでしょう。今後医学的検証が必要ですが、やせ願望にはじまる現代の女性文化が発達症の増加の一因となっている可能性も否定はできないと思われます。
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ええと、こう書いてしまうと発達症が生まれてくるのがよくないこと、と私が考えていると誤解されるといけませんので一言。発達症(非定型発達)の方々は、ほかの方々(定型発達)とちょっとものの見方考え方が違う方々です。どちらがいい悪いということはなく、ただ今の定型社会の中ではちょっと生きにくい方々、というだけのことです。最近私は、非定型発達の方々が増えてきているとしたら、それは実は人類が、人類の歴史がそれを必要とするようになってきているからではないか・・・などと妄想を膨らませています。このことはいずれ書いていくことにしましょう。ではまた・・・こんな記事書いちゃってから、ポッピーピポパポのBMIをちょっと心配している柏でした(汗)。
今日の一曲、前々回に続いてシューマンにしましょう。シューマンのピアノ曲、知り合いの「通」はみな交響的練習曲が最高傑作だと言うのですが、私的にはホロヴィッツのクライスレリアーナが至高なのです。ではまた。


(参考図書:脳からみた自閉症 大隅典子 講談社ブルーバックス)

コメント

  1. hiro より:

    宮沢賢治の童話に「よだかの星」という有名な作品があります。
    私は、自身があの「よだか」のような存在に思えてなりません。
    しかし、彼には飛翔する力が残されていたのに、私にはもう、その
    力さえありません。ただ夜空を見上げて過ごすばかりです。
    悔しさという感情さえ、もう失ってしまったようです。

  2. 横浜院長 より:

    hiroさん
    気づくのが遅れました。申し訳ありません。
    「よだかの星」あらためて読んでみました。
    hiroさんは今、飛び方がわからなくなっているだけではないでしょうか。
    来年ゆっくりと飛び立っていけるよう、一緒に考えていきましょう。