横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.012 恐怖と不安

横浜院長の柏です。

ついに中1の長男に身長を越されてしまいました。子供の成長を喜びつつも、とても複雑な気持ちのこの週末でした。

さて、今回からしばらくは、不安に関わる病気(不安障害)についてお話ししていきます。「不安障害」として扱う「(広義の)不安」は、大きく分けると「恐怖」「(狭義の)不安」とがあります。いきなり広義、狭義と出てきてややこしいですね。要するに、「恐怖」を別枠にするかどうかの違いとお考え下さい。ここから先、「不安」と書いたら恐怖と比較される(狭義の)「不安」を指すこととします。この「恐怖」と「不安」の違いを簡単にまとめると以下の表のようになります。

恐怖 Fear

不安(狭義の) Anxiety

対象が明確
急性
一過性

対象が不明確
慢性
持続性

不安障害として扱うもののうち、対象がより明確で急性一過性の強烈な症状を恐怖と呼び、逆に対象が不明確で慢性持続性にじりじりと続くような症状を不安と呼ぶこととします。もっともこれはかなり大まかな記述で、実際には対象がはっきりしない恐怖もあるし、明確な不安もあります。ドカンとくるかじわじわくるか、ストレートかジャブか、というイメージの違いとして捉えていただければ十分です。

恐怖の典型はパニック障害におけるパニック発作でしょう。電車に乗っていて、突然わけもなく窒息感におそわれ、このまま死んでしまうのではないか、という強烈な恐怖感を体験しますが、10分もすると発作は収まってきます。これは脳内のアラートシステム、すなわち火災報知器が誤作動している状態です。

もう一方の不安の典型は全般性不安障害です。とりたてて理由もないのに将来のことがとにかく不安になってしまう。目の前のことは上の空で、ああなったらどうしよう、こうなったらどうしようと思いを巡らせてしまう。どうやっても失敗する気がしてしまう。中国故事にある、「杞憂」の状態ですね。

これらは不安障害のカテゴリーの両極をなすものですが、実際には恐怖と不安は様々な形で混ざり合って存在、出現してきます。例えばパニック障害で治療がなされず長期化してしまったような場合、最初はパニック発作としての恐怖が前面に出ていますが、次いで「また発作が起こるのではないか」という不安が強くなります。さらには、こうした状態が長く続くと、エネルギーの低下を招き二次的にうつ状態となることも珍しくありません。こうした経過では、恐怖→不安→うつ、といった症状の展開を見せることになります。このような展開にしないためにも、不安障害は早期発見・早期治療が大切です。

なお、来年公表予定のアメリカ精神医学会の新・診断基準、DSM-Vでは恐怖Fearに対する言葉として不安Anxietyではなく、”Anxious Misery”という言葉が用意されるようです。「惨めな不安」と訳されるようですが、ニュアンスとしては不安とうつとの中間のようなものなのでしょうか。不安とうつとの壁を取り払う画期的な概念なのかどうなのか、私にもまだよくわかりません。今後の学会の動向を気にしていこうと思います。

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