横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.050 アッチョンブリケ!

横浜院長の柏です。Mavericks・・・ついにネコ科の動物ネタ切れですかね。わかる人にしかわからない私のブログへようこそ(笑)。
hitori50-a.jpgタイトルの言葉、皆さんご存じですね。先生のおくたんのピノコの言葉なのよさ。先週、Yahoo!ブックスストアでブラックジャック(B・J)の一週間無料キャンペーンでしたが、皆さん読まれましたか。時間がなくて、7巻分くらいしか読めませんでしたが、懐かしいひとときでした。医学生の例にもれず、私もかつてはB・Jに憧れ、チャンピオンの発売を楽しみにしていたものです。「うつ病?一日で治してやるよ。代金は3千万円、即金だ」いやぁ、一度は言ってみたいもんですねぇ・・・。まぁ、まったり時間をかけて治療するのが好きで精神科に来た私は、所詮B・Jにはなれないわけです(泣)。しかしB・J。天才漫画家・手塚治虫が医学部を出ていたことから生まれた、奇跡の作品ですよね。
今日は、気分変動パターンの3回目、積み残していた「アッチョンブリケ」な2つの気分の状態についてご説明します。hitori47-c.jpgこれが、何度もご紹介しているうつ状態の模式図ですね。これに対して、今日のアッチョンブリケ1号はこちらです。hitori50-b.jpgはてさて。方程式で記述できない図ですね。あるx(時間軸)に対して、解(状態)が2つありますね。つまり、ある時点でうつと躁が同時に存在する、これを混合状態と言います。えっ何で?うつと躁って反対の状態で、同時に起こる事なんてありえないでしょ? おっしゃる通り、うつと躁は双極の対極ですから、普通はうつの時は躁的でありえず、躁の時はうつ的ではありません。しかし、ここが臨床の興味深いところ、難しいところで、現実にはこうした状態がありうる、いや、しばしば見られると言っても過言ではないのです。「気分」と一言で言っても、それはいろいろな要素を含みます。気分障害、気分変動といった「広義の」気分には、浮き沈みといった狭義の気分だけではなく、行動、易疲労性、興奮性・易刺激性、などなどです。そしてこれらの要素は必ずしも同期して動くわけではありません。例えば、気分は落ち込んでいるが妙に活動的で動き回ってしまう場合。これは、単純にうつ病性の不安焦燥という評価も可能ですが、うつ病では活動性が低下するのが本来であることを考えると、躁的な要素が入った混合状態と捉えうるわけです。このような時、ご本人は心と体がアンバランスな、とても不快な状態にあると自覚される場合が多いです。あるいは、(狭義の)気分そのものが一日の中で揺れ動く、躁的爽快気分かと思うとすぐに重苦しい憂鬱な気分に変わってしまう、こうした状態を混合状態と捉えることもありますが、これについてご説明するにはその前にアッチョンブリケ2号のご紹介が必要です。hitori47-g.jpgこれも、前回ご紹介した躁うつの経過図ですね。通常は、うつ状態が数ヶ月、躁状態は1ヶ月程度のことが多いです。これと比較して見ていただきたいのがこの図です。hitori50-c.jpg横の縮尺は一緒です。きわめて早い周期で躁うつが入れ替わり、反復しています。このように、年に4回以上の躁、またはうつの病相を示すアッチョンブリケ2号なパターンを示す双極性障害のことを急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼びます。これも躁うつ病では特殊なパターンということになっていますが、臨床場面で見ることは多いです。さらには、一週間の間でも気分が交代する、一日の中でも気分が交代するといったウルトララピッド、ウルトラウルトララピッド(?)タイプもあり、これは先に述べた混合状態の一部と同一の状態を指していると考えられます。
総じて、混合状態と急速交代型は関連が深いと考えられ、同一の病態の裏表なのかも知れません。まだまだ、精神医学はわかっていないことも多いのです。
おかげさまでこのブログも50回目を迎えました。今後ともよろしくご愛顧のほど、お願い申し上げます。

コメント

  1. 隊長 より:

    50回、おめでとうがざいます! 1000回までいきたいですね。
    落ち込んでいても行動的な時って確かにありますね。
    こういう図で表すのですね。
    ウルトラの状態もよくあります。
    こうなるとどういう療法が良いのか、ドクターの立場も大変ですね。
    学問として学ぶにはおもしろそうですが、自分を実験台にできるのがいいな。

  2. パパゲーナ より:

    院長先生、こんにちは。
    ブログ更新50回記念!!
    おめでとうございます( ´ ▽ ` )
    ワタクシはつい最近まで、
    クリニックのブログを知らなかったんですが、
    友人に教えてもらって以来、
    特に横浜院長のヒトリゴトを楽しみに
    拝見しています(^^)
    アッチョンブリケの解説、興味深く拝見しました。
    一回読んだだけでは分からず、二度読んでも難しく
    三回読んで“にゃ〜るほど!!”とガテンしました。
    私も経験がありますが、この混合状態。
    心底、疲れるしツライです。。。
    気分は落ち込んでいるのに妙に動き回れてしまう
    あの不快には、強い強い衝撃を受けて、ワタクシ、
    アブナイ状態になりました。かなり古いですが
    ”あじゃぱー!!“な状態でしたネ (°∀°*)
    ウルトラがダブルの急速交代型の患者さん、
    本当にかわいそう!!ココロもカラダも焼き切れて
    しまうんじゃないでしょうか(;_;)!

  3. まねきねこ より:

    ブラック・ジャックは私の初恋の人です(笑)。子供のころから、クールでかっこよくて
    憧れていました。今でいう、二次萌えのはしりです。今でも読むたびに惚れますね。
    内容も、何回読んでも新しい感動があります。
    医師出身の作家は多いですが、漫画家は手塚先生おひとりじゃないでしょうか?
    科学者のセンスを通したヒューマニズム、あの独特の世界観が大好きです。
    「ブラックジャックによろしく」の精神科編、あれは本家手塚先生にこそ、描いてほしかったです。
     双極性に関しては、「どくとるマンボウ闘病記」を読んでみようかなと思っています。
    ドラマを見てからずっと読みたいと思いながらも、「華麗なるギャッツビー」も読みたいとかいろいろ欲が出てしまい・・・

  4. 横浜院長 より:

    隊長さん
    ありがとうございます。1000回・・・このペースでいくと私は72歳・・・むむむ。
    パパゲーナさんもありがとうございます。
    混合状態ですが、皆さんも経験されているようですね。
    「心底、疲れるしツライ」「強い強い衝撃を受ける不快」
    その通りなのでしょう。こうした嵐をいかにスムーズに凪に持って行くのか。
    なかなか難しい作業であり、治療者の腕の見せ所でもあります。
    治療については追って書いて行きますね。

  5. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    ギャッツビー!もしかして世界ふしぎ発見、見ました?
    私もamazonで村上春樹版を頼んだのですが、届くの7月だそうです・・・。