横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.094 摂食障害1 拒食症

横浜院長の柏です。今週はわが家にCanadaからJohn君が来ており、楽しい週末を過ごしておりました。さて。期せずしてNo.090で摂食障害について触れることとなりました。このあたりで摂食障害についてまとめておきましょう。摂食障害の治療は私のライフワークのひとつであり、3年前にはTVKでお話しさせていただいたこともあります。
摂食障害とはどんな病気でしょうか。やせたくなる病気、でしょうか?
いいえ違います。今の(今に限りませんが)若い女性では、やせたいと思っていない人の方が珍しいくらいですよね。やせたいだけなら、それはごくごく普通のことであって、病気ではありません。摂食障害の方は、頭の中がやせること、体重のこと、体型のことでいっぱいになってしまっています。やせること以外を普通に考えることが出来なくなっている状態・・・それが摂食障害です。
体重のことで頭がいっぱいになると、一日に何回も体重計に乗ることになります。病状が進むと、食前食後に体重計に乗って、100gでも増えていると恐怖に震え、指をのどに入れてもとの体重以下になるまで吐き続けることもあります。食べたら体重がその分増えるのは当たり前のことなのですが、彼女(彼)達はそれを受け入れられないのです。こうなるともう体重計の奴隷のような状態といえます。一生体重計に支配される人生・・・あなたはそれを望まれますか?
ダイエットをするのも普通のこと。でも、ダイエットって失敗するのが普通ですね(^_^; ダイエットがうまく行き、そして行きすぎた場合に起こってくるのが摂食障害の一つ、拒食症(神経性食思不振症)です。当初の目標体重に達しても、今度はもっとやせたいと思うようになります。そして、次の目標に達してもまたさらに・・・。「やせていく」「体重が減っていく」という変化自体が大切となり、それが止まることが怖くなります。ここで一番怖ろしいことは、体重が減れば減るほど、この恐怖感が強くなり、ますます拒食が強くなることです。怖ろしいデフレスパイラルの状態です。すごく大まかに言うと、40kgを切るとこうした認知の歪みが極端となり、30kgを切ると生命の危険を伴うことから積極的な入院対象となります。もちろん、30kg以上でも入院の判断はありえます。
拒食症の診断基準ですが、まずは体重減少です。どこからを病的やせとするかですが、もとの基準では標準体重の85%以下となっています。BMI(body mass index: (体重)÷(身長)^2)で考えると、その標準は22なので本来は22×85%≒18.5以下とするのですが、日本人の場合さらに細めに基準を取って17.5以下とすることになっています。150cmなら39kg、160cmなら45kgとなりますね。これを切ると病的なやせ、ということになります。もちろん、数は少ないですがもともとそれくらいの体型という方もいらっしゃるわけで、これだけでは病気とはなりません。摂食障害に特徴的な二つの症状、①肥満恐怖:太ること、体重が増えるに対する病的な恐怖、②ボディ・イメージの障害:自らの体型、体重に対する認知の歪み。どんなにやせていても太っていると感じてしまう、など。これは「歪んだ鏡」に例えられます・・・この両者が診断には必要です。さらには拒食症の場合、生理が止まっていることも診断基準に入ってきます。
われわれ心療内科医、精神科医が扱う疾患にはいろいろありますが、拒食症はその中でも一番死亡率の高い疾患です。こころとからだのずれが大きく、こころがからだを蝕んでしまうことがその原因です。必要な栄養を取らず飢餓状態となると、身体は自らを守るため危機管理態勢に入ります。生命に直接関わる心臓、呼吸系などは止めるわけにはいきません。そうなると、とりあえずなくても生命を維持できるところから身体は止めていきます。その一番手が生理です。生理が止まっても、(生殖行為はできませんが)自らの個体を維持することは可能です。次は髪の毛や体毛です。毛が抜けても生きてはいけます。こうして、無月経、脱毛といった拒食症の身体症状が起こってきます。お風呂の排水溝に、髪の毛がたくさん溜まるようになったら要注意です。さらに進むと心停止など、生命の危機に直面することとなり、その前に治療が必要となります。
リクエストがありましたので、今日の一曲コーナーです(^_^; 今日は、得意技のオタク路線にしましょう。
来月上映されるキカイダーREBOOT。キカイダーといえば石森章太郎(すみません私の中では石ノ森ではなく・・・)の最高傑作。土曜の夜、10チャンネルで7時半から仮面ライダー、そして8時からキカイダーでしたね。(ちなみに8時半からはデビルマン。黄金時代でしたね)世の中は仮面ライダー一色でしたが、私は実はキカイダーの方が好きでした。音楽も、人造人間の悲哀を歌った、渡辺宙明の哀愁に満ちたメロディーが最高でしたね。主題歌をはじめ名曲揃いですが、今日はその中でも名曲中の名曲、挿入歌の「ぼくらのキカイダー」をどうぞ。大学時代、FM-7のPSG音源に自分で音取りして3重和音で入力しましたねぇ。懐かしいです。

コメント

  1. 風神雷神 より:

    キカイダーはあのバイクが記憶に残ってます。なんかギターを弾いて登場してましたっけ?
    他のヒーローとごっちゃになってるかな〜?ジャイアントロボやスーパージェッターなんていうのもありましたよね?懐かしいです。
    次回もすっごく楽しみにしております。

  2. 摂食障害の娘を持つ母 より:

    摂食障害を取り上げて頂きありがとうございます。
    摂職障害は症状も激しく うちも何度となく命の危機があったと思います。
    その度にお騒がせしてまいりました。
    この症状を抑え込みたくて長年四苦八苦してきました。
    けれど 心の成長なくしては症状が治まらない。というのもこの病気の特徴だと思います。
    先生には身体を診て頂くとともに 親子関係などの気付きを頂いてきたのではないかと思います。
    心に寄り添うのは日常を共にする家族なので その負担や心労は大きいですよね。
     
    娘の病気で本人は本より家族の運命も変化してしまいましたが これを負の変化と捉えてはいけないですよね。
    娘がこういう反乱を起こさない限り、親は変わりませんから。
    摂食障害は本当に辛い病気ですが より生きやすくなる術を学んだり 成長できるチャンスを含んだ病気かな。と思います。
    補足ですが 娘が激やせしたのは 他の人ではなし得ない目標を達成したという誇らしさ。という歪んだ認知だったと本人から聴きました。
    今はお陰さまで歪んだ認知は改善されましたが 太ることは罪悪 という基本姿勢は持っています。
    また 色々とお話しお願いいたします。

  3. 横浜院長 より:

    風神雷神さん
    お名前から琉神マブヤーをイメージしてしまう私(^_^;
    今後は特撮・アニメ、クラシックごちゃまぜで行きますのでお楽しみにです。
    お母さんへ
    たしかに命の危機を何度も乗り越えました。ご本人の生への意志、ご家族の強い回復への思いのなした奇跡を見せていただきました。今の私は外来しか診ておりませんが、お嬢様のことは私にとって病棟時代の貴重な体験です。
    摂食障害は対人関係の病気であり、それを癒やすのもまた対人関係、それも重要な他者との関係である、というのが対人関係療法の教えるところでもあります。自信を取り戻しつつある彼女の姿を、頼もしく思っております。

  4. 摂食障害の娘を持つ母 より:

    ありがとうございます。
    またいつか対人関係療法についてのお話しも伺えたらと思います。
    たまに先生のブログを覗かせて頂いていました。(笑)
    先生ってこういうところがあるんだあ!と意外な面が多いですね。
    限られた診察時間から抜け出して こういう場で患者さんや家族が自由に話せるのは素敵なことですね。

  5. まねきねこ より:

    キカイダー、懐かしいです!ビジンダーって女性のロボットもいましたよね?志穂美悦子さん、かっこよかった~!土曜の夜は、8時からドリフの「8時だよ、全員集合!」が裏番組で、本当に、テレビが娯楽の王様だったと思います。
     先生にお聞きしたいのですが、デパスはどういう経過で効いてくるのでしょうか?例えば、セロトニン受容体をどうのこうのってありますよね?私は春先が苦手なようで、最近「絶不調」でした。ここの皆さんの中にも、春先は具合が悪くなりやすいという方は多いと思います。頓服でデパスを出してもらっているのですが、デパスは頓服としてはよく効いてくれると感じますが、治療効果はあるのでしょうか?

  6. まねきねこ より:

    すみません、追加させていただきます。
    キカイダーは2000年代(だと思います)にアニメ化されましたが、こちらはラブストーリーに重点を置いているように見える感じで、自分はあまりスッキリしなかったです(笑)。

  7. 風神雷神 より:

    音楽コーナー考えられていると思います。
    元気の出る楽しい曲をお願いします!
    最近急に暑くなってきたので疲れています。
    疲れが吹っ飛ぶ、リゲインではない曲をよろしく!

  8. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    志穂美悦子はカッコよかったですが、悪の味方の私的にはハカイダーとギル教授ですねぇ。
    デパス・・・「抗不安薬」グループの代表選手ですね。抗うつ薬がじわじわ効くのに対して、抗不安薬のポイントは速効性です。のめばすぐに効く、ただし身体から抜けたらおしまい。抗うつ薬の方が、より病気の本態に近いところを治している印象です。
    「治療効果」という言葉が何を指すかですが、十分治療効果はあるし、調子悪いのを放置するよりはきちんと症状を抑えて、日常生活を維持することは大切だと思います。抗不安薬のお話も書かないとですね。
    風神雷神さん
    No.095は話の流れで「楽しい曲」ではなくなってしまいました。
    今わが家で「楽しい曲」といえばこれですね↓ 一緒に踊るのが肝要ですよん。
    https://www.youtube.com/watch?v=EyRgTBwQ_d8
    たかみー王子まで出てきて感激。