横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.024 強迫性障害(その2)

横浜院長の柏です。今週、来週は当院で行っている復職支援ショートケア(リワークプログラム)で会期中2回限りの私の出番(「心理教育」の講義)があります。皆さんの復職、回復に少しでも助けになればと思います。hitori24.jpgさて、前回の続きです。今日は、強迫性障害の治療についてお話しします。前回お話しした通り、一番大切なことは不安回路のループを断ち切り、重症化させないことです。それでも重症化してしまった場合、治療が必要となりますが、しっかり作られてしまった不安回路のループを断ち切るのは一筋縄では行きません。
精神病状態での妄想に左右された行動などとは異なり、強迫行為は自分でもおかしいと思っているのにやめられないのがその特徴です。どうしてもやめられない、コントロールがつかない場合は治療が必要です。強迫行為に対しては、暴露反応妨害法という行動療法の一種が効果的です。これは、いろいろな不安および対処行動を分析整理し、無理のないものから順に対処行動をしないでやりすごす(不潔恐怖の場合、徐々に「汚い」ものに触っていく、などバリエーションもあります)というものです。一人でやるのは困難が大きいため、行動療法の専門家との共同作業をすることが望まれます。
強迫思考に対しては、薬物療法が行われます。これには抗うつ薬を用いますが、とくにSSRIのフルボキサミンとパロキセチン、三環系抗うつ薬のクロミプラミンの3剤がよく用いられます。これらの薬物は、強迫的なこだわりを和らげ、「まあいいか」と思えるようにする手助けをします。うつ病など他の病気でも、こだわり、強迫性が強く回復の妨げになっている場合にはこれらの薬物に効果が期待できます。強迫性障害の薬物治療で大切な点は、うつ病と同じくすりを使用するが、より多くの量が必要だということです。例えばフルボキサミンの場合、うつ病の投与量は一日量で150mgまでですが、強迫性障害の場合は200mgまでとなっています。他のくすりも同様で、これは病気ごとの薬理メカニズムの何らかの違いを反映しているのでしょう。
重症の強迫性障害の場合、ご家族への巻き込み行為が大きな問題となります。ご家族にも手洗い消毒を強要したり、何度も繰り返し確認を求めたりするため、ご家族の疲弊も大変大きいものがあります。この場合、入院治療も選択枝となります。
不安障害は何でもそうですが、治っていく過程でどうしてもその不安と向き合い、それを乗り越えていくことが必要です。一人でやるのは大変なことでも、治療者や周囲と協力することでそれを達成することは可能です。勇気を持ってご相談いただければと思います。

コメント

  1. まねきねこ より:

    知人の娘さんが、食べると下剤を飲んでしまうというのです。食べると太るという思い込み、これもまた、強迫神経症の一種ではないかと思いました。どうしたらいいでしょうね、ときかれ、とにもかくにも、女子中学生は普通に生活していても最低限2000キロカロリーは必要で、2000キロカロリーを具体的に三食の食事にしてみると、意外と「これだけ?」と思うほど少ないということを知ってもらいたいと思いました。プラス、おやつが必要なくらいです。下剤なんか飲んだら、それこそ健康を損ねます。
    私はやはり中学生のころ、太るのが怖いのではないのですが、食べるとなぜが気持ち悪くなり、たぶん、当時いじめをうけていたので、そのストレスと受験のストレスに追い詰められて食べると気持ち悪くなってはくようになったのだと思います。これは大学に進学すると自然に消えました。
    エイトレンジャー、あれはイロモノですよ~。先生は、あくまでも王道じゃないとだめなんですね。

  2. 横浜院長 より:

    こんにちは。知人の娘さんとのことですが、日常生活に支障が出てくるようだと摂食障害の可能性があります。しかし慧眼ですね。摂食障害は、ある意味「現代の強迫神経症」といってよい病気です。治療的にも、フルボキサミンが効果を示すことがよくあります。摂食障害は私の専門分野の一つですので、いずれこちらで書きますね(こればっかしで、いつになるのやら・・・)。