横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.123 Life finds a way(その2)

横浜院長の柏です。先週水曜日は、以前からいろいろお世話になっている上大岡臨床心理センター主催の「心を学ぶ講座」で講師を務めさせていただきました。この年になるといろいろ講演させていただくことも多いのですが、普段は聴衆は医者、当事者、ご家族、支援者と、その時で違うものの毎回均一な集団を対象とすることばかりでした。今回は「対人援助にかかわる人のための講座」という幅広い対象となっておりまして、事前アンケートを拝見しても様々なお立場の皆様と思われ、しかもテーマが「双極性障害」という難題でして、今までになく準備に神経を使いました。うつ病との違いから始まり、診断や治療、そして対応の仕方まで、皆さんの真剣なまなざしを感じながら、良い雰囲気で講演させていただきました。少しでも聴衆の皆様の今後の支援の一助となれば幸いです。
なお、上記HPにもありますが、この講座は当事者やご家族向けの講座ではありませんのでご注意下さいね。
さて、前回なんでタイトルが”Life finds a way”だったか、あれじゃわかんないですよね。今日はそこまでお話しを進めましょう。
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さあ、前回のこの図からです。ライオンに取り囲まれ、(ライオンが入れないくらいの小さな)穴に逃げ込んだはいいけど身動きのできなくなった鹿さんの話です。このまま出て行っても、うまく逃げられる可能性はかなり低いです。さあ、どうすれば一番生き延びる確率が高くなるでしょうか。それは、そのままじっと機会を伺い、ライオンがいなくなる、あるいは寝てしまってから逃げ出すことでしょう。そのためにはどうすればいいでしょうか。
最初、ライオンに出くわしたときに働いたのは「不安」のメカニズムでしたね。交感神経を高めに高めて(交感神経がトップギアだぜ!・・・わかる人にしかわかんねぇなぁ・・・)、いつでも逃げ出せる状態にします。しかし、この状態ではアイドリング全開ですから、すぐにガス欠を起こしてしまいます。今や、短期決戦ではなく長期戦に移行していますので、戦略を変えなくてはなりません。エネルギーは節約(省エネ)し、しかるべき時のためにとっておかなくてはなりません。省エネ・・・そう、うつの出番ですね。いったん気分を下げ、やる気をなくし、興味を持たず、あまり動かない状態を作ります。こうすることで、いざという時・・・ライオンが去ったり寝たり、油断した際に逃げ出すための力を温存しておくのです。生き物は生き延びる道を探し出す・・・”Life finds a way”ですね。この言葉は、Ian Malcolmという有名な数学者・カオス理論学者の言葉ですが、ご存じですか?イアン・マルコム。
この方です。


ご存じ、ジュラシック・パークです。何でもまた新作を作成中とかでワクワクですね。遺伝子工学で作り出した恐竜。彼らが自然増殖しないよう、すべての恐竜をメスとして作ったという科学者たち。彼らに対してマルコムは、”Life finds a way”という言葉を返しています。実際、恐竜は自然増殖し、ジュラシック・パーク2・3につながっていくわけです。2が公開されたとき、私はちょうどサンディエゴにおり、ご当地サンディエゴの街中を破壊して回る恐竜の姿に映画館中が大フィーバーだったのをよく覚えております。
このように、うつは生き延びるために脳が宿している大切なメカニズムだと思います。急性の危機に対して不安が発動するように、慢性の危機に対してはうつが発動します。うつになっているということは、慢性の危機的状況に置かれているのではないか、とまず考えるべきでしょう。
さて、今日の一曲は久々にクラシックに戻りましょう。何かのコマーシャルで流れているのが印象的な、ラフマニノフの交響曲第2番、全曲が名曲ですが、ここではコマーシャルで使われている第3楽章をどうぞ。

コメント

  1. いちご大福 より:

    先生、こんにちわ!
    うつは危機的状況にさらされてるからなるんですね。
    そんなに、自分はあの環境が嫌だったのかしら…?
    自分の気持ちってなかなかわからないもんですね。
    何が嫌なのか…
    うつになる前に気持ちに気づけたらいいんですけどね。
    何が不満か、なにを求めてるのか…全くもって不可解です。
    難しいんですね。

  2. 横浜院長 より:

    いちご大福さん
    日曜にupしたつもりがされていませんので再度。
    自分の気持ちってわからないですよね。私もそうです。
    以前にも書きましたが、病気は環境(外因)、脳(内因)、その人が培ってきたもの(性格因)の相互作用によって発生します。なので環境だけに原因を求めることはできませんが、しかし環境も含めて、うつが発生した流れをよく振り返ってみることが大切だと思います。