横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.181 認知行動療法

横浜院長の柏です。こんなツイートを見つけました。

我が意を得たり!ですね。まったくその通りであります。

さて、うつ病シリーズの仕上げに入ります。今日は、認知行動療法・・・英語ではcognitive behavioral therapy略してCBTとも言います・・・についてです。
人の心の動きは、認知・感情・行動の3つに代表されます。この3つが歯車のように噛み合うことで、日々の人としての営みが成されていくことになります。認知とは、wikipediaでは「人間などが外界にある対象を知覚した上で、それが何であるかを判断したり解釈したりする過程のこと」となっていますね。知覚→判断、解釈。簡単に言うと、「ものを見たり聞いたりして、そのものが何であるか、どんなものかと考えたり思ったりすること」といったところでしょうか。「解釈」までが含まれていることがポイントですね。感覚器官からはじまって、最終的には脳の最も高度な座である前頭葉が関与します。感情は、wikipediaでは「ヒトなどの動物がものごとやヒトなどに対して抱く気持ちのこと」と簡単になってしまいますね。喜怒哀楽、好き嫌い。感情については脳科学的にもいろいろな考え方があるようですが、一番原始的なものは情動とも呼ばれ、辺縁系と呼ばれるより原始的な脳(古皮質。動物脳とも呼ばれますね)が司っています。この間、NHKの「キラーストレス」でもやってましたが(この番組の内容についてもコメントしたいところですが、また今度!)、辺縁系の中でも扁桃体(へんとうたい)という部位が、とくに重要な働きをもっています。そして行動。行動は当然、最初は認知や感情の結果なのですが、この行動が次の認知や感情を呼び・・・とこのシステムはいったん動き出すと三位一体で動くようになります。三位一体、前にもお話しましたね。3つのものがそれぞれ有機的につながり、複雑な世界を作ります。2つのものであれば数学的な解析も比較的容易ですが、3つになったとたん、線形科学では解けず、カオスが形成されます(3体問題)。これが、人としての複雑な営みの根源となります。
さて、うつ病で見られるようなつらい気分。これを改善するために、感情そのものではなく、感情と歯車が噛み合っている認知と行動をターゲットとして、そちらから気分(感情)の改善をはかるのがうつ病の認知行動療法です。
では、認知はどのように感情に影響するのでしょうか。具体的に考えてみましょう。
「会合であった知り合いが挨拶もしない、視線を合わせようともしない」
という場面を考えてみましょう。皆さんは、どんな気分になるでしょうか。
①「何か怒らせるようなことをしただろうか」と思うでしょうか。
②「挨拶位してくれてもよいのに、ひどい人だ」と思う人もいるでしょう。
あるいは、③「誰も私のことなんか気にかけてくれない」と思うかも知れませんね。どうでしょうか。それぞれ、どんな気分になりますか。
①の場合不安になりますね。何か落ち着かない、ドキドキした気分です。
②は怒りですね。プンプン怒ってますね。③はちょっと極端ですね。一人の人が挨拶をしなかったからと言って、誰も自分を気にかけてくれないわけがないですよね。しかし、これはうつ病の人が陥りやすい典型的な認知のパターンなのです。③は、抑うつの現れなのです。
このように、同じ出来事に遭遇しても、ものの見方、考え方(認知)によって感情は大きな影響を受けます(ここで出てきた不安・怒り・抑うつは、精神科臨床での3大テーマです。おっとまた3が出てきた)。また、これはそのあとの行動にも当然影響することとなるわけです。こうした認知の中でも、うつ病や不安障害などで起きてくる極端な認知をいかに修正していくか。そこに認知行動療法の醍醐味があります。
内容は次回に続きますが、当院では同ビル内にある提携心理オフィス、こまち臨床心理オフィスにて認知行動療法を行っています。個別カウンセリングで1:1の対応も可能ですが、別途最大9名までのグループにて、うつ病および不安障害の集団認知行動療法を行っています。うつ病の新グループ(7月15日開始予定)が現在メンバー募集中です。ぜひご活用いただければと思います。不安障害のグループも、現在のグループ終了後に次期グループを開始します。ホームページにて逐次お知らせしますのでご覧いただけますと幸いです。
今日の一曲は、フォーレ「夢のあとに」の美しい旋律を、二種類の演奏でどうぞ。
まずは定番、ヨー・ヨー・マのチェロで。


次は、キリ・テ・カナワのソプラノです。こちらもいいですね。

ではまた。

コメント