横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.280 パニック!

hitorigoto-280.jpg横浜院長の柏です。トクサツガガガが終わってしまいました(T_T)。大事なことは特撮が教えてくれる。獅風怒濤ジュウショウワンは「絶対にあきらめない」ことを教えてくれましたね。さあみんな、あきらめないで前を向いて進むんだ!
さて、たまたま見ていた「世界一受けたい授業」でパニック障害を扱っておりました。最近いろいろお世話になっている岩波明先生が出てらっしゃったのでしっかりと見ましたが、なかなか充実した内容だと思いましたので、今日は内容のご紹介もかねてパニック障害についてお話しましょう。
パニック障害については、大昔のNo.014, No.015などでもお話しておりますが、ある日突然、強い動悸や呼吸困難などと、それに伴う、とてつもない不安に襲われるという青天の霹靂とも呼ぶべき病気です。経験された方には、とてつもなく恐ろしい体験として記憶されてしまいます。この病気について世間の理解が進んできたのは最近のこと。そもそも私が研修医となった頃にはその概念がようやく上陸するかしないかというところで、まだ「不安神経症」として広く不安障害一般と一括りにされていたかと記憶しています。それが最近、有名人が続々とカミングアウトするなどの状況となり、またネットや、今回のようにテレビで取り上げられる機会も増えてきたことから、徐々に世間の理解も進みつつあるように感じます。後述するように、この病気の回復には周囲の理解は欠かせないところであり、私は良い方向への変化と捉えています。
番組では、パニック障害を経験した芸能人たちが自らの体験を語ります。お笑い芸人・中川家の兄・剛さん。パニック障害発症により舞台にも立てない日々となり、引退も決意しました。パニック障害の方によくあるように、発作を起こすのではないかと考える状況(電車など)を避けてしまう(広場恐怖といいます)症状も出ていた剛さん。しかし、相方の弟・礼二さんが根気強く兄を見守り、電車での移動も何度も乗り降りして、本来の何倍も時間をかけて行うなど、本人のペースに合わせ、無理をせずに少しずつ回復にいざなっていったようです。安全なところから少しずつ、少しずつ行動範囲を広げていくことで不安を取り除いていくやり方を暴露反応妨害法と呼びますが、兄弟が期せずして行っていたのがこの方法とも言えそうです。相方の根気強い手助けが有効だったのは、No.087でご紹介した松本ハウスの場合と同じですね。
安西ひろこさん。アイドルとして人気絶頂だった彼女は、突如8年間の活動休止に入ります。のちにパニック障害であったことを告白。実家で引きこもる生活の中、以前より親しかったおばさんが外に連れ出してくれ、一緒に散歩やガーデニングを楽しむ中で徐々に回復に向かったとのことでした。周囲の人が変に病人扱いせず、明るくごく普通に接してじっくりと回復をサポートしていただけること。あらゆる精神障害の回復にとって重要なことですね。
我々の世代のアイドルの帝王とも言える(ん?私だけか?)大場久美子さん
発症後、なかなか病名がつかない時期が長かったようです。そのため、病名がわかったときにはホッとして、病気だから治せばいい、と前向きに受け止めたそうです。これ、大事ですよね。どんな病気であっても、たとえそれが本意でないものであっても、なってしまったものは仕方ありません。むしろ、病気であれば治療法があるわけで、治る可能性も十分あるわけです。ここで前を向けることが、実際に治癒にいたるための大事なポイントであるように感じます。また彼女は、外出するときに「心配しないで下さい」「救急車を呼ばないで下さい」といったメッセージカードを持ち歩いていたそうです。パニック障害の方々は、周囲に迷惑をかけてはいけないという気持ちが人一倍強く、それが逆にここで発作をおこしてはいけない、というプレッシャーとなり、かえって発作が起こりやすい状況を生んでしまうこともあるようです。パニック発作は、しばらくたてば必ず去っていきます。彼女は、こうしたカードを持つことで迷惑をかけてはいけない、という不安をコントロールし、発作を起こりにくい状態にすることに成功していたようです。
パニック障害は脳内の火災報知器の誤作動のようなものです。本来恐怖を感じる必要がないものに強い恐怖を感じてしまい、電車などの特別な状況に対して条件反射的に恐怖を感じるようになってしまうものです。薬物療法などの防具を身にまとい、より安全なところから少しずつ、実際に行動することで克服が可能です。逆に言うと、家にこもっている限りこの病気はよくなりません。かといって無謀な行動はいけません(レベル1でいきなりゾーマに戦いを挑んではいけません)。我々専門家とともに少しずつ、少しずつ回復の道を進んでいきましょう。ジュウショウワンではないですが決してあきらめず、治ると信じて前を向くことが大切なんですよ。
今日の一曲。前回ご紹介したショパンは3月1日生まれ。前日の2月28日は私の誕生日でして、この時期は楽聖の誕生日が続きます(なんのこっちゃ(^o^;)。翌日の3月2日に生まれたのがベドルジハ・スメタナ。彼の代表作であり私の最も愛する「モルダウ」。今年の同日のグーグルのトップページはモルダウで、”GOOGLE”をクリックすると動画をバックにモルダウが流れる、という素敵なギミックとなっておりました。このコーナーでは記念すべきNo.100でターリッヒの演奏をご紹介しているのですが、今日は福間洸太朗のピアノで、彼自身による編曲版をお聞きいただきましょう。超絶技巧の中音楽性豊かにモルダウ川の流れを描き出している名演です。ではまた。

コメント

  1. ultima より:

    柏先生 お疲れさまです。
    先生のブログのお陰で 専ら私の朝の応援歌は8bitなガガガとなりました。先生と金爆とNHKに深く感謝したいと思います✨
    まさか私の初代アイドル・コメットさんがパニック障害に苦しまれていたとは…驚きました。悩みや症状が友人にも家族にも理解されない事はとても苦しいです。決死の思いで打ち明けた上司から、あなた その病名に逃げてるよね と言われた時は目の前が真っ暗になりました。もう誰を信頼すれば良いやら…八方塞がりの日々を過ごしました。今後はジュウショウワンと先生の熱い言葉を胸にちょっとずつ前進したいと思います。
    スメタナといえば懐かしの合唱コンクール!
    蒸し暑い体育館で 緊張と興奮の変な汗をかきながら歌いました。
    3年生の課題曲はモルダウだと、1年生の頃から知っていたので密かに常に練習して 伴奏しながらアルトpartを歌ってました。♭音階を愛する私にスメタナは とても心地よい響きです。長らく鍵盤から遠ざかって指は太りスケールはボロボロ…恩師に何と申し開きをしようかとも思いますがclassic愛を忘れず Rock魂も併せ持ち頑張りたいです! 次回の診察もよろしくお願いいたします。