横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.015 パニック障害(その2)

横浜院長の柏です。
いろいろ忙しくて、すっかり間があいてしまいました。申し訳ありません。今日はパニック障害の治療についてお話します。前回お話しました通り、パニック障害は二段階の経過を辿ります。はじめは強烈なパニック発作(不安発作)。そしてこれが繰り返される状況となると、ひきつづいて予期不安から広場恐怖、外出困難、さらにはうつ状態を来すことになります。治療もこうした病気の段階に合わせて行います。
治療の最初のポイントは、パニック発作を抑え込むことです。一旦パニック発作が起きてしまうと、予期不安が強まりさらにパニック発作が起こりやすくなる、という悪循環が生まれます。このためには薬物療法は必須であり、とくに急性期で発作が頻発しているような場合には、十分な薬物療法により発作が起こらない状態を作ることが治療の肝要となります。薬物療法としては、即効性のある抗不安薬と、即効性は期待できないが不安の起こりにくい状態を作る働きのあるSSRIとを併用する方法が標準的です。治療当初は十分な抗不安薬を用いることでとりあえず発作を抑え込み、そのうちにSSRIが効いてきて発作が起こりにくい状態を作っていく、という流れを作ります。
初期治療において薬物療法とともに大切なのが疾病教育、つまりパニック障害とはどういう病気なのかを正しく知ることです。最低限の知識として、
 ・パニック発作は長くても数十分で必ず収まる。
 ・パニック発作で死ぬことや気が狂うことはない。

発作の最中にはわかっていてもつらいものですが、少なくとも頭にこのことを置いておくことは救いになるものです。治療の場では、さらには予期不安や広場恐怖のメカニズムなどについての説明を行います。ほかの病気でもそうですが、正しい知識を持つことは治療をスムーズにするために大切なことです。
不安発作を抑え込むことが急性期治療の肝ですが、安定期に入っても綿密な治療の継続が必要です。すでに広場恐怖や外出困難などを生じている場合、SSRI中心の薬物療法により安全を確保した上で、認知行動療法のプログラムを取り入れる方法が効果的です。当院では個人カウンセリング、グループ治療の2つの形態での認知行動療法のプログラムを用意しており、ご活用いただければと存じます。認知行動療法は、方法を学習し自分で使えるようになることで、再発防止に大きな力を発揮する治療法なのです。
心療内科の病気は、「しっかり治す」ことが何より大切です。とりあえず発作が収まったからと自己判断で薬をやめてしまい、発作の再発をみる方が時々いらっしゃいます。私も治療教育の不十分さを反省させられる場面です。パニック障害の場合、ただ発作が収まるのみならず、脳の機能として安定した状態になるには1年は必要です。薬物療法は、医師の指導のもと、最低1年、できれば3年続けることで再発率を大幅に下げることができるのです。

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