横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.299 休職マニュアル

hitorigoto-299.png最近はロケット団したっぱのタレ目のお姉さん萌え…相変わらずオタク全開、横浜院長の柏です(^_^;; いよいよこのブログも299回目、ということは自動的に次回が記念すべき第300回ということになります。うーん、いつもながら節目のネタに困るワタクシです。この3連休だけは、土曜にお休みもいただきゆっくり過ごさせていただいたのですが、実はここんとこすげー忙しい日々が続いております。といいますのは、またまた発達障害関連でお話する機会が増えてきており、今月月初の青山学院大学大学院での集中講義からはじまり、今日は横浜市発達障害者支援センター主催の発達障害者相談基礎研修、そして終末には東京で医師向けの全国講演会、さらには院内掲示でもご案内していた市内某所での一般向け講演会と続きます。準備だけでも目が回る状況ですが、さらにNo.297でお話しました常勤N先生のご復帰が予定よりも遅くなることとなり、診療自体もたてこむ状況が続きます。引き続き、皆様には待ち時間や予約の取りにくさなどでご迷惑をおかけすると思いますが、何卒ご容赦のほどお願いいたします。
さて、ここのところ担当患者さんがうつ病での休職から復職する機会が多かったことから、今日はうつ病からの復職のポイントについて書いてみましょう。
うつ病とは、一言で言えばNo.115でお話した通り「エネルギーの低下する病気」です。よって、回復のためには一にも二にも、エネルギーを回復させなくてはいけません。そのために必要なことは休養です。仕事、学校、人間関係…様々なストレスにて消耗したこころと体の機能を回復させるためには、十分な休養が必要不可欠なのです。そのための大事な過程が「休職」です。ではその場合、どれくらいの休職期間が適切なのか、どのように休職期間を過ごすべきなのか、今日はそのあたりを書いてみましょう(No.159あたりも参考にしてください)。
上記No.115でも、「うつ病は、治療に反応するまでに1週間から1ヶ月、寛解(負担のない生活では症状が出ない)まで3ヶ月、回復(もとの生活でも症状が出ない)には1年かかる病気です」とありますね。これからすると、休職期間は1年とるべき…というのも一つの考え方となります。実際は、初回休職の場合、経験的には3−6ヶ月程度で復帰を目指すのが標準的かと思います。つまり、寛解に至っていることは必要条件ですが、回復については、会社の協力を得て、復帰後にそのプロセスを踏むことも可能、というかそれが現実的だということです(もちろん、このあたりはその会社の考え方、制度にもよります)。
休職期間は、大きく分けて前半と後半に分けられます。前半では、とにかくエネルギーをためることが最優先です。とくに休職当初は、それこそ一日中寝ていてもよろしい。昼夜逆転は困りますが、睡眠時間が長い分にはこの時期であれば問題ありません。とにかく、消耗したこころと体を十分休むことで癒やす必要があるのです(注:非定型うつ病の場合は、必ずしも休養最優先ではありません)。この時期は、会社に行かなくては、という焦りはあっても、会社に行きたい、仕事がしたい、とはならないものです。しかし、焦りはこころと体の消耗を生むだけです。ここはどっしりと休むことをまず考えましょう。じっくり休んでいると、そのうちに何もしないのが退屈に感じるようになってきます。自分から何かをしたいと思う、家で読書など、これまでやらなかったことをやり始めた…こうなればしめたもの。休職後半に徐々に入っていきます。後半では、ただ休むだけではなく、復帰に向けてのリハビリテーションを行っていきます。復帰された方が最初に大変だ、こんなはずでは、と思うことはどんなことが多いか、皆さん想像つきますか?気分が重いとか、やる気がでないとか、仕事を楽しく思えないとか・・・実はそんなことより「やたら疲れる」という方が多いのです。これはうつ病の症状としての易疲労性、倦怠の場合もありますが、私の見るところ、うつ病はよくなっているのだが純粋に体力が低下している、という方が多いんですね。日々の仕事、通勤をしていると毎日なんだかんだで体を使っています。これが休職となると、家からほとんど出ない、一日千歩も歩かない、そういう生活が続くと、当たり前ですが体力はぐっと低下します。よって、私が休職期間後半にとくに大事だと思っているのはこの体力の回復です。といっても、ずっと寝ていた人がいきなりジムへ行くのは厳しいかも。最初は近所を歩くことから。ポケモンGOingressもおすすめです。家でやるなら、定番ですがラジオ体操おすすめです。徐々に体力を戻し、やる気にしたがって(無理をしてはいけません!やらなくてはいけない、ではなく、やりたいからやる、とするのが原則)知的作業も徐々に入れていきます。読書であれば、最初はマンガ、週刊誌、そしてライトノベル、小説、そして仕事の参考書、といった感じで徐々に負荷をかけていきます。そして、復帰を目指すために次の段階ではこうした作業を外で行っていきます。無料で使える重要な社会資源が図書館ですね。図書館が遠ければ、カフェやファミレスなどでもいいでしょう。要は、人目につくところで作業をすること。そのためには、朝ちゃんと顔を洗って、着替えをしないといけません。最終的には朝から図書館に通い、一日作業をして夕方帰ってくるという生活ができれば、通常出勤のよいシミュレーションとなりますね。
と、こんな感じで進めば万々歳。繰り返しますが、仕事に行かなくては、ではなく、仕事をしたい、と思える段階までは無理はしてはいけない…これ基本です。
では今日の一曲。シリーズでお届けしている(笑)フランツ・リスト。リストは当代一流のピアニストとして活躍していたのですが、その真骨頂の一つが他の大作曲家のオーケストラ作品のピアノ編曲です。ベートーヴェンの交響曲全曲などが有名ですが、今日は小品とします。No.243でもご紹介したシューベルトのセレナーデ。美しい旋律が印象的ですが、リストによるピアノ編曲版を、ホロヴィッツによるこれまた美しい演奏でどうぞ。ではまた、次の第300回でお会いしましょう!

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