横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.408 解離症(解離性障害)

横浜院長の柏です。最近、発達障害と解離についていろいろ考えたり調べたりしており、ちょっとブログでも書いてみようかと思ったのですが、これまで400回以上も書いているのに解離についてほとんど書いていないことに気づきました(以前、一度だけ多重人格について書いております)。そこで、まずは解離性障害について簡単に説明することにしましょう。つい先日、われわれが日常的に使用している診断基準DSM-5のText Revision(改訂版)であるDSM-5-TRの日本語版が刊行され、そこでこれまで〇〇障害、と名付けられていたほとんどの精神障害が〇〇症と呼ぶ、ということになりました。このため、双極性障害は双極症、不安障害は不安症となります。よって、解離性障害も解離症となりますので、今日は解離症についてのお話となります(まだ私も新しい用語に慣れておらず、なんだか変な感じです)。

解離dissociationとは、読んで字のごとく、解いて離れること。化学では、CH3COOH↔CH3COO+H+ のように、構成分子や構成イオンに分かれることを言いますね。心理学・精神医学の分野では、人間の、いや人間の脳の持っている基本的な要素である意識、思考、感情、行動、感覚、記憶などが「解離」します。われわれは「今ここにいて何かをしている自分が自分である」ということを、とくに意識することもなく当たり前のこととして受け止めています。解離が起きると、その「当たり前」の前提が崩れてしまいます。意識や思考、感情などが解離して起きてくる現象が離人症です。離人…人と離れる…ここでは自分と離れる、という意味合いになります。離人症の状態になると、自分が自分でないように、自分が体験していることが自分の体験していることではないように、その時抱いている感情が自分の感情でないように、などと目の前の世界と自分自身が切り離されます。結果的に、まわりの世界がこれまでとなにか違う、色が消えて見える、自分が浮き上がってそこから自分を含めた世界を見ている、などと世界の見え方にも変化が生じます。

またわれわれは、過去~現在~未来とつながる時間軸の上に生きており、過去の自分と現在の自分が同一人物だということを、当たり前のこととして生きています(なお、この点についてはかつてブログで思考実験を試みたこともありましたね)。過去の特定の記憶が抜けてしまうことを健忘といいます。健忘の場合、まずは認知症や器質性の脳機能低下を考えますが、それらがない場合、解離性障害の一つである解離性健忘が疑われます。大きなストレスに見舞われた後、3日ほど行方不明になっていてその間の記憶が抜け落ちている、といった場合がその解離性健忘です。これを行動面から見ると「どこかへ行っていた」という行動が起きており、これは解離性遁走(とんそう)と呼ばれます。遁走とは逃げ出すという意味でして、形の上ではストレス状況から逃げ出してしまうことになります。

ここまで、いろいろな形の解離症をご紹介してきましたが、一番強烈な形で解離症状が出現するのが解離性同一症(解離性同一性障害、またの名を多重人格)です。これについては前述の通りNo.308にてご紹介しました。解離性同一症では、ひとりの人間の中に複数の人格が存在し、それらが入れ替わって出現します。他の人格の存在に気づいていたり、その行動を見ていたりする場合もありますが、典型的には他の人格が活動している場合、主人格(やその他の人格)は記憶がない状態となります。

DSM-5-TRと並んで国際的に使用されている診断基準にICD-10(間もなく11になります)がありますが、こちらでは解離症の中に解離性運動障害、解離性けいれん、解離性知覚麻痺および知覚脱失が入っています(11でも受け継がれるようです)。DSM-5-TRではこれらは変換症(DSM-5までは転換性障害と呼ばれていました)と呼ばれ、解離症とは別のカテゴリーとなっています。両診断基準の違いは、解離性の神経症状(=変換症)を解離症に含めるかどうかであり、DSMは含めない、ICDは含めるという違いとなっています。変換症については、No.399でもお話していますのでそちらもご参照下さい。解離性運動障害とは、体が動かない、声が出ないなど体の運動面での障害が起きているが、整形外科などで身体的な検索を行っても異常が見つからないもの。解離性けいれんとは、けいれん発作を示すが、脳波などで異常が見つからず、てんかんなどの脳疾患が否定されるもの。解離性知覚麻痺および知覚脱失とは、眼科や耳鼻科などの異常が否定されているのに、目が見えない、耳が聞こえないなどの障害を訴えるもの。いずれも、心因性の機序が考えられる場合に変換症(ICD-10では解離症の一部)と診断されます。

このような不思議な現象がなぜ起きるのでしょうか?このあたり、次回のブログで紐解いてみたいと思います。

あー、久々に教科書的ブログ書いたら疲れた(^^;;。今日の一曲は、なつかしの平成ライダー、仮面ライダー剣(ブレイド)から2曲をそれぞれライブの映像でご紹介しましょう。

まずは前期オープニングテーマ、相原七瀬のRound ZERO ~ BLADE BRAVEです。

続いてこちらは後期オープニングテーマ、RIDER CHIPS Featuring RickyによるELEMENTSです。こちらはYouTube埋め込みができないのでこちらからどうぞ。どちらもいいライブだ。ではまた。

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