横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.077 IPSRT

横浜院長の柏です。いよいよ年末ですね。双極性障害シリーズも大詰めです。今日は、薬物療法以外の心理社会的治療についてです。双極性障害は精神障害の中でも極めて生物学的な病気ですから、まずは薬物療法が第一選択です。しかし、薬物療法のみでは困難な事例も存在し、心理社会的治療を並行して行うことがとても大切になります。心理社会的治療として日本うつ病学会の治療ガイドラインで推奨されているのは、心理教育、家族療法と対人関係ー社会リズム療法(intrapersonal social rhythm therapy; IPSRT)の3つです。
心理教育とは、ご自身の病気がどんな病気なのか、症状、診断、これまでの経過の振り返りと今後の治療経過の予想、治療とくに薬物療法の方針、どういう生活を心がける必要があるか、その理由は、など治療にあたり大切なことをご説明することです。これは、双極性障害に限らず、ご来院されたすべての方に当初時間をかけて行うことになりますが、双極性障害の方の場合、ご自身の状態を客観的に捉えるのが難しい特性をもつ病気であることから、とくに大切だと考えています。家族療法も大切ですね。躁うつの波に翻弄されるのはご本人だけでなく、ご家族も同じかさらに大変なことも多いのです。
さて、今日のテーマのIPSRTです。これは、対人関係療法(interpersonal psychotherapy; IPT)をベースに、生活リズム、社会リズムの回復という、より生物学的な観点を組み入れた治療法です。IPTについてはいずれ書きますが(と、前にも書いた記憶がありますが(汗))、多くの精神疾患を引き起こす誘因が対人関係のストレスであること(これは、皆さんもご同意いただけるところと思います)をふまえ、とくにその方の「重要な他者」との間の対人関係を見直し、再構築をはかることで病気の改善を目指すのがIPTです。これに対してIPSRTは、ストレス、すなわち日常生活、社会生活での「刺激」である対人関係を量的に記録することで、刺激量を適切にコントロールし、それにより躁うつの波をコントロールすることを目指す治療法です。具体的な記録は、SRM(social rhythm metric)という記録用紙を用います。これは、一週間を一枚の用紙に記録しますが、その内容は①起床②初回対人接触③仕事等開始④夕食⑤就寝の各時刻、各対人接触の程度、一日の気分です(これは簡易版5項目で、人によって適切にカスタマイズします)。記録を継続することで、リズム、対人接触、気分の関係性の理解を得ることがその目標です。こうした記録用紙は、うつ病などで使う睡眠覚醒リズム表、月経前気分不快症(PMDD)で使うPMSチャートなどいろいろありますが、対人ストレスという新たな軸を組み入れた点は画期的だと思われます。当院でも徐々に取り入れておりますので、興味のある方は主治医とご相談下さいね。
IPSRTについては、水島広子先生主催のIPT勉強会でご一緒させていただいている生野信弘先生のHPに詳しいですので、そちらもご参照下さい。書籍では、水島先生の「対人関係でなおす双極性障害」に一般向けの記載があります。
IPT勉強会は、実は先週末も参加して参りました。麻布十番のお洒落な空気に染まり、わがクリニックに帰ってくると、西口の雑踏で街の違いを実感しますねぇ(汗)。横浜もお洒落な街のはずなんですけど・・・。

コメント

  1. 隊長 より:

    興味深い内容になってきました。
    SRMを用いるのは、認知行動療法にもあてはまりますね。
    ただ、対人ストレスをあまり感じていない私ですが、効果のほどはどのくらいなのか?
    年明け早々の診察で、理事長にそうだんでしょうかね?

  2. 横浜院長 より:

    隊長さん
    対人ストレス、ほんとうに感じていませんか?
    当院にいらっしゃる方のほとんどの方は、何らかの対人ストレスが原因あるいは誘因のひとつとなっています。現代社会は、対人ストレスと無縁ではいられないように思います。
    また、人と会ってうれしい、楽しいというのも刺激という意味では一種の対人ストレスとも言えます。SRMはやってみる意味あるんじゃないでしょうかね。主治医とよくご相談下さいね。

  3. 隊長 より:

    なるほど、刺激という意味においてはストレスを感じていますね。
    「何から話しだそうか?」もそうですよね。
    意識してみます。