横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.168 抗うつ薬?抗うつ病薬?

hitorigoto-168.jpg横浜院長の柏です。夜な夜なクリニック近くで多重作りに励み、ingressもレベル15まできました。最高レベルの16まであと一つ。しかしオニキス2つが厳しいのでしばらくかかりそうです・・・。もう一枚は、先日の東京タワーノヴァのものです。リンクが5千本近く世界記録とのこと。たまたま近くにいたので撮った一枚です。すごいでしょ・・・ってわかるひとごく一部ですね。すみません。
しばらく雑談ばかりだったので、本題(どっちが本題かわかりませんが)に戻りましょう。うつ病の治療、薬物療法のおはなしです。うつ病の治療で一番大切なおくすりは、抗うつ薬と呼ばれるものです。名前の通り、うつ病をよくするおくすりですね。ただ、「抗うつ病薬」でなく「抗うつ薬」なんですね。英語ですとantidepressantでして、うつもうつ病もどっちもdepressionなもんだから、これはまあどっちの意味も含んでいるわけですね。わが国でも一般的には「うつ」と言った場合、「抑うつ(状態)」と言う意味と「うつ病」という二つの意味があるわけでして(No.114参照)、「抗うつ薬」でうつ病のくすり、でよいのかも知れませんが、なかなか微妙なところです。抗うつ薬には、大きく分けて三環系抗うつ薬を中心とする古典的なくすりと、SSRIに代表される新しいくすりとがありますが、私見では古典的なくすりは「抗うつ病薬」、新しい薬は「抗うつ薬」と言えると思います。
SSRIとは選択的セロトニン再取り込み阻害薬(selective serotonin reuptake inhibitor)の略で、脳でセロトニンという物質を特異的に増やします。セロトニンは抑うつや不安と直接関係していると考えられている神経伝達物質で、これを増やすことで抑うつや不安を改善するわけです。三環系抗うつ薬はより多くの物質に影響するため、より多様な作用が期待される反面、コリン系神経を遮断することによる便秘、口渇、あるいは心血管系への影響など不快な、あるいは危険ともなりうる副作用がより多いことから、最近ではSSRIなどの新規抗うつ薬が第一選択となることが多いのです。副作用が少ない(といっても、胃もたれ、吐き気やNo.153でお示ししたアクティベーション・シンドロームなどもありやはり注意は必要です)こともあり、SSRIはうつ病にとどまらず、不安障害や摂食障害などでうつ病の診断基準を満たさないうつ状態にも、現実には幅広く使われ効果を上げています。つまり、SSRIは抗うつ病薬というよりは抗うつ薬という呼び名がふさわしいと言えます。
一方の三環系抗うつ薬。日本最初のSSRIであるフルボキサミン(商品名デプロメール、ルボックス)が出たのが1999年ですので、1988年に医者になった私は最初の10年余りは三環系など古い薬だけを使っていたわけです(ちなみに1999年といえば、7の月に恐怖の大王が降りてくるというのが「ノストラダムスの大予言」ですが、その月に降りてきたのがうちの長男でございます(^_^; あ、また脱線した・・・)。その頃からの経験も含めて申し上げると、三環系抗うつ薬はやはりうつ病治療の切り札です。もちろん副作用には注意が必要ですが、新規抗うつ薬にはない、うつ病を根底から持ち上げる強いポテンシャルを持っています。全体にうつ病の軽症化が言われる昨今、SSRIで十分回復できるうつ病の方が多いことは事実ですが、それでよくならない場合、あるいは最初から程度の重い場合は、三環系を使うことを考えるべきです。三環系抗うつ薬は、生命の根源にとどくようなうつ病をしっかり治してくれる、マジカルな力を見せてくれることがあります。逆に前述の、うつ病ではない「うつ状態」にはどうも効きがよくないこともあり、三環系こそが「抗うつ病薬」と呼ぶにふさわしいくすりだと思います。
なお、同じうつ病の状態に見えても、双極性障害のうつ状態の場合、三環系抗うつ薬は躁転のリスクを伴い、SSRIのほうがより安全とされていますのでその点は注意が必要です。
経済性の面から見ても、三環系は古い薬なので値段がずっと安くなります。
十分量を使う場合、SSRIだと一日にレクサプロ10mgx2錠で130円(3割負担の場合、以下同)、ジェイゾロフト100mgで91円、同ジェネリックでも45円です。これに対して三環系は、一番古いトフラニール25mg錠は一錠の定価(10割自己負担で)が9.9円ですから、一日最大量の225mg=9錠でも3割負担で26円です。こうした面も大切なことだと思っています。
大切なことは、その方その方にあったくすりをしっかり見定めていくこと。三環系であれ、SSRIであれ、そのくすりに救われたという方はたくさんいらっしゃるわけです。くすりの選択・・・われわれ治療者の責任重大なところでもありますね。
さて今日の一曲です。冬の寒い日はやはりロシアの響きが似合います。今日はラフマニノフのピアノ協奏曲にしましょう。No.130では第3番をご紹介しましたので、今日は第2番です。哀愁漂う旋律がとても印象的です。キーシンのピアノでどうぞ。

コメント

  1. 伊藤佳子 より:

    この曲一番好きです(*^_^*)キーシン裏切ら無いですね30年くらい前に天才少年として出て来て今オッちゃんになって変わらず活躍してて今のピアニストはやはりキーシンかなぁ〜私はアシュケナージやケンプが好きですがもう昔の人で
    このコンチェルトはラフマニが鬱から催眠療法で治って出来た作品なんですよね
    いい曲ありがとうございました

  2. 横浜院長 より:

    伊藤さん
    おくればせですが、コメントありがとうございます。
    やはり2番いいですよね。私も一番好きですよ。