横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.213 金融リテラシー(その1)

横浜院長の柏です。保険など「必要ない、必要ない」というブラックスワンに対して、正義の(?)アヒルが登場して保険に入る、というおなじみのCMがありますね。これを見ての私の感想は、「ブラックスワン、お前は正しい」。今日はちょっと趣向を変えて、お金の話をいたします。
大金持ちでも幸せでない人はいますし、お金がなくても幸せな人もたくさんいます。幸せかどうかは「こころが決める」のです。しかしそうは言ってもこの世で生きていく以上、お金の話は避けては通れません。金銭的なことが原因でうつなどの病気になることも、たしかにあるのです。最低限の金融リテラシーの知識は、身を助けることになります。私自身も、日本人らしく「カネの話をするのは…」という文化で育ってきましたが、これではいかんといろいろ勉強しました。数年前にはファイナンシャル・プランニング技能士(FP)2級なる資格を取得しました。皆さんのFP相談にも乗って差し上げたいところですが、今の診察時間帯の様子ではとてもできませんね。ごめんなさいm(__)m。
子供の頃、イソップ童話だったかを読んでいて、「こうりがし」というのが出てきました。「なんやこれ?」とわからないながらも、よくない人たちだという印象だけが強く残っておりました。「こうりがし」が「高利貸し」だと知るのは、ずっと後になってからのことでした。
先週のクローズアップ現代で、銀行カードローンについて扱っていました。今やどこの銀行も、堂々とカードローンのTVCMを打ってますよね。かつてはサラ金・闇金と社会の裏側にあったものが表舞台に出て、かつ「銀行」という経済の中心を担うべきものがそれを堂々と行う。番組によると、中には収益の半分が個人ローンという銀行もあるということです。銀行は「こうりがし」にまで落ちぶれてしまったのでしょうか。その矜持はどこへ行ってしまったんでしょうか。
借りたお金は返さなくてはなりませんし、利子がつきますので借りたお金以上の金額を返すことになります。カードのリボルビング払いなんて、利子つきまくりでいいことなど一つもありません。カード会社は、当然ですけどそっちの方がもうかりますからそっちを勧めます。しかし、会社がもうかるということは消費者の側は損をするということです。この辺の当たり前のことが、どうにも忘れ去られていないか、現代の風潮には非常に危惧を覚えています。
カードローンを使うべき場面とはどんな場面でしょうか。生活費が足りない…といって借りてしまって、来月返せるんでしょうか?恒常的に収入に対して支出が多い=バランスシートがマイナスな状況であれば、借りて補うのではなく、支出を削るか収入を増やさなくてはいけません。現代日本は飽食の社会です。まずは、支出で削るべき場所を真剣に考えるべきでしょう。となると、カードローンを使うべき場面があるとすれば、それは臨時の支出が大きく一時的に赤字となる場面に限られるでしょう。突然の病気や事故、それに伴う休業、出産、入園入学、開業、そんなところでしょうか。あるいは家や車など、大きな買い物(それも余裕がある、あるいは車が必需品な場合であって、なしですます方法も考えるべき)の際は、それ専用のローンを使うのは当然のことかとは思います。しかるに番組で紹介された利用目的では、娯楽交際費が48.3%をも占めてしまっています。冠婚葬祭ならやむを得ない場合もあるでしょうが、おそらくはそうでないものが多く入っているでしょう。娯楽も交際も、手持ちのお金の中で余裕がある分だけに留めるべきです。誘われても、「ごめん、今月ピンチなんだ」でいいじゃないですか。新作ゲームほしくても、ちょっと我慢しましょうよ。
以前、パチンコはそのアクセスの良さがあかん、と書きました。サラ金の時代もCMうちまくって、「むじんくん」とかあって(まだあるのか?)と容易にアクセスできるシステムが作り上げられましたが、これがどこの街にもあって、しかも誰でも堂々と入れる銀行がやってるんですから救われません。刺激的で誘惑の多い現代社会、何も考えずに欲しいものを買っていたら大変なことになります。いかに欲望をコントロールしていくのか。金融リテラシーの正しい知識をもって、カードローンなどには手を出さない、その範囲で生活していくことが大切です。大やけどしちゃった方をたくさん見てきた一医師が、心から申し上げたいことです。
…おっと、肝心のブラックスワンの話までたどり着きませんでした。次回のお楽しみにいたしましょう。
今日の一曲は、ヴァイオリンの小曲です。ヨアヒム・ラフのカヴァティーナを、パールマンのヴァイオリンでどうぞ。研修医の頃、H先生のヴァイオリンと私のピアノで、大学デイケアで弾かせていただいた一品でもあります。ではまた。

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