横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.222 後発薬

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横浜院長の柏です。今回は222とゾロ目ですね(^_^)v
米アマゾンがホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)を巨額買収するというニュースがありました。ホールフーズといえば、留学中にわが家御用達だった、オーガニックフーズを扱うスーパーです。一昨年夏休みに渡米した際もお世話になってます。写真はその時行ったCupertinoのお店と、San Joseのお店で買ってかついで帰ってきた、かみさんお気に入りのカートです。アマゾンの力で日本進出しないかな。
今日は事情があって、エビリファイというお薬について書きます。この薬はドーパミンの部分アゴニストという変わったお薬でして、おおまかに言うと(厳密にはちょっと違う)、脳のドーパミンが多ければ量を減らし、逆に少なければ量を増やし、ちょうどいい量にしてくれる、という魔法のようなお薬です。そうした特殊な力のために、このお薬は統合失調症から双極性障害、うつ病から自閉スペクトラム症まで幅広い病気で使われており、かつ保険適応もあります。統合失調症の急性期や双極性障害の躁状態など、エネルギーが爆発しているときにはドーパミンを抑え、逆にうつ状態や統合失調症の陰性症状主体の状態ではドーパミンを増やしてあげる(これも厳密な表現ではない)ことで、うまく中庸を保ち心身の健康につなげる、そんなお薬です。
さて、お薬の開発にはとてつもないお金がかかります。このため、製薬会社は新薬を作り、承認されるとしばらくは特許により独占的に薬を売ることができます。しかし一定の期間が過ぎると後発薬(いわゆるジェネリック医薬品)が発売可能となり、同一薬効のものをより安価に入手することができるようになります。最近、この10年くらい新薬として精神科医療に貢献してきたお薬たちが順番に後発薬発売のタイミングを迎えています。セロクエル、パキシル、ジェイゾロフト、ジプレキサ…。精神科の新しい薬は、なんでこんなに高いの?
というものがゴロゴロしていますので、後発薬により経済的負担が減るのは喜ばしいことであり、私は基本的に後発薬推進派です。私自身も、自分の薬は基本後発薬にしています。たまに、なぜか後発品に変えたら体調などに影響が出る人もいます。主剤以外に入っている賦形剤と呼ばれる物質の違いとか、繊細な方には影響することもないわけではないようですが、ほとんどの方は問題ありません。
エビリファイも、ついに後発品発売のタイミングを迎えています。が、これまでの薬と違い、今回とてもややこしい事態が発生しています。上述のようにエビリファイは様々な病気への保険適応があるのですが、今回後発品については「統合失調症だけ」適応、という大きなしばりがかかってしまったのです。つまり、うつ病や双極性障害、自閉スペクトラム症などでこの薬を使っている場合、後発薬は使えない、ということになるのです。当院の場合、うつ病の方に使っているケースが一番多いはずですが、この場合先発品のみとなってしまいます。保険診療上アウトであること、万一重篤な副作用が起こった場合に(私はこれまでこの薬で重篤なものの経験は一例もないですが)補償されない可能性があること、これらを考え、当院では統合失調症の方以外では後発薬への「変更不可」と処方箋に明記せざるを得ない、と判断しました。なんで安い薬が出たのに使えないの?と納得がいかない方もいらっしゃると思いますが、こうした事情ですので(国の方針としか言いようがない)何卒ご理解いただければと存じます。ご不明の点は、主治医までお尋ね下さいね。なお、後発薬は物質名で「アリピプラゾール」となります。今週は木曜から名古屋で精神神経学会があり、私もシンポジストとして参加してまいります。休診、代診にてご迷惑をおかけしますがよろしくお願いいたします。前後は混み合いますので悪しからず!
今日の一曲は私の大好きなブルックナーの交響曲から、第8番の最終楽章をギュンター・ヴァント指揮、北ドイツ放送交響楽団の演奏でどうぞ。全曲はこちらにあります。
ブルックナーの交響曲はベートーヴェンと同じで9曲ありますが、後ろに行くほど内容が深くなり、最高傑作は未完の第9番です。。しかしこの第8番も甲乙つけがたい傑作でして、とくにこの最終楽章は子供の頃から大好きでした。景気づけに、今日はこの曲をかけながら学会準備をしたいと思います。ではまた。

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