横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.362 ワクチンを打とう!

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浜院長の柏です。私は月曜休みなのですが、新型コロナワクチン打ち手不足の報道をふまえ、県内某所にワクチン普及の営業活動に行ってまいりました。といいましても、効率的に回すために医師の仕事はメインが問診。来られた方々の予診票を見て質問し、安全に接種可能かどうかの判断をします。大丈夫となれば、流れ作業で次に控える看護師がワクチン接種。その後15分会場内で経過を見て、何もなければお帰りいただき、何か副反応や即時アレルギーが疑われた場合には医師が対応することになりますが、今日は何もなく平和に終了しました。といいますのも、強烈なアレルギー反応であるアナフィラキシーを起こす頻度は、厚労省HPによればファイザーワクチン国内13,059,159回接種中169件、実に0.0013%(10万回打って1.3回)です。ゼロではありませんが、極めて稀なことと言えます(蕎麦の方がはるかに高いようです)。しかも、ほとんどの方はその後回復しています。
新型コロナウイルスは、ほどほどの感染力、ほどほどの致死率、そして潜伏期間がほどほどに長いという、なかなか厄介な代物です(山中伸弥教授のHP参照)。エボラ出血熱のように致死率が高ければ、地域的流行にはなっても、感染者が移動する前に死亡することもあって世界的流行(パンデミック)にはなりにくいのですが、新型コロナはかかっても軽症あるいは症状なしの方も多いため、知らぬうちに広範囲にウイルスが広がってしまうのです。
わが国の6月20日までのデータでは、感染者785,702人、死者14,373ですから、概算死亡率は1.8%です。さきほどの山中教授のHPによると、中国のデータですが70歳以上では死亡率10%、20代、30代の人でも500人に1人(0.2%)が亡くなるとのこと。500人に1人が亡くなる乗り物に…乗りたくないですよね。また、死ななくても肺機能低下(苦しく、日常生活でつらさを感じる)、味覚・嗅覚障害(味がにおいがわからない)、男性不妊(これまでおたふく風邪が知られていましたが、新型コロナも精子の能力に影響するというデータがあります)などの後遺症の可能性もあるのです。若い方であっても、かからないに越したことはありません。
アメリカやブラジルなどで大流行、死者もたくさん出る状況の中、日本は比較的よくやってきました。アメリカでは6月20日までのデータで感染者3,354万人、死者601,842人と死者で42倍の開きがあります。このデータからの概算死亡率は1.8%と、なんと日本とほぼ同じなんですね。やはり、かからないことが一番大切です。この42倍の開きについて、かつてわが国のファクターXとかいって、BCGだとか既感染とかいろんな風説が飛び交ったわけですが、結局どれも否定されました。つまるところ、日本人はマスクをしてきちんと手を洗う、そうした基本的衛生概念が以前から徹底されていたこと、そしてそれを真面目に愚直に行う国民性こそがファクターXそのものだったわけでしょう。マスクに抵抗が強く、手を洗う習慣すらない国もある欧米諸国とはかなりの違いがあったものと考えられます。次は宰相。トランプ、ボルソナロと「コロナは風邪」派が宰相の国は圧倒的な感染者数を出しています(バイデンになってよかったですね)。当初危ぶまれたジョンソンのイギリスは、彼自身が感染後に自らを省みて適切な対策を打つようになってからは感染者数を減らしています。安倍、菅の両首相、アホな政策もありましたが、尾身先生たちの活躍もあってマスク・手洗い・三密回避とわかりやすいスローガンで、感染をある程度食い止めることに成功しました。しかし、緊急事態宣言/マンボーは一時的な効果に過ぎず、ハンマー&ダンス(感染者が増えればハンマーをおろして制限を加え、減ったらダンス(自由行動の拡大)にも限界があります。何度も繰り返すうちに、飲食店などがつぶれ、大衆の我慢も限界になります。といって、1.8%が亡くなる病気を流行るに任せることはできません。やはり、根本的解決にはワクチンしかないのです。
ファイザー、モデルナのmRNAワクチンは、私が想像していたよりもはるかに優れた代物でした。当初は重症化を防ぐ力しかないと言われていましたが、その後の研究で感染予防効果も95%あるなどの高い有効性が示されました。さらには、変異株への効果も、イギリス株(アルファ株)、インド株(デルタ株)にも高い効果が示され、さらに最新データではブラジル株(ガンマ株)にも効果が期待されているようです。イギリスやロシアなどで今このインド株が新たなピークを作りつつあり、その先ブラジル株が脅威と考えられていますが、これらすべてに効果を持つというのは素晴らしいことです。ここで、私が考える日本政府の一番のクリーンヒットは、ファイザーとモデルナのワクチンをしっかり全国民分確保したことです(一方で、最悪のエラーはオリンピック開催…にならないことを心から願っています)。アストラゼネカは、ファイザー・モデルナにない血栓症リスク(ただ、これも100万人に4人と極めて稀です)に加え、インド株などの変異株への効果が低いようで、そのためイギリスで最近インド株と思われる新たな流行が見られています。中国製ワクチンも、南米チリなどで流行抑制に至らず、またインドネシアでも接種した医師で多数感染者が出るなど、その効果に疑問が持たれています。有効性が高く、今後の変異株にも効果が期待される最優等生であるファイザー・モデルナワクチンを国民の大多数が接種できれば、世界的に流行が繰り返される中でしっかりとした経済回復ができる、V字回復も夢ではないと思うのです。
わが国は、ワクチンの開始こそ欧米に遅れを取りましたが、何事も始まると皆で力を合わせてどんどん進める力のある国民性。あっという間に累計3,160万人が少なくとも1回のワクチンを受けています。今日から職域接種もはじまり、65歳以下の方々へも接種が進むことが期待されます。わが家も、大学生の長男が某ベンチャーでも働いている関係で、長男と妻が明後日にモデルナワクチンを受けられることとなりました。長男は来月留学先のアメリカ・カリフォルニアに1年数カ月ぶりに帰る(それまでこちらでweb講義を昼夜逆転生活で受けていました)予定なので、なんとか間に合った感じです(なお、私は医療従事者なので先月ファイザーの2回目を終えています)。あとは高校生の次男だけとなります。そのカリフォルニアは、この15日に経済活動が完全正常化されています。イスラエルなどもそうでして、ワクチン接種率が高くなることによりようやくハンマー&ダンスなどが必要なくなり、通常の生活を謳歌できるようになるのです。
世の中にはいろんな人がいて、ワクチンと聞くと嫌悪感をあらわにし、反ワクチン活動に余念のない方々も存在します。以前(こことかこことか)にも書きましたが、子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)も、反ワクチン活動家のためにわが国だけが積極的接種が控えられる事態となり、ワクチンさえ打っていれば防げた可能性の高い子宮頸がんで亡くなったり、子どもを産めなくなる人が多数出たりする状況となっています。高1までの女子は無料で、それ以上の年齢の女性であっても子宮頸がんを心配される方はぜひ(有料にはなりますが投資するに足る出費だと思います)受けていただきたい。こちらのサイト(みんパピ)もぜひご覧ください。
新型コロナワクチンでも、このHPVワクチンの時と同じく、反ワクチンの方々がいろいろな主張をしています。曰く、新型コロナワクチンの存在は証明されていない(???)、不顕性感染はしない(???)、mRNAワクチンはまだ研究途中のもので安全ではない、ワクチンを打つと5Gの電波で操作されるようになる(頭大丈夫ですか?)などなど。ここをご覧の方々は明らかな反ワクチンはおかしいと思っていただけると思うのですが、それでも世界初というワクチンへの不安はあるかも知れませんね。mRNAとは体に必要なタンパク質を作る鋳型となる物質で、DNAから必要に応じて作り出される(転写)ものです。これを外から入れてあげて、リボソームという身体がもともと持っている器官を使ってmRNAにコードされたタンパク質(この場合は新型コロナウイルスのスパイクタンパク質の一部)を作り出します。すると身体がこれを異物とみなして攻撃し、新型コロナウイルスに対する免疫が成立し、あとから本物の新型コロナが来ても撃退できる、というのがワクチンの仕組みです。mRNA自体は極めて不安定な物質で、蛋白を作ったあとはすぐに分解されてしまいます。DNAに逆転写されて(遺伝子として生き残って)体の中で悪さをする、ということはありえません(セントラル・ドグマという生物学の基本に反します)。私もかつては実験でmRNAをよく扱っていましたが、すぐ壊れるのでDNAやタンパク質と比べても慎重に、慎重に扱ったものです。冷蔵庫が壊れてワクチンがだめになった、というニュースが何度もありましたが、こうしたmRNAの脆さが関係しているわけです。
欧米でファイザー・モデルナのワクチンが使用開始されてすでに半年。治験段階からはもっと経っており、長期的な安全性も確立されつつあります(同時に、長期的効果についても)。数年後に何がおこるかわからないじゃないか、と声もありますね。たしかに、まだわかりません。しかし、mRNAワクチンの仕組みを考えると、体に残っているのはスパイク蛋白への抗体と免疫システムだけなので、それ以上の健康上の問題が起こるとは医学的にまず考えられません。絶対を求めることはできません。それを言い出したら新製品のインスタントラーメンだって食べて1年後に絶対病気にならないとは言えないし、自動車会社の新車種が1年後に絶対爆発しないとは言い切れません。しかし、新型コロナはかかれば若い人でも500人に1人が亡くなる、こちらは事実です。ワクチンは当然のこととしてリスクとベネフィットを考え、ベネフィットがリスクを上回る場合にのみ使われるべきですが、今回は圧倒的にベネフィットが高い(リスクはほぼ無視できる水準)と見るべきなのです。なので、私は私自身、そして大切な家族にも少しでも早く打たせる決断をしたのです。こちらのページ(こびナビ)もオススメです。ぜひご覧ください。
職域接種の次は65歳以下、一般の方々の接種です。もともとは、高齢者の次は障害者と言われていましたが、接種スピードが予想より早く、すでに一般接種に突入ということなのでしょう。ここをお読みの皆さんも、接種券が届いたら(職域の場合は届かなくても大丈夫です)なるべく早くワクチンを受けてください。皆様の健康をお預かりする医師として、心からそれを願っています。
作曲家・小林亜星氏が亡くなりました。まさに巨星墜つ、という感じですね。Wikiをみると慶応医学部に入ったのに医者になりたくない、と転部しちゃってるんですね。高校の同じクラスに冨田勲、林光と、大作曲家が3人もいるってありえないですよね。びっくり。そんな亜星さん。特撮・アニメファンとしても大変お世話になりました。先日ご紹介したファイヤーマンも彼の作品。今日の一曲はアニメで行こうと思うのですが、ほかにも名作が多い中私のセレクトはこれ、「未来ロボ ダルタニアス」からオープニング&エンディングテーマです。ロボットアニメとしてはなかなかマイナーな作品ですが、実はクローン人間・クロッペンの悲哀を描いた秀作なのです。ではまた。

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