横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.069 抗てんかん薬 その2

ダブル台風を見て、仮面ライダーV3を思い出していた横浜院長の柏です。そういえば数日前の新聞に、「ツインテールが人気」とありましたね。いやぁツインテールが好きなんて、グドンだけと思っていた私にはびっくりでしたねぇ。
さてさて、少し脱線が続きましたので復習から始めましょう。双極性障害の治療の柱は、気分調整薬mood stabilizersです。このグループの薬は、躁うつの振幅を小さくする、つまり全体のバランスを整える薬です。これに対して、たとえばうつ病で使われる抗うつ薬は気分を持ち上げる、つまりプラス側に動かす薬であり、統合失調症で使われる定型抗精神病薬は精神病症状を抑える、つまりマイナス側に動かす薬です。
ここで、心療内科・精神科の治療の基本に立ち帰ってみましょう。以前、No.017およびNo.018でお話ししていますのでご再読下さい。この2回のブログでの例えで行くなら、抗うつ薬と定型抗精神病薬は「坂から落ちないように支える薬」であり、気分調整薬は「時間をかけて坂そのものを直していく(平らにする)薬」ということになります。もちろん躁でもうつでも急性期には前者も必要となりますが、ともすれば目の前の気分にとらわれがちなこの病気、長期戦の構えで揺れない地盤をしっかり作っていきたいものです。
さて、てんかんの動物モデルとしてキンドリング(点火)モデルというものがあります。ネズミの脳に強い電気を流すとけいれんが起こりますが、弱い電気では起こりません。しかし、その弱い電気を間をおいて繰り返し流していくと、そのうちにけいれんが起こるようになり、その後は長い間をおいても弱い電気でけいれんが起こってしまうのです。そう、けいれんが起こりやすいネズミになってしまう。これをキンドリング現象と呼びます。坂が急になっちゃっている状態ですね。思うに心療内科・精神科の病気は、双極性障害にせようつ病にせよパニック障害にせよ統合失調症にせよ、「打たれ弱くなる」のがその一つの本態とも言えます。普段なら大丈夫な程度のストレスが、えらくこたえてしまう、症状が出てしまう、これが悪い時の特徴です。これはストレス脆弱性(ぜいじゃくせい、難しい言葉ですね)と呼ばれます。てんかんのキンドリングに相当すると考えてよいでしょう(統合失調症では逆耐性モデルというのがありますが、いずれお話ししますね)。
こうしたことから、抗てんかん薬であるバルプロ酸やラモトリギンなどが双極性障害にも効果があるというのは、「坂を平らにする」ところで共通点があるのではないかと私は考えています。てんかんにおける発作の起こりやすさ、双極性障害における気分のゆらぎやすさ、これらには共通するメカニズムがあり、そこに抗てんかん薬は効いているのではないか、というわけです。

コメント

  1. 隊長 より:

    なるほど、坂を平らにする作用が振り幅をおさえているという理解でよろしいでしょうか?
    なかなか深い話ですね。
    すごく興味深い内容です。
    「打たれ弱い」とありましたが、デイケアのベテランナースさんからは「打たれ強い隊長」と言われてます。
    というのも、何度就職に失敗してもすぐに次に取り掛かるから。だそうです。
    離婚してもすぐに婚活始めてるしなぁ…

  2. 横浜院長 より:

    隊長さん
    いつもご愛読ありがとうございます。
    失敗してもすぐに立ち上がる。素晴らしいですね。ただ、この「打たれ強さ」と病気による「打たれ弱さ」はちょっと内容が異なる可能性があるので注意が必要かも、です。行動力があることは素晴らしいのですが、下手をすると次なるストレスにつながる危険もあります。
    適切な状況判断(まわりの状況と、自分の状態を冷静に分析)をして、「行動しない」という選択肢も視野に入れつつ、適切な行動をとっていく、それが健康の秘訣であります。どうぞご自愛下さい。
    ・・・ちょっと辛口になっちゃいましたかね?

  3. まねきねこ より:

    またV3とかおっしゃって、ほんとうにお好きなんですね、仮面ライダー。何年か前にCSで放送してましたよ。よくやっているんじゃないかと思いますが。私は40代になって初めてCSで仮面ライダーアマゾンを観ました。知人の話によれば、あれはPTAの攻撃の的になって、放送中止の危機にまでさらされたそうです。子どもが真似したらどうするんですか!とか、ヒーローが裸で街を走り回るのは教育に悪いとか。しかし、子どもだってそんなバカじゃないですわな~パンツ一丁で街を走り回ったりしないけど・・・。
    ただ、ずっと服らしい服も着ていなかったくせに、アマゾンに帰る時だけ、なぜか売れない演歌歌手みたいなスーツを着込んでいたのが突っ込みどころでした。
     撮影が冬(他の出演者がコートを着ている)なのに、パンツ一丁と言う、アマゾン役の岡崎さんのストレスに関してふと、思いが馳せられます。あの時代はまさに、打たれ強さのみを求められた時代。1に根性、2に根性。健康を崩したら、根性がないとかプロ意識がないとか言われてしまう(今でもそうですが)時代でしたから、大変だっただろうなあと思います。岡崎さん、そういえば見かけませんね。気になります。

  4. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    アマゾンですか。異色作でしたね。個人的には、いつも十面鬼の役者さんたちが大変やな〜と思って見ていたことを覚えてますねぇ。

  5. パバゲーナ より:

    ダーブル・タイフーンー♪、イノチのベールートー!!♪
    久々のカキコ、鳴り物入りで失礼いたします。
    柏先生には大変に失礼千万なことですが、
    先生が声帯を患われて、診察に復帰なさった時の
    秘密兵器、“イノチのベルト”を拝見して
    待合室で通院仲間と、web上のライダーベルトを検索して
    どのタイプに近いかな。。。。と検索していたワタクシメです。
    当時は、院長先生がライダーファンだとは知りませんでしたが。
    (不謹慎極まりなし。。。お詫びの言葉も無しでございます)
    大昔、石森章太郎先生とは袖触れ合うご縁がありました。
    バイト先の料亭に手塚プロのご招待でお出ましになられ
    お出迎えからお見送りまで張り付きで、
    お給仕のをさせて頂いた恐れ多い思い出があります。
    地味で控え目、まったく偉ぶらない優しく柔和なお人柄。
    もしかしたら、その頃すでに病んでらしたのかもしれませんが。。。
    トレードマークのヘアスタイルだけが、
    カメラマンか、画家かジャズミュージシャンか??といった
    強いインパクトをお持ちだったと思います。
    そして、ご一緒だったのはこれまた少女時代大ファンだった
    少女漫画界の女王、里中満智子先生。。
    幼少の頃から、お二人の大ファンだったワタクシは
    お見送りするまで、大汗をかく大緊張の一席でした。