横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.066 抗てんかん薬 その1

横浜院長の柏です。双極性障害のお薬シリーズ、第2弾はてんかんのお薬の話にしましょう。双極性障害なのにてんかん?? と不思議に思われる方もいらっしゃるでしょうが、この二つの病気の両方に使われるお薬はたくさんあるんですよ。どうしててんかんのお薬が双極性障害に効くのか。これまた、よくわかっていないんですね。何か最近「よくわかってない」ばかり書いていますね。さほどかように、脳の病気は難しいところがあります。脳は非線形、複雑系のシステムですから、従来の線形数学では記述しきれない要素があります。とくに精神疾患は脳の最も高次な機能の障害ですから、複雑系システムの破綻と捉えないと本質を見誤ることになります。こうしたことが、「よくわかっていない」の背景にあると私は考えています。
閑話休題。まずはてんかんについて簡単にお話ししましょう。広辞苑では

てんかん【癲癇】 発作的に痙攣(ケイレン)・意識喪失などの症状を現す疾患。脳に外傷・腫瘍などがあって起こる症候性のものと、原因の明らかでない真性癲癇とがある。くつち。

とあります。難しい漢字ですね。けいれん、意識消失を起こす神経疾患です。てんかんは精神科領域でもとても大切な病気なので、いずれ項を改めてきちんと書く必要があると思っています。しかし現状では、てんかんは精神科ではなく小児科、神経内科、脳外科が診るのが普通となってきており、これは精神科医としては忸怩たる思いがあります。旧来、クレペリンの流れを受け継ぐ日本の精神医学では精神分裂病(統合失調症)、躁うつ病(双極性障害)、てんかんは3大精神病と呼ばれ、最重要項目となっていました。私が研修医であった四半世紀前の東大病院でも、外来には多くのてんかんの患者さんが来院されており、私自身の外来も2-3割がてんかんの方であったと記憶しています。てんかんの検査として脳波検査がありますが、当時の東大では、新患の患者さんは診断を問わず片っ端から脳波検査を行い、研修医向けに毎週脳波セミナーが行われていました。臨床的には発作はないが脳波では異常が認められ、それが精神症状と関連しているケースもあり、大変勉強になりました。今、クリニックでは私の外来でもてんかんの方は、前職の大学病院から引き続き診ている方を含め数名に過ぎません。脳波検査を外注しなくてはならないなどの制約はありますが、私としてはてんかんの診療も積極的に進めていきたいと考えています。てんかんは神経内科ではなく精神科が診るべき、というのが私の持論です。というのは、てんかんの方は発作だけではなく精神症状を伴うことがかなり多いからです。てんかんの本態は、脳内神経回路の異常放電です。けいれんや意識消失は「目に見える」異常放電ですが、異常放電にはもっと微細な、わかりにくいものもあります。例えば側頭葉という部位で発作が起こる側頭葉てんかんの方の場合、爆発性(怒りっぽく、瞬間湯沸かし器のようになる)迂遠性(まわりくどい、融通がきかない)などの性格特徴をあわせもったり、幻覚、妄想などの精神病症状を呈する方もあります。こうした微細な症状への対応、QOLを考えた治療は精神科でないと難しいと思っているわけです。

どんどん話がそれておりますが(^_^; つーか、タイトルの抗てんかん薬の話まだ何もしてないやん(^_^; 次回に続きます!!

コメント

  1. 匿名 より:

    脳内神経回路の異常放電ですが、側頭葉の異常について、それは右脳と左脳で同時におこるものですか?それともその時々で片方ずつの脳内でおこるものですか?
    よく「右利きの人は左脳が、左利きの人は右脳がよく働く」と聞きますが、利き手なども関係をするものでしょうか?

  2. mos-mos より:

    柏先生!
    NHK「病の起源」うつ病~防衛本能がもたらす宿命~
    来週10月20日21:00~放送ですね!!!
    先生のブログをみてから、「これは絶対観ないと!」と思いつつ、
    なにせ、ずいぶん時間が経っていたので記憶が…( ̄▽ ̄;)
    たまたまNHKで告知CMをやっていたので良かったです…
    みなさん!今すぐ録画予約しましょう!(笑)

  3. 横浜院長 より:

    Anonymousさん
    ご投稿ありがとうございます。側頭葉てんかんは基本的には部分てんかんなので、どちらか片方が焦点になります。利き手ですが、私の知る限りでは発作側と利き手とに関係があるということはないと思います。
    mo-mosさん
    お久しぶりです。貴重な情報ありがとうございます。日曜朝以外あまりテレビを見ないので、あやうく見逃すところでした。テレビを見ないとかいいつつ、半沢直樹にははまっておりましたが。我ながら俗物。

  4. まねきねこ より:

    村上弘明さんはスカイライダーでしたか。あの役のために大学を中退してしまったとか。宮内さんがV3だったんですね。宮内さんは刑事役の方で印象が強かったです。
     てんかんといえば、クレーン車の事故が記憶にあります。薬を飲んでいなかったと責められていましたが、てんかんの薬は副作用に眠気やだるさ、判断力が低下する場合があるため「車などの運転は避けてください」と注意書きがあるので、仕事ができなくなります。では、クレーン車操作じゃない仕事、となると、この就職難、そうそう仕事は見つからないわけです。てんかん患者がいろいろ言われた時期、とても疑問がわきました。それより、てんかん患者の社会的支援の方が大切なはず。将来、ヘアバンドみたいなものから、脳にてんかんのモトを抑える周波みたいなものが出る治療器具ができたらいいのですけど。
     いよいよ、NHKでうつ病の特集ですね。先生のパクリを~。

  5. 隊長 より:

    ときどき、右腕や全身が5秒くらい震えるのも何かのサインでしょうか?
    寝ていて、全身がビクッと震えて起きてしまうのもそうでしょうか?
    副作用ではないと思いますが。

  6. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    運転のことはとても難しい問題です。法律も変わりつつあるところですが、この問題もいずれブログで取り上げましょう。
    隊長さん
    ミオクローヌスの可能性も否定できませんが、まずは主治医によくご相談下さい。