横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.125 うつ病と3大欲求

横浜院長の柏です。以前もお話ししましたが私の愛車は16年ものと年季が入ったものですが、正月休みに入ったところで異常をきたし、車屋さんもその日が最終日とかで修理は年明けとなってしまいました。年末年始は車を使わず、健康的な生活を送るチャンスだ、と前向きに考えております(認知行動療法の成果(^_^)v)。


愛車は世界初のハイブリッドカーの最初期モデルでして(当時のキャッチコピーは手塚治虫のCMで「21世紀に間に合いました」)、異常とはこれまでも何度かおこっているハイブリッドバッテリーの異常(不均等充電)です。このタイミングで起こるか〜という感じなのですが、この車に関してはトヨタも社運をかけて売り出したことがあり、ハイブリッドバッテリーは永久保証という話になっています。これまでも2回無料で交換してもらっており、今回もタダのはずなのです。いまだにこの車に乗ってる人も少ないでしょうから、トヨタからすると迷惑な客かも知れませんね。
さて、うつ病シリーズは今日から診断の話に入ります。
いつもお話ししています通り、現代精神科医療では、診断基準としてアメリカ精神医学会によるDSM診断を基本とします。昨年DSM-IVからDSM-5への大改訂があり、双極性障害や発達障害については大幅な変更がありましたが、うつ病に関しては、死別反応についての判断の変更など最小限の変更に留まりました。診断の基本となるA項目は、DSM-IVの診断基準と変更ありません。
簡単にまとめると、このようになります。

A項目

1. 抑うつ気分

2. 興味・喜びの減退

3. 食欲低下、体重減少(食欲増進、体重増加)

4. 不眠(睡眠過多)

5. 精神運動焦燥、制止

6. 易疲労性、気力減退

7. 無価値感、罪責感

8. 思考力・集中力減退、決断困難

9. 希死念慮、自殺企図

この9つのうち、少なくとも5つが同一の2週間に存在することが必要条件です。9番以外には「ほとんど毎日」という条件がつき、1番と2番に関しては「ほとんど一日中、ほとんど毎日」とさらに厳しい条件がつきます。この1番、2番はうつ病の基本症状で、このどちらかが「少なくとも5つ」の中に含まれていないといけません。DSMの診断基準というのは診断的に大切なものから順に並んでいます(あくまで「診断的に」であり、臨床対応的には9番が一番大切であることは言うまでもありません)。ゆううつ、落ちこみ、何を考えても悪い方へ考えてしまう、といった1番・抑うつ気分。本来であれば楽しめることも楽しめない、興味を持てない、生きがいを持てない、といった2番・興味・喜びの減退。どちらもとてもつらい症状ですよね。この2つが、うつ病の基本症状です。どちらもない場合は、うつ病の診断はつけられません。
そして、この2つに続いている3番、4番に注目しましょう。ここでは、食欲低下、不眠といった項目が続きます。皆さんも人間の3大欲求というのはご存じだと思います。睡眠欲、食欲、性欲ですね。これらは、人間が生きていく、そして種として存続していくためにとても大切なものです。とりあえず、(飢えと暑さ寒さをしのげるという条件下であれば)寝ること、食べることさえできれば人間は生きていけます。それに性欲があれば、人間という種をつないでいくことができます。診断基準にはありませんが、うつ病でも性欲はしばしば障害されます。うつ病とは、この人間の3大欲求を冒すという意味で怖ろしい病気といえます。
今年最後の今日の一曲コーナー。年末といえば日本では第9ですが、私的には第9といえばベートーヴェンよりもブルックナーです。この曲は、私の中ではすべての音楽の中で最高峰に位置する曲です。クナッパーツブッシュ、シューリヒトなど名盤も多いですが、やはり一番はオイゲン・ヨッフムです。長い曲ですが、残っていたのが奇跡と思われる映像とともにぜひお聴き下さい。


今年一年、ご愛読ありがとうございました。皆様よいお年をお迎え下さい。

コメント

  1. パパゲーナ より:

    年も押し詰まり、女性のうつ病罹患者泣かせの気忙しい時期を迎えましたね(;^_^A
    急性期のワタクシは、A項目のうち、9項目以外の全ての項目を満たしていたことを確認し、これまたうつ病で亡くなられた、牧伸二氏の“ア〜アーァ やんなっちゃった♪ ア〜ンアッアおどろいた♪”と洒落に逃げざるを得ない、気持ちになりました(笑)勿論本心は別のところに有りまして、“あ〜あ。。自分、洒落にならないなぁ”といった思いです。(苦笑)
    寛解の定義はワタクシの知るところではないのですが、発病から数年経過し会社勤めに復帰した今でも、A項目の幾つかが当てはまっていて、うつ病の手強さをまざまざと教えられます。
    長いこと不自由な生活を経験しましたので、今現在、日々何とかやっていけるまでに回復することができて、感謝感謝なのですが。
    クリニックに通院する皆さま、クリニックのスタッフの皆さまに、平穏で穏やかな新年がやってきますように。
    アンドレ•セゴビア“聖母の御子”
    http://youtu.be/ZHwL6wzMskA
    画質は悪いですが巨匠の弾く名曲です

  2. 隊長 より:

    新年おめでとうございます。
    今年もお世話になります。
    19年前の11月、9つすべてに当てはまり、自宅療養をしていたものの、せっかちだけは治らず、3か月で復職し、結果、いままで。 です。
    年末もいいですが、新年最初の楽しみは「ウィーンフィル・ニューイヤー・コンサート」。
    今年は1曲以外すべてシュトラウス家。 3男のもあり、楽しめました。
    TVだけの特典であるバレエの映像もあって、2時間半、短かったです。
    先生はいかがな新年をお迎えですか?
    次の診察の機会に伺えればと思います。

  3. 横浜院長 より:

    皆様あけましておめでとうございます。
    パパゲーナさん
    A項目ですが、ほとんど毎日、二週間以上、となるとかなり限られてきませんか。
    より短期間であれば、とくに6や8あたりはよくあることですよね。私もよくあります。
    セゴビア、さすがに名演ですね。ありがとうございます。
    隊長さん
    新年は次のブログにも書きましたが、まったり過ごさせていただきました。
    明日からまた、しっかり診察にあたって参ります。

  4. いちご大福 より:

    年またぎの遡り、失礼します。f^_^;
    さかのぼって私が最も悪かった時を思い出すと、7と9は強烈に強かったのは覚えてますが…
    あとは…
    思考が後ろ向きはよくあることだし、あー…でも確かに二時間くらいおきにおきてたかな…食べもしなかったかな…暗かったかな…とぽつぽつ思い出します。
    先生からみたらたぶん結構当てはまってたのかもしれません…
    なにせ、診断出したのが柏先生でしたから…
    当時の自分が先生にどう見えたのか少し気になりました。(;´Д`A