横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.157 ゆっくりと。

横浜院長の柏です。うつの回復期にオススメのingress(No.138参照)ですが、私は先日だいぶ頑張ったもんで、一瞬ですがリージョン(首都圏)エージェント50位以内にランクインしてしまいました。ちょとはまりすぎ(^^;;
さて、うつ病の治療の目指すところについて書いてきました。これから具体的な治療論に入って行きますが、その前に今日は治療の「時間」についてお話ししましょう。
以前No.145にも書きましたが、精神疾患=脳の病気が治るためにはどうしても時間が必要です。うつ病の場合、反応(治療効果が現れ始める)のに1ヶ月、寛解(無理ない生活なら症状が出ない)まで3ヶ月、回復(もとの生活レベルでも症状が出ない)まで1年、というのがおおまかな必要期間ということになります(人によって異なります)。これはおそらく脳の特性で、仕方のないことだと思われます。統合失調症、パニック障害、摂食障害など他の病気であってもこれは同じで、急性症状が落ち着くのに数ヶ月、しっかりとした回復までは年単位で見ていく必要があります。息の長い治療となりますので、腰を据えて治療にあたっていただくこととなります。
うつ病治療の経験則として、「ゆっくり治るほどあとの治りがよい」ということがあります。ときどき、治療早期にさっとよくなってしまう方があります。適応障害水準の方で、環境変化やストレス源がなくなったという状況であればまあ理解できることもあるのですが、うつ病水準の方でこういうことがおこると、私は「よかったね」という顔をしておりますが、実は内心ちょっと不安を感じています。動きの早い(軽い)方ほど用心しなくてはなりません。「早く治る方は早く悪くなることもある」=「ゆれやすい人である可能性」に注意が必要なのです。その意味で、なかなかよくならないという方、悲観することはありません。じっくり時間をかけて、その分しっかりとよくしようではありませんか。
われわれ医師は、進む道としていろいろな科があるわけですが、精神科医となる医師には長い視野に立ってじっくりとものごとに取り組む姿勢が必要とされます。たとえ人生という海が荒れる時があっても、嵐の中の灯台のように、常にひとつのところから光を照らしていなくてはなりません。その場の瞬時の判断が命に関わる救急医。手術に大きなウェイトのかかる外科医。もちろん精神科だって緊急に判断を要する場合もあるわけですが、私にはこのように長くおつきあいしていく方が性に合っているように感じております。
さて、以前No.139でお話ししました通り、寛解導入のあとは再発予防という大切な治療プロセスがあります。これをいつまで続けるかは人により、また病気の種類により、一年であったり数年であったり、あるいは十年以上であったりするわけです。生活習慣病と同じ、というのはこのことでもあります。私の外来でも、大学病院時代から診察にあたらせていただいている方は長い人だと15年になろうかと思います。こうなるとお互い年を取りましたね、となるわけでして・・・。
ずいぶん秋らしくなってきました。秋といえばやはりブラームス。今日の一曲はクラリネット五重奏曲です。ではまた。

コメント

  1. パパゲーナ より:

    柏先生、ご無沙汰しております(。-_-。)ウツというのは、まことに気の長い病でございますね。先生が仰るとおり、ワタクシも比較的急変し易い質ですので、毎日体調管理最優先、薄氷の上を歩くような生活を続けて早、7年経過いたしました、タハハ。。。
    この間、長年築いてきた人間関係、家族、お金、健康な身体と胆力、仕事などなど多くのものを失いましたが、二年ほど前、再就職することができました。苦労した分、健康な方々より深い人生を生きていることが、少しばかり誇らしいですが(^◇^;)
    ブラームスといえば、シューマンの妻、クララに寄せる秘めた愛情、サガンの小説《ブラームスはお好き?》などがポカンと頭に浮かびます。もう一つ私の頭に強く焼き付いているのが、ブラームスの墓石に刻まれた、苦悩するような表情の、大変渋くてかっこいい彼の彫刻。ウィーンの中央墓地に居並ぶどんな音楽家の墓石よりも強く印象に残りましたねぇ(°_°)
    ウツになる10年以上前から、自分の葬送の曲はコレに!!と決めているものがあります。
    モーツァルト クラリネット協奏曲 第二楽章
    http://youtu.be/R2TFVbPyGIw
    ワタクシもクラリネットの音色は大好き。柏先生がアップして下さった、ブラームスの楽曲を聴いた後、久々に聴きましたら長閑さと美しいメロディーで猛烈に眠くなりました。。。