横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.145 急性疾患と慢性疾患

横浜院長の柏です。届きそうで届かないゴリラキッチン・・・エージェントの皆様、今日も一日緑化活動お疲れさまです(^_^)。さて、なぜくすりをのまなくてはならないのか?という話を続けましょう。そもそも、病気は大きく分けると急性疾患と慢性疾患に分かれます。急性疾患とは、例えば呼吸器疾患でいうなら風邪や急性肺炎など、比較的短期間の治療で治癒が期待できるものです。慢性疾患は喘息や間質性肺炎のように、ある程度長期的に治療の継続が必要となるものです。では、精神科・心療内科の病気はどうでしょうか。急性ストレス障害という病気があります。突然、強烈なストレスにさらされることによって発症する病気ですが、ストレスがなくなり条件が揃えば、早期に完全回復される場合もあります。このような場合は急性疾患と呼んでよいでしょう。しかし、多くの場合はそうではありません。精神疾患の多くは慢性疾患といえます。これは、「治る」ということを考える上でとても大切なこととなります。慢性疾患の場合、病気として表に出てくるまでに実際には相当時間がかかっていることが多いのです。喘息はもともとの体質にストレスが重なって起こることが多く(なので心療内科領域でもあります)、高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、体質とあわせてそれまでの長年の食生活、生活習慣が原因となります。短くても数ヶ月、長ければ10年以上かかって起こってくるのです。このように時間がかかって起こってきたものは、解決するまでにもある程度は時間が必要です。ストレスを減らし、生活習慣を整える。それを継続していくことが病気を治すことであり、それはまたよりよい、より質の高い人生を生きることでもあるのです。
喘息では発作が続いている間、高血圧や糖尿病では食事や運動のみでコントロールが難しい場合、くすりを使うことになります。うつ病の場合、ストレスの原因となっているのが仕事、学校、家庭など簡単に切り離せないものであることが多く、ストレスをなくすというよりは上手につきあっていくスタンスを求められる場合が多くあります。本来、ストレスを減らし生活習慣を整える必要があるものが、ストレス自体を減らすこと、生活習慣を変えること自体が難しい。ここに、現代のうつ病治療の難しいところがあります。そうした状況で必要となるのがおくすりです。くすりは、ストレス耐性を高める(打たれ強くする)と同時にうつ病の症状自体を軽くしてくれます。くすりを使うことで、本来なら耐えられないようなストレスが続く状況の中でも、それを乗り越えて普段の生活を送ることが可能となります。足腰が弱った人が杖を使うのと同じようなものとお考えいただければと思います。
少し違う観点から説明を加えましょう。No.073でお話ししたように、うつ病になる・・・うつ病の診断基準を満たす状態になるということは、人生でうつ病というバンカーに落ちてしまった状態です。うつ病の治療の第一段階は寛解にもっていく(バンカーから出す)ことであり、そのために一番確率の高い方法がサンドウェッジ=くすりを使うことなのです。バンカーでドライバーを振り回しても球を出すことができないのと同じで、間違った方法ではかえってこじらせることにもなりかねません。うつ病は大変な病気であり、こじらせると人生の貴重な時間の喪失につながります。ぜひ、一番確率の高い方法で脱出をはかっていただきたいものです。
うつ病治療の第二段階は再発予防です。これも、慢性疾患ならではの慎重な対応が必要です。くすりをいつまで続けるかについては、その人の元来の脆弱性(脳の特性)、性格傾向、その時おかれている環境および今後の予想、そしてこれまでの病歴を総合的に判断し、ご本人と相談して決めることとなります。この点についてはまた項を改めてお話ししましょう。
ちょっとくどい説明になってしまいましたね(汗)。ちょっとまとめましょう。
うつ病は慢性疾患であり、病気特有の「弱さ」といかにつきあっていくか、が療養のポイントとなります。くすりをのむことによって、症状を抑えて生活への支障を最小限にできるし、再発や合併症を防ぐこともできるのです。みなさんそれぞれのくすりとの上手なつきあい方・・・主治医と一緒に考えて行って下さいね。
では今日の一曲です。難曲であるショパンの練習曲(エチュード)をご紹介した流れで、さらに難曲、リストのエチュードにしましょう。超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」です。ボリス・ベレゾフスキーのライブ演奏でどうぞ。

コメント

  1. まねきねこ より:

    ストレスに弱いというと、あまりいい感じはなく、むしろ自分がぜい弱でダメ人間だから病気になってしまったと精神疾患の患者さんは感じやすく、精神疾患の本でさえ、そういう表現がみられるとこがありますが、私の主治医の先生は、ストレスに弱いという言い方は適切ではなく、ストレスに敏感であると考えているそうです。ストレスに敏感であるということは生存能力が高いそうです。ストレスに敏感であることは必要な能力であるにもかかわらず、文明の発達などで余分なものになってしまい、環境と能力の間にトラブルが起きるそうです。私はこの話を聞いたときは大感動しました。何か「降臨」したみたいな(笑)、私にとっては革命的な考えでした。

  2. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    ストレスに敏感=生存能力が高い・・・とても大切な観点ですね。もうちょっと先にこのことは書こうと思っていたところでした。楽しみにお待ち下さいね。