横浜院長の柏です。いろいろと仕事が重なり更新が遅れております。すみません。50歳から毎年一つは専門外の資格を、と2年は続きましたが今年は早速ピンチです。狙っているものはあるんですが、勉強する時間が(>_<) さて、精神科医をやっていると、いろいろなリクエストにあうことがあります。 「すぐに元気の出るくすり下さい」 「それは覚せい剤ですねぇ。それはちょっと難しいですねぇ。」 元気が出るくすりといえば抗うつ薬ですが、何度もお話ししている通り、効いてくるのは数週間かかりますし、それは必要な時間なんですね。 そして一番多いリクエストはこれです。 「やせるくすり下さい」 私の答えはこうですね。 「うーん、やせるくすりというのは毒しかないですねぇ。毒のめば簡単にやせられますけど、医者が毒を出すわけにはいかないですねぇ。」 ところが、どうも世の中には「やせぐすり」をどんどん処方、というか横流しする医者がいるらしく、ニュースになってましたね。これはマジンドール(商品名サノレックス)というくすりですが、薬理学特性が理解できていたらとてもそんなことはできないはずなのです。こんな報道があると、またまたサノレックス下さい、という方があるといけませんので、私の普段のやりとりをご紹介しておきますね。
「サノレックスってやせるくすりがあるって聞きました。私にも出して下さい!」
「(うわーきたよ)サノレックスはね、覚せい剤と似た働きで食欲を抑えるくすりなのね。戦争の時、大日本帝国はヒロポン(覚せい剤)使って食わず寝ずで戦ったんだけど、それと同じ事をやろうってこと。覚せい剤と同じで依存の危険も高いし、幻覚とか興奮とか起こすこともあるくすりだから、これはやめておこうよ。そもそも、このくすりは高度肥満で命の危険があるような人向けなので、あなたの身長(150cm)なら80kgないと出せないし、あったとしても私は出しませんよ。医者になってから、一度も処方したことないから。」
まあこんな感じでして、はったりでも何でもなく私は一度も処方箋にサノレックスと書いたことはありません。マジンドール(サノレックス)は中枢刺激薬に分類される薬物で、メタンフェタミン(アンフェタミン類)やコカインなどに近いものです。ヒロポン=メタンフェタミンはNo.104, No.106でお話しした通りの危険な薬物です。BMI(body mass index: 肥満度の指数)35以上という高度肥満の方で、3ヶ月以内という限定条件つきで認可されています。しかし、報道にあったように保険外で美容目的で普通に使われているというのは、私としては信じがたい状況であります。私はこの薬は廃止にするか、どうしても高度肥満治療に必要であるならリタリンやコンサータ同様に登録医制として、高度肥満以外には絶対に出せない仕組みを作るべきだと考えます。
サノレックスの添付文書には、
「不安・抑うつ・異常興奮状態の患者及び統合失調症等の精神障害のある患者[症状が悪化するおそれがある。]」
とあります。そもそもメンタルの悩みで通院されている方の場合は、とくに注意が必要だということです。よろしいですね?
秋日和、ブラームスを続けましょう。ピアノ三重奏曲(トリオ)第1番ロ長調をどうぞ。スーク、シュタルケル、カッチェンによる歴史的名演です。
コメント
痩せる薬
酵素がいいやら何やら情報があるけど
こうやってお医者様が書いてくれると
安心ですありがとうございます❤️
一番知りたかった情報をありがとうございます(T^T)
高度肥満(BMI38.8)なのですが、どうにかこうにか薬に頼ることなくやせないと、と思っていたところです。・゜・(つД`)・゜・
長年のイライラすると食べ物に走る癖が抜けず、この間退院したばかりなのに、1週間も経たないうちに体重が元通りに(´・ω・`)
癖がむしろ悪化してしまいました(;A´▽`A
生きてきた分だけ摂食障害的な面に、しっかり向き合わなければならないのかもしれないです(´・ω・`)
先生こんにちわ
昨日はありがとうございました。
即行上司に連絡して話をつけることが出来ました。
自分がどうしたいのか?どういう線引きが妥当なのか?がわかるってとっても大切なんですね。おかげさまで昨日は久しぶりにとてもよく眠れました。
やせる薬ですか・・BMIぎりぎり・・(汗)改めてしょぼーんかつまたダイエットしなきゃと思いながら・・そういった薬にはお世話になりたくないですね・・元気になる薬も痩せる薬も欲しいけど世の中そんな上手くいかないですね・・代償が大きすぎます。やっぱインアウトバランスと習慣ですか・・
最近の一番の薬は先生とのお話です。
先生とお話しすると悩みのどこに自分が苦しんでるのか、どういった対策があるのか、何が問題なのか、が見えてくることがとても多いです。いつもありがとうございます。(´▽`)
話戻りますが・・罪悪感が強いとほんと食べれなくなるのに不安が強いと食べすぎるというタイプの自分としても体重の悩みはあります。食と心の関係も深いんですね。
なかなか予約が取り難いほど激務なのに、趣味もやりつつ、新しい資格を探して勉強する…すごいです。
通勤中の電車の中とか「スキマ時間」で勉強する人も多いと聞きます。
先生は、どこにスキマ時間を見つけているのでしょうか
やはり皆さん関心の高いところですね(汗)。
伊藤さん
こちらこそ感想ありがとうございます。
ダイエット系はみな、いい商売してますよね。
(もちろん皮肉の意味の「いい」です)
しろたんさん
過食は非定型うつの主要症状です。
うつをきちんとコントロールできれば止まるはずです。
食事や睡眠に振り回されずにいきましょう。
いちご大福さん
上司と話せてよかったですね。
「罪悪感が強いと食べられなくなるが、不安が強いと食べすぎる」
見事な考察です。とても大事な点をついていると思います。
mos-mosさん
なんだかんだいって週休3日ですので(^^;
しかし、また一つ仕事しょいこんで今月は結構パニックです。
更新遅れたらゴメンナサイm(__)m
この度、サーバー移転が行われた影響で、この記事のコメントの再入力を行いました。
そのため、投稿日が変わってしましましたことをご了承ください。