横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.205 マスクの下に

横浜院長の柏です。インフルエンザは警報が続いておりまして、患者さんでもご家族が代わりに来院されるケースがちらほら見えます。皆様お気をつけ下さいね。感染予防にはマスクが重要ですが、今日はそのマスクの話です。マスクと言っても今日は仮面ライダーやサンダーマスクではなく(^_^;、普通の「白い」マスクのお話をします。
自分の顔が気に入らない、顔がコンプレックスだ…若い頃なら、多くの方がそう感じる時期がありますよね。普通はそのうちに、まあこんなものかと妥協したり、磨いた内面がにじみ出ていい感じになってくるものです。顔の印象というのは造作だけではなく、表情や所作にも大きく依っており、内面も大きく反映されます。見かけが気になる人は、まず内面を磨くことを考えましょう。
自分の顔が、容姿が、特定の箇所が、醜いに違いないと信じ込み、社会生活に障害が生じる病気を身体醜形(しゅうけい)障害、あるいは醜形恐怖と呼びます。私の外来にもそこそこの人数いらっしゃいますが、私から見てご本人たちが言われるようなことがそのまま感じられたことは一度もありません。
この顔コンプレックスが強くなると、人前に出ることが怖い、と社会恐怖症状につながり、引きこもりに陥る人が出てきます。ただ怖い、であれば不安症状ですが、さらに皆が自分を醜いと思っている、笑っている、あるいは自分が皆に迷惑をかけている・・・となってくると妄想にかなり近くなってきます。自分が醜い、というのが確信となり訂正不能となると、妄想性障害、あるいは統合失調症の可能性を考える必要が出てきます。
摂食障害の方では、どんなにやせていても鏡に映る自分の姿を太っていると捉えてしまうことがあります。これはNo.094でもお話した通り「歪んだ鏡」になぞらえられますが、身体醜形障害でも同じことが言えます。彼ら、彼女たちが見ている鏡は歪み、正しい自己像を捉えることができなくなっているのです。これはもしかすると、あらゆる精神障害の縮図なのかも知れません。うつ病でも、統合失調症でも、今の自分がどういう状態なのか、座標軸のどこにいるのか、客観的な視点を持てることは回復のための大切な一歩なのです。
2月1日の朝、出勤前にNHKの「おはよう日本」を見ていたら、ちょうどマスク依存がテーマになっておりました。内容はこちらで確認できます。中学時代、周囲の視線を避けようとしたところから、マスクを手放せなくなっていた女性のお話です。ストーリー部分だけならこちらで視聴できます。全編はNHKオンデマンドからどうぞ。
私の外来にも、マスクを手放せない方がいらしてます。一度、はずしていらしたことがありましたが、とてもチャーミングな方です。病気とは、つくづく不思議なものだと感じされられます。今、彼女にとってマスクは社会と関わるために必要な松葉杖なのでしょう。いずれ松葉杖を手放し、笑顔で周囲と関われる力が出てくるその日を目指し、治療の関わりは続きます。
今日の一曲。前回ショパンの幻想曲をご紹介しましたので、今日はシューマンの幻想曲ハ長調作品17を、ここではおなじみのキーシンのライブでどうぞ。


思えば、ショパン以外にも幻想曲と呼ばれる曲をすでに4回ご紹介していました。さすらい人幻想曲(シューベルト)東洋風幻想曲イスラメイ(バラキレフ)ハンガリー田園幻想曲(ドップラー)ダンテを読んで〜ソナタ風幻想曲(リスト)です。これらは、このページの右上の検索バーに「幻想曲」と入れると簡単に検索できます。曲や作曲者ごとのリストも作れますし、バックナンバー検索としてもNo.001と入れれば第1回が読めますし、No.xxxと入れれば第xxx回を読むことができます。意外と便利なんですよ。豆知識でした。ではまた。

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