横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.247 連合弛緩

キュウレンジャーロス状態の横浜院長の柏です。いろいろ追われておりまして、ちょっとブログをサボリ気味ですみませんですm(_ _)m。次は快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー…うーんパトレンジャーは銭形扱いでしょうか(^_^;。しかし題名長いな。宇宙猿人ゴリ対スペクトルマンより長いぞ。
さて、アルツハイマー病早期診断の革命的な新技術が発表されましたね。従来の抗体を用いた検出に質量分析を組み合わせるというブリリアントな発想。可能にしたのは、質量分析でノーベル化学賞を取った田中耕一先生です。アルツハイマー病は、まだ根本的な治療法があるわけではありませんが、少なくとも進行を遅くする方法はあります。発症のはるか前から治療を行うことで発症を予防することもできる可能性がありますし、また新たな治療法の開発の礎ともなりうる素晴らしい研究成果です。今後の展開次第とはいえ、田中先生、2度めのノーベル賞に十分相当する成果ではないでしょうか。
しばらくご無沙汰となってしまいましたが、統合失調症のお話に戻りましょう。No.242で、統合失調症の中核症状としてブロイラーの4つのAなるものをご紹介しました。今日はこの四銃士の一番、連合弛緩Assoziationslockerungについてお話しましょう。連合が弛緩する=考えが緩くなりまとまらなくなること、ですね。統合失調症とは以前お話した通り、「自我」すなわち…今ここにいる自分がまわりの人やものとは異なる唯一のものであること、自分とまわりとの間にきちんと境界を引けること…ここが怪しくなる病気です。「我思う故に我あり」と言うように、自分が存在することと、考える自分がいることは表裏一体です。自我が怪しくなるということは、考える力が弱くなるということ、でもあるわけです。統合失調症が進んでくると、論理的な構成力に歪みが生じてきます。これは、幻覚や妄想などの影響もあるわけですが、それだけではなく、自我が弱ってくることから本質的に起こってくることでもあるです。なんとなく話が噛み合わない、話がそれる、焦点をきちんと結ばない…統合失調症の方との会話でこちらが感じるところです。
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数学の好きな貴方向けには、接線的tangentalという表現がある、というとわかりやすいかな?接線は、思考の流れ(もとの曲線)と出発点は同じですが、そこからそれていってしまうんですよね。
連合弛緩、思考障害についてはなかなかご本人は気づきにくく、むしろ日頃接している家族など、周囲が先に気づくことが多いようです。思春期から20歳代の方で、どうも最近、これまでと違って話のまとまりが悪くなっている、何を言いたいのかわかりにくい…こうした時には、この病気の始まりの可能性を考えておく必要があります(もちろん、うつ病など他の病気の可能性もあります)。
統合失調症の根っこは自我のゆらぎであり、荒海で遭難しかけている状態です。周囲の方々はそうした本人の変化に動揺することなく、常に同じ姿勢で、暖かく接することが大切です。周囲も揺れてしまうと、本人の揺らぎはさらに大きくなってしまいますから。
hitorigoto-247b.jpg今日の一曲はグリーグ作曲、ペール・ギュント第1組曲から「朝」です。ネヴィル・マリナー指揮アカデミー室内管弦楽団の演奏でどうぞ。なぜこの曲かって?そりゃポプテピ…むにゃむにゃ。ではまた。

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