横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.074 佐喜眞美術館

横浜院長の柏です。先週後半は、精神障害者リハビリテーション学会第21回沖縄大会出席のため、またまた大好きな沖縄へ飛んでおりました。今回は、我々のサタクラの活動について、当院ソーシャルワーカーがポスター発表を行いました。
学会では、特別講演の蟻塚亮二先生のお話が秀逸でした。太平洋戦争での沖縄戦。沖縄は唯一地上戦を体験し、島民の4人に1人が亡くなる(本土では亡くなったのは1%未満)という悲惨な経験をしました。地上戦を生き延びた者には、本土の空襲を生き延びた者が体験した状況をはるかに越えた、悲惨な戦争の記憶が残りました。蟻塚先生は、これまでの精神医学の常識を越えた事実に気づかれます。一つは晩発性(超・遅発性)PTSD。戦後60年を経て、戦後働き続け晩年に至った世代に突如現れるPTSD関連症状です。教科書的には、PTSDは外傷体験ののちせいぜい数ヶ月以内に症状が現れるのが通常で、半年を超えるものを遅発性として区別しますが、数十年後に現れるということは全く想定外です。仕事を終えた生活の変化や加齢に伴う脳機能の低下などが関連しているのでしょう。脳機能が低下し、しかししっかりと残っている外傷記憶を支えきれなくなった時、晩発性PTSDが発症するということのようです。脳の奥深さを再認識させられます。
もう一つは統合失調症です。戦後、精神疾患の有病率は沖縄で本土の倍以上となっていた時期があったようです。沖縄戦を子どもの時に経験した世代が、戦後統合失調症を発症する割合が高かったのです。統合失調症の発症率が早生まれで優位に高いことは以前より知られていますが(かくいう私も早生まれですが)、この沖縄の結果は胎児期、小児期の強烈なストレスが統合失調症の発症率と相関する、という貴重な知見といえます。奇しくも、今日の朝日新聞には恐怖記憶が精子を介して子孫に伝えられるというNature Neuroscience記事が載りました。時代を超え、世代を超えたトラウマ記憶について、われわれはもっと注意を払うべきなのでしょう。
hitori74-a.jpg蟻塚先生のご講演に先立ち、佐喜眞美術館学芸員の上間かな恵氏により丸木位里・丸木俊の「沖縄戦の図」についての解説がありました。夏休みの沖縄旅行でひめゆりの塔で学徒隊生き残りの方の講話をお聞きし、いろいろ考えされられた私としては、これは実物を見ないわけにはいきません。日曜日は一日フリーにしておりましたので、ワーカー3名を引き連れ、朝一で会場と同じ宜野湾市内にある、かの普天間基地に隣接した佐喜眞美術館を訪れました。hitori74-b.jpg
壁一面に描かれた沖縄戦の図。瞳を持たない多くの人々の顔、姿。佐喜眞館長のお話とともに、深く心に刻まれたひとときとなりました。やや不便な場所ですが、沖縄へお越しの際はぜひ立ち寄られることをお勧めいたします。

hitori74-c.jpgその後は沖縄本島南部を回りました。写真はO先生おすすめのカフェくるくまからの絶景です。。
お土産はいつものマブヤーちんすこう。毎回カードがふえていくぞ。今回はついにお目当てのマングーチュもゲットだぜ。よい子のみんなも、沖縄みやげはマブヤーちんすこうだ。おっと、空港には売ってないから、町で探そうな

コメント

  1. まねきねこ より:

    私も、日本の戦争体験者のPTSDについて、もっと取り上げられるべきではないかと考えていました。アメリカではベトナム戦争後、帰還兵の精神的な打撃に取り組むことが精神医療の進歩につながったと聞きますが、日本は、兵士を含む非戦闘員である国民が多く悲惨な体験をしたわけですから。母は今でも、米軍機の騒音を聞くたびに戦争中を思い出すと言います。
     マブヤーちんすこう?あるんですね。先生、カードまで集めてらっしゃるんですか?マブヤーシリーズは他にありませんか?例えば、マブヤーサータアンダギーとか、マブヤー紅いもタルトとか。

  2. 隊長 より:

    遅発性のPTSDは知りませんでした。
    忘れようにも忘れられない体験、辛いですね。

  3. 横浜院長 より:

    PTSD、次のブログにも書いてしまいました。
    マブヤーものは沖縄ではいろいろ売っているのですが、お菓子はちんすこうだけが生き残っているんじゃないでしょうかね。自動販売機でもマブヤージュース(シークワサー)売ってたし、ウチナーではほんとポピュラーです。