横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.099 アリとキリギリス

横浜院長の柏です。オーバーロード、overloadだと思っていたらover lordでしたね。英語は難しいです。ユグドラシル、ヘルヘイムと北欧神話を受けた鎧武の展開、さてどうなりますか。
iPhoneマニアの私ですが、スキマ時間に時々見るのが東洋経済のサイトです。ホームボタンに登録済みです。経済に限らず興味をそそられる話題がたくさんありますが、最近面白いと思ったのがこれです。
hitori99-a.png アリの思考vsキリギリスの思考 細谷功
テーマは、ビジネスにおいてストックからフローの思考へ、閉じた系から開いた系へ、固定次元から可変次元へといった発想の転換を促すものですが、精神科医としても興味をそそられるものでした。
中でも、『アリの「閉じた系」からキリギリスの「開いた系」へ』の回が注目です。巣を作り「閉じた系」を作るアリは、その思考において線を引き、その内と外を区別します。このやり方は、先日お話しした「拒食の成分」でもあり、また認知行動療法でいう白黒思考(all or nothing)でもあり、うつ病、不安障害をはじめ様々な病気でよく見られ、自らをしんどくする要素となっているものです。
アリの思考では、線の外側にあるものに対しては不安や怒りを覚えます。「常識」の観点から線を引くと、その外側にあるものは「非常識」となります。電車で、会社で、マナーや態度がなっていない人に怒りを抑えられない(キリギリスは、そういう人もいる、と連続的にとらえる)。「体重」で線を引くと、その線より上になると強い不安を感じてしまう(キリギリスは、もっと定性的に増えた、減ったとは見るがそれ以上にはこだわらない)。
この時アリは言ってみれば地面に置かれた輪ゴムの中にいて、外が見えない状態です。キリギリスのように飛べれば、上からこれを見て輪ゴムの外の世界に気づけるし、外に安全に降りることもできる。二次元から三次元へ、視点を変えること。これが治療のプロセスなのです。線に体当たりして穴を開けるのではなく、上にのぼることで線の向こう側に目を向け、そちら側に降り立つこと。そこまで行けば、うつも摂食障害も卒業なのです。
いざ良くなると、なぜこれまで線の向こう側が見えなかったのか不思議に思うことも多いようです。でも、見えない時には見えないんですよね。より高い次元から物事を俯瞰する力。治療とは、それをよりスムーズに手に入れる手続きなのでしょう。アリからキリギリスへ。昔話ではキリギリス的な生き方はよろしくないという教えでしたが、時代は変わっているのかも知れませんね。
さて、音楽コーナーです。今日は趣向を変えて、Appleで見つけたこんなページはいかがでしょうか。
名指揮者、エサ・ペッカ・サロネン。彼がmacオタク、もといギークだとは知りませんでしたが、新世代の音楽家の一つの方向性を指し示しているような、そんなページです。英語しかないのですが、興味ある方はご覧下さい。
ではまた。次回はなんと100回目となりますね。

コメント

  1. 匿名 より:

    先生がおっしゃっている内容と全く違うのですが、星新一さんの小説に「アリとキリギリス」というのがあって、随分前に(たしかバブル期より前に)読んだのですが、日本人の考え方の変化、世代間での違いを表す面白い作品だなぁと楽しんで読んだことを思い出しました。
    この作品は本当に人間臭い感じがして好きです。
    他に「穴」という作品も強く印象に残っています。

  2. 匿名 より:

    「穴」ではなくて「おーい、でてこい」だったかな?間違ってたらすみません。(^_^)

  3. 横浜院長 より:

    匿名さん
    情報ありがとうございます。ニコ動で見つけましたよ。
    http://www.nicovideo.jp/watch/nm3943374
    たしかに何ともいい味出してますね。
    「おーいでてこーい」も発見
    http://www.geocities.jp/akaikeito2/oidetekoi.htm
    長男は読んだことあるそうです。

  4. まねきねこ より:

    柏先生も、お菓子をドカ食いしてしまうことがあるなんて、親近感を感じます。アリとキリギリス、私はキリギリスです。若いころは、アリであらねばと心がけていましたが。
     Anonymousuさん、私は患者の立場から言わせていただければ、家族となんとなく一緒にいるというのが、心地よかったです。リビングの片隅にごろっとしている状態で、家族も、それぞれ好きなようにしていました。イライラで家族にあたってしまう場合は、本人が一番後悔しているので、何もなかったようにふるまってもらえると救われます。本人、ごめんなさいと言えないもので、そこで他罰的だとか、攻撃的だと思われてしまうと悲しいです。そういう行動に出てしまった自分がとても嫌だとも思っているので。ただ、ニュース番組はちょっと注意していただきたいかもしれません。今は、小さな子供さんが悲惨な犯罪の犠牲になる事件が大きく取り上げられていて、そういうのは、かなりこたえます。私は状態が悪かったころ、鳥インフルエンザのために経営者が自殺したニュースで涙が止まらなくなったことがあります。テレビ番組は、まったり系がよかったです。なぜか「冬ソナ」観ると気持ちが楽になりました。ヨン様に癒されました(^^)。音楽は、モーツアルトを流していました。モーツアルトの曲は,よく計算されているとその時感じたのですが、あの心地よいマンネリ感がアルファ波を出してくれるような気分になります。
     しゃしゃり出てしまって恐縮ですが、何か参考になることがありましたら、私の苦しかった経験も幸いです。

  5. anonymous より:

    まねきねこさん、どうもありがとう。
    今はお礼を言うのがやっとです。
    先生、モーツァルトお願いします。