横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.144 くすりをのむわけは

横浜院長の柏です。「治る」という、ある意味究極のテーマを扱っていますが、じっくり進めていきますので、結論(私なりの)に到達するまでまだ大分かかるかと思います。気長にお読み下さいね。
この内容はいつも当院リワークプログラムの心理教育でお話ししているものと同じですが、元はと言いますと、私が当院に移るにあたり前職の東京医科歯科大学を退職する際に、いろいろ関わっていた同院の精神科デイケアでの卒業発表としてデイケアメンバー・スタッフの前でお話しした内容が元になっています。もう6年前ですが、これをお読みの方の中にも、当時私の話を聞かれた方もいらっしゃる・・・はずですね。
さて、話を進めましょう。くすりをのみたくない理由、その第一は
「くすりをのむ度に、病気のことを思い出してつらい」
「普通の人はのまずにやっているんだから」
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そもそも、なぜくすりが必要なのでしょうか。以前にもお話ししましたが(ずいぶん前ですが、No.011参照) 、精神科・心療内科の病気の多くは、脳内の神経伝達物質がうまく働かないことから起こることまではある程度わかっています。うつ病の場合、神経伝達物質(とくにセロトニン、ノルアドレナリン)の機能低下がおこっていることが知られています。しかしなぜそうなるかについては、まだよくわかっていません。今のところ考えられているのは、①内因(生まれついた脳の弱さ、脆弱性)、②外因(現在あるいは直近におかれている環境から受けるストレス)、③性格因(生まれ育った環境に培われたもの)のいずれかに(多くは複合的です)原因があるということです。治療の面から考えると、図のように①には薬物療法、②には環境調整、③には認知行動療法などの心理療法がそれぞれ有効と考えられます。当院では、医師は全体を管理しつつ①を主に行い、②はソーシャルワーカー、③は臨床心理士がそれぞれ中心となり援助を行う体勢をとっています。とくにうつ病と診断される水準にある場合、脳の機能低下は自力で回復するのが難しい状態にあり、薬物療法は治療の基本となります。
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次回、再発防止を見据えた薬物療法の大切さについて、追ってお話しすることとします。
では今日の一曲。ショパンを続けましょう。キーシンの演奏で、エチュード(練習曲)作品10から第1番、第2番、第3番「別れの曲」、第4番、第12番「革命」です。題名のついている2曲が有名ですが、ここでの私のお気に入りは第1番と第4番(7分30秒から)です。これだけのスピード、勢いで正確に弾き切る才気たるや凄まじいものを感じます。ではまた。

コメント

  1. まねきねこ より:

    おひさしぶりです。私の友人にゴッドマーズの熱烈なファンがいたことを懐かしく思い出しています。倫太郎先生は見ていません。どうせ自分の主治医の方が優れているのがわかっているので。なんかひどいことを言っていますよね~。どうせだったらJ隊の医官の精神科医だったらちょっと見ても良かったかもしれません。徹底的にリアルから離れ、病院の地下にはアメリカと共同開発された原潜が隠されているという設定で、精神科医のそばに北〇鮮の工作員が潜入して腹の探り合いバトルを繰り広げ、医官vs工作員のワイヤーアクションと銃撃戦でラストを飾る、みたいな(爆笑)。私の主治医は韓国ドラマ「奇皇后」のタルタル将軍に似ているのですが、観ていない人は全然わからないと思いますが見ている人がこの中にいらしたら、「ああ~あの先生だ!」とばれてしまいます。

  2. いちご大福 より:

    先生こんばんわ。前回は長文にお付き合いいただきありがとうございます
    なんか確かにどこかで見たことあるような図ですね
    思えば薬は勿論のこと環境調整も性格へのアドバイスも三点セットで柏先生にお世話になってるような・・汗
    もう大分良いからほかに頼る必要もないといったところでしょうか・・?ハテナ?
    でもお話できても臨床心理さんとだと保険も手帳も効かなくて高くなりそうですね苦笑
    ということなので今後ともよろしくお願いします。
    ショパン続きですね。
    別れの曲の頭部分は聴いたことありましたがあとはさっぱりです
    でも凄いスピードで弾いていてびっくりしました。

  3. mos_mos より:

    いつも思うのですが、この領域での治療では、カウンセリングは不可欠(状態によっても違うと思いますが)だと思うのですが、保険適用にはならないのか疑問で仕方ないです。
    カウンセリングが新しい治療?(なのかは知りませんが)だからでしょうか?
    自立支援の対象になればいいなぁーと思います。
    この病を患うことで収入減↓の人が多いのがこの病気なので、なるべくカウンセリングを受けられる機会、環境整備することで「治る」にも一助となるんじゃないのかな、と思うんですけどね。
    今回のテーマからは若干脱線しましたが、いちご大福さんのを読んでいて、ふと思いました

  4. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    倫太郎は、まあいいたいことはわかるのですが、あまりに現実離れした展開にあんぐり・・・でした。はい。
    タルタル将軍?存じ上げません・・・コ・ウチュン将軍ならかみさんがファンでしたが。
    いちご大福さん、mos_mosさん
    説明不十分でしたが、クリニックでは基本は医師が全面的サポートをします。
    しかし、さらに社会資源とつなぐサポートが必要な方には精神保健福祉士を、
    より本格的な心理療法が必要な方には臨床心理士をご紹介しています。
    しかし、ご指摘の通り臨床心理士の行うカウンセリングは、現在保険診療ではありません。
    実費が発生しますので、どなたでもお気軽に、というわけには参りません。
    その場合は、医師が限られた時間の中で工夫を行っています。
    なお、上述のように精神保健福祉士(ワーカー)はあくまで社会資源と橋渡しをする仕事であって、カウンセラーではありません。どうか誤解のないようお願いいたしますね。