横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.258 弱点

横浜院長の柏です。統合失調症編、生活臨床の話を続けましょう。
まず、そもそも生活臨床とは何ぞや?ということですが、これは統合失調症の治療を考える上での一つの「技法」です。その核心はもちろん「治療」なのですが、実は診断といいますか患者さんの「診立て」の部分から、生活臨床は既存の精神医学とは異なる見方をします。DSMやICDなどの西洋式診断学が、症状、臨床徴候から診断を組み立てていくのに対して、生活臨床では統合失調症患者さんの生活・行動を観察し、それらの特徴を整理し、その生活・行動の特徴に基づいた働きかけ(治療)を考え出そうとします。生活臨床は、地域で患者さんを支える保健師(当時は「保健婦さん」)たちが、自分の足で地域を回り、いろいろな患者さんの生活の様子を直に見て回る中から編み出した「臨床知」なのです。
No.156ですでにお話しましたが、生活臨床における治療目標は以下のとおりです。

1) 入院より、家庭にいる方がよい。
2) 家庭より、社会に出て活動している方がよい。
3) 社会人として自立した上、自分の家庭を築いた方がよい。

かつてNo.142あたりでも、治るとはどういうことか、を考えたことがありましたね。元に戻ること、くすりをのまなくなること…いろいろな答えがある中、生活臨床は当たり前だけど、だけど本当に大切なことを教えてくれます。治療の方向が見えづらくなった時には、ここに戻ってくることをまず考えます。
次いで、統合失調症の方に共通する弱点

1) おとしめられること
2) 迷わされること(迷うこと)
3) 待たされること

もちろん誰であってもあまり好ましくない状況なわけですが、統合失調症の方はとくにこうした状況に弱い…症状が増悪したり、再燃したりしやすくなる…それが生活臨床の知恵なのです。統合失調症の方の認知特徴ともいえるかと思われます。こういう状況になったら要注意、ということですね。
おとしめられる(貶められる):何らかの形で、プライド・面子を傷つけられる状況になると具合が悪くなります。
迷わされる:人生は選択の連続なわけですが、そうした局面で混乱し具合が悪くなります。No.251でお話したアンビバレンツとも関係しますね。アンビバレンツとは、同じ対象に好きと嫌いという矛盾する感情を抱くこと。そうなると、二者択一の場面でも価値判断ができず、決められず混乱してしまうのです。
待たされる:結論を先延ばしされることに耐えられない状態です。ただ、これは発達障害の方でもよく見られる症状でもあります(上の2つもそうでもありますが)。ASDの方では予定調和に達しないために、ADHDの方では衝動性に基づく「待てなさ」のために、いずれも待たされるのは大の苦手なのです。
次回以降、さらに生活臨床の教えを続けましょう。
では今日の一曲。特撮は悪役命のワタクシ。ビルドのエボルトもいい味出してますが、今日は史上最高のヒール、ハカイダーの歌です。ではまた。

コメント

  1. ultima より:

    柏先生お疲れさまです。初めてハカイダーの歌を知りましたが、私の脳内ではキャシャーンのブライキングボスが再生されてしまいました。キャシャーンで驚いたのは 悪役にも悪役なりの正義や精神があり、それに従って行動を起こしていたことです。映画Terminatorにもそんなシーンありましたよね。私も主人公よりもサブキャラとかに感情移入する場合があるので特に悪役にスポット当てていただけて嬉しいです。先生が教えてくださった目標と弱点を胸に 今後の生活に活かしつつ、周りの人の いろんな気持ちに気付けるようになりたいな、と思いました。相変わらずのドジで鈍感な私ですが 今後ともよろしくお願いいたします。

  2. 横浜院長 より:

    ultimaさん
    コメントありがとうございます。私の究極の目標は世界征服ですんで(まだ諦めてないw)、悪役の研究は欠かせないのです。
    キャシャーンといえば先日まで、どこの局かな?子供がインフィニティ・フォース(InfiniT Force)なる番組を見ておりまして。これがなんとガッチャマン、キャシャーン、ポリマー、テッカマンとタツノコキャラが揃うアベンジャーズ的な番組でして、一緒にハマっておりました。