横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.043 落ち込みの長さ

横浜院長の柏です。気分障害についてのお話を続けていきましょう。
誰でもいやなことがあれば落ち込み、イライラし、腹が立つことがあれば怒り、良いことがあれば喜び、楽しい感情を抱くのは自然の営みです。しかし、これが自分でコントロールできなくなると、そこに気分障害の存在を疑うこととなります。この「コントロールできない」ということをどう定義するのかが、病気とそうでないものを分ける重要な点となります。
アメリカ精神医学会による診断基準、DSM-IV-TRでは、それを内容(重症度)と持続期間をもって定義しています。うつ病エピソード、躁病エピソードなどそれぞれの定義がありますが、これらの内容(重症度)については追って順に見ていくことにいたします。今回は持続期間について考えてみましょう。
持続時間について、DSM-IV-TRではうつ病エピソードは2週間、躁病エピソード・混合性エピソードは1週間、軽躁病エピソードは4日がそれぞれ必要、となっています。誰でも、いやなことがあれば数日程度は落ち込むことはあるけれど、2週間も続くことは普通はない、というのはまあ常識的にもわかるところではないでしょうか。半月以上も気分が沈む、物事が楽しめない、といった時には病気の可能性を疑う必要があります。ただ、当然ながらこれはその前に起きた出来事の性質にも左右されます。とくに、大切な人を亡くしたような場合は、より長く悲しみが続くことはごく普通のことです。このような場合は、「死別反応」と呼んで通常とは区別し、2ヶ月以内であればうつ病エピソードを満たしていてもそう診断しない、ということになっています。死別反応は大切なテーマですので、回を分けてお話ししたいと思います。
躁病、軽躁病の持続期間については難しいところがあり、間もなくリリースされる次期診断基準のDSM-5(今回からローマ数字でなくなるようです)では4日という定義が見直されるという話もあるようです。
次回は気分変化のいろいろなパターンについて見ていきます。

コメント

  1. 隊長 より:

    落ち込むときは相当落ち込みます。 人間関係だと。
    2週間という期間を知り、「ああ、正常範囲だ。」と理解しました。
    落ち込んだらふさぎ込むのではなく、誰かとコミュニケーションが手っ取り早い手段でしょうかね?
    SNSで励まされたりして解消できてたりしますから、面と向かってでなくても、最近のネット社会も貢献していると思います。
    今後も楽しみです。

  2. 横浜院長 より:

    隊長さん
    落ち込んでも自力で回復できれば大丈夫ですよ(^_^)v
    おっしゃる通り、コミュニケーションは本当に大切です。外来でお話ししていると、ネットに助けられている人も多いですね。でも逆にネットで傷つく人も多く、なかなか難しいところもあるようです。

  3. まねきねこ より:

    お久しぶりです、まねきねこです。いつのまにか、柏先生らしいユーモアが・・・。
    落ち込んでいるとき、柏先生のユーモアに救われることもたびたびありますので、
    また、ちょこっとユーモアのスパイスをお願いします。
    私の場合、かなり落ち込んでもオタ話で回復できます。自分の知らない世界、ディープな話を聞くのは百薬の長です。世の中は面白いもので、先日は寄生虫オタクの
    話を聞いて盛り上がりました。
    イナズマスブンと記憶していましたが、イナズマンのほうが正解だと思います。
    マツコが紹介するまで、私も全然知りませんでした。

  4. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    (^_^;;;
    まあ、本来まじめ人間ですので、まじめな病気談義もさせて下さいね。
    寄生虫といえば目黒寄生虫館ですね。ブログに書こうかと思ってスルーしてしまいましたが、先日息子2人と3人で行ってきました(行きたくない家族約1名)。オススメですよ。車で行くと第三京浜→目黒通りで意外と近いです。