横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.103 精神神経学会

横浜院長の柏です。今週は日本精神神経学会という精神科では親分格の学会の学術集会が地元横浜(パシフィコ)でありまして、地元ということもあって欲張って土日の指導医研修会、生涯教育研修会にも参加、合間に成人発達障害研究会の会合もあったりで、すっかり「おなかいっぱい」状態です。ふう。休診に伴いご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
今年の学会は、発達障害関係の演題をはしごしてみました。ちょうどDSM-5の日本語訳も発売されまして、この領域は大きな変化が見られただけに皆の関心の高さも伺われ、シンポジウムもいくつもあって一日中発達障害で過ごせてしまう状態でした。時代は変わりましたね。
精神科というのは、医療の中でも時代とともに注目される病気の変遷が大きい領域でしょう。私が医師になってからも、統合失調症の時代、境界性パーソナリティ障害(ボーダーライン)の時代、双極性障害の時代などを経て今は成人発達障害が注目を集めているようです。
これには、時代背景の問題〜産業構造の問題、世代の空気感、ネットの普及など〜が大きいのでしょうが、あえて「はやり病(やまい)」と表現された演者もあり、考えさせられる一幕でした。
そのうち、今日はボーダーライン論について書いてみましょう。
ボーダーライン・・・不安定な対人関係様式や自己像を示す病気で、救急受診なども多いことから、かつて私が勤めたどの病院でも数名は、医師の間で有名な方がいたものでした。当直などでよくお会いするものですからね。
かつてborderline personality disorder; BPD(境界性パーソナリティ障害)と呼ばれたこの病気も、最近ではborderline personality organization; BPO(境界性パーソナリティ構造)と呼ばれ、そういったパーソナリティ構造を持ち、そのために不適応を繰り返している人たち、といった見方・・・ある意味、パーソナリティ障害の軽症化・・・がよくなされます。厳正なるBPDではなく、うつ病や摂食障害などの経過中に、その人の本来持っているBPO構造が見えてくる、といったことです。
しかし今学会ではさらにつっこんで、「ボーダーラインは状態像である」という議論が主流のようにすら見えました。対人関係や職場の状況が厳しくなった、などの時に現れる一種の防衛反応ということでしょうか。当院に赴任してから、クリニックという設定もあるのでしょうが、以前のようなパワフルなボーダーラインの方にお会いすることもなくなり、この論にもなるほどと思ってしまう反面、かつて出会った彼女たちが今頃どうしているのか・・・状況が変わり、今では平和な日々を送ってらっしゃることを願いつつ・・・いろいろ考えてしまいました。
発達障害にしても、同じように状態像として捉えることの重要性が議論されていました。本質的な3つ組みの障害によるよりも、発達障害の方特有の「ストレスへの反応の仕方」が社会生活において種々の支障を引き起こしているのであり、これはその人固有の問題と言うより反応(状態)の問題である、という捉え方です。
ある症状、病気があった時に、それはstate(状態)なのか、trait(特性)なのか(そもそもこの二分法自体に無理があるとの議論もありますが)。生物学的精神医学はともするとtrait重視で走ってきたわけですが、目の前の患者さんをありのままに(Let it go!!)、そのstateをとらえて治療をしていくこと。それが実は一番本質的である・・・そんなことを考えさせられたここ数日でした。
さて今日の一曲。趣向を変えて、バリー・マニロウはいかが。若い皆さんはご存じないですかね。映画”Foul Play”のオープニング、美しい北カリフォルニアの海岸線をバックに、”Ready to take a chance again”をどうぞ。名曲です。

コメント

  1. パバゲーナ より:

    院長先生、こんにちは(^▽^)
    柏先生のブログでバリー・マニロウの名前が出てきて少しビックリしているパバゲーナでございます(笑)。今回ご紹介、バリーの美声とメロデッシュな曲がとても素敵です(^^)
    学生の頃でしたでしょうか、バリーの“コパカバーナ”が世界的に大ヒットして彼を知り、軽妙で楽しさルンルンのメロディーと、日本に来日したとき見た、彼の遊び人風キャラクターのWパンチで“なんてチャラチャラした歌手なんだろう”(まるでアメリカのロッド・スチュワートか?)と、冷ややかな目で見ておりましたが、これがまた、違かったのですよネ。
    私がバリーを見る目が変わったのは、バリーのジャズアルバムでした。それを聞いて“なんだバリー!、あなたホントは凄いんじゃないの~(^◇^)♪”と、マルチミュージシャンであることを初めて知りました。
    でも、彼自身の出演するプロモーションフィルムは、未だにちょっと馴染めません。烈しいカメラ目線と満面の笑顔で射抜かれそうです(^^;)
    パラダイス・カフェ
    http://www.kasiabc.com/kasi/3528/71094/?tubeid2=youtube

  2. 横浜院長 より:

    パパゲーナさん
    なんとマニロウにもお詳しいですね。さすが同世代ですね(汗)。
    パラダイスカフェの動画、ありがとうございました。
    ジャズアルバムも聴いてみたいですねぇ。