横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.131 うつ病の症状論(その2)

さて、前置きが長くなりましたが、症状論つづきです。DSM-5の3番と4番、アムロ、行きまーす・・・ってちょっと古いですね。一瞬「安室奈美恵と間違えられるかな」と思ったけど、それすら古いことに気づいて哀愁の柏です(^_^;。
さて、この二つ、食欲と睡眠はすでにNo.125でご紹介したとおり、人間にとってとても大切な本能に関わる部分です。典型的なうつ病では・・・No.129でご紹介したメランコリアが最たるものですが・・・食欲は落ち、眠れなくなります。ダイエットをしてもいないのに短期間で急激に体重が減った場合、医師としてまず考えるのは、重大な内科疾患か、うつ病です。心療内科・精神科は、身体に異常が認められない場合にはじめて診断をつけますので、まずは体に重大なことが起こっていないか、きちんと調べる必要があります。うつ病の場合、食欲が激減して、例えば1ヶ月で10kg近く体重が落ちることさえあります。それだけエネルギーが奪われますので、これは大変なことといえます。
一方で、No.130でご紹介した非定型うつ病などの場合、逆に食欲は増し、寝てばかりいるようになります。いわゆる過食過眠、ですね。体重は増え、寝ている時間の方が起きている時間より長かったりします。ただ、不食不眠と比べるとこちらはいろいろな要素が入り込む余地があり、診断には注意が必要です。
No.098でご紹介した、摂食障害で見られる過食の成分。拒食の反動としての過食と、もやもやした気持ちを晴らすための過食。これらは非定型うつ病でみられる純粋な食欲増加とはやや意味が異なると思われます。しかし一方で非定型うつ病〜双極性障害〜境界性パーソナリティ構造〜神経性過食症、といった連続性も臨床現場では認められており、分ける意味はあまりないのかも知れません。このあたりは、症候学の研究がさらに進められなくてはなりません。
過眠に関しても、どうやっても起きていらない、という方と、起きていてもすることがなく、つらいだけなので寝てしまう、という方があるわけです。このように、過食過眠については、生物学的症状なのか神経症的症状なのか迷うことも多く、多くの場合両者が混ざっているというのが臨床的実感です。
さて、これまでにうつ病が慢性的危機に対する生体の自己防衛メカニズムである、という自説をお話ししました。こう考えた時、同じうつ病でもこのように不食不眠に過食過眠と真逆の症状が現れることはどう考えたらいいのでしょうか。これは難しい問題で、私自身まだよくわからないところでありますが、考えられるところを書いてみることにしましょう。
不食不眠ということは、これはエネルギーの消耗ですよね。慢性危機へのメカニズム(エネルギーは節約するべき)としてはあまりよろしくない。この場合、まだ「不安」でみられた交感神経優位の状態が続いていることになります。まだ敵が近くにいることがわかっているので、いつでも逃げ出せるように寝ないでおき、のんびり食べているようなこともないわけです。交感神経優位では胃腸の働きは下がり、心肺や筋肉によりエネルギーが振り分けられます。
一方、過食過眠ということは、敵からは安全な場所にいるのでしょうか、よく寝てよく食べる、すなわちエネルギーを蓄える方向ですから、慢性危機への対応としては適切といえます。冬眠する動物と同じ方向性ですよね。しかし、もしも途中で敵がやってくると食べられてしまう、そんな危険とも隣り合わせです。
まとめると、危機に瀕するとまずは不安のメカニズムが動きます。そして危機が長期化するとうつのメカニズムが動き出しますが、まだ危機が近くにある場合は不食不眠(メランコリア)が、危機がある程度遠ざかり、しかしさらに長期化が予想される場合に過食過眠(非定型うつ)が動き出すということでしょうか?しかし実際は、メランコリアの方がそのあと非定型に移行する、ということはあまりありません。むしろ、その方が危機をどう捉えているのか、その認知のパターンによってうつ病のサブタイプは決まってくるようです。
メランコリア親和型性格というのは、まじめで几帳面、責任感が強い性格ですから、危機に瀕してもそこから逃げず、最後まで何とかしようとするわけです。その結果、不眠不食で頑張ってしまう。かたや非定型の方にしばしば見られる回避性パーソナリティでは、危機に瀕したらそれを回避することをまず考える。よって、その間にエネルギーを貯められるだけ貯めようと。過食過眠になる。
このあたりが現時点での私の仮説ですが、No.123まででご紹介した、うつの起こりまでと比べるとまだまだ未完成です。皆さんのご意見も聞かせていただけると幸いです。
ところで、ブログを書きながらふと思ったのですが、最近ちょっと難しすぎますかね?私の執筆方針として、正攻法で現時点での正しい知識をお届けすることを考えているのですが、ちょっと専門性に偏りすぎかなという気がしてきたわけです。どうでしょうかね?
今日の一曲は、本ブログ執筆中にBGMでかけていた交響組曲「宇宙戦艦ヤマト」です。中学生の頃だったか、友達がLP持ってて、カセットテープに録音させてもらったものを繰り返し繰り返し聴いてましたね。なつかしいです。


コメント

  1. 患者007 より:

    柏先生に診て頂いている患者007です。
    今度の診察の時、覚えてたら「コメントしました!」って言いますね。
    初めてブログを拝見し、色々な面から精神医学を考えてらっしゃっていて、読んで面白かったです。
    私もクラシックが大好きなので、所々貼ってらっしゃるYouTubeも拝見したいのですが、ネット環境に恵まれず…残念。
    カッチーニのアヴェマリアは何とか聴けました。
    昔から大好きな曲です。
    ああいうドラマチックな歌い方も素敵ですが、やはりアヴェマリアなのでもっと祈るような心洗われる歌い方がもっと好きです。
    なんだか生の歌が聞きたくなってきました。

  2. バパゲーナ より:

    こんにちは、柏先生(^^)
    最近、先生か発信しているブログについての、ワタクシ達への問いかけですが、特別難しいとはおもいませんが。ただし、2〜3回読み込んで自分のものになっていく感じです(^◇^)
    普段見慣れない単語を見るのを、目が逆らいがちになるのは至極当然ですが、そういう言葉を使わないで、病気の情報やメカニズムを説明することは、できませんでしょうし(ू•‧̫•ू⑅)

  3. 隊長 より:

    僕も2.3回読み込んで理解、ですね。
    普段の読書もそうですので特に抵抗と言うか難しさは感じないです。
    今回ので現状での発症までの因果関係が理解できました。
    「そうだったよな~」と思いだしました。
    ではここからは?
    なんですよね、きっと。
    今日は逗子でマンドリンの演奏会があるはずだったのですが、会場のHPにも記載がなく行けず。
    昨日、地元のライブハウスで4組聴いてきたのでヨシとしますか。
    3組目のイケメン君が
    『正直者がバカを見る時代は終わった』
    という曲を歌っていて共感!

  4. パパゲーナ より:

    マンドリンも素敵ですね。マンドリン、リュート、その他古楽器ワタクシも大変好きです。

  5. 横浜院長 より:

    患者007さん
    ようこそ。診察の際にぜひ教えて下さいね。
    ネット環境恵まれませんか・・・残念。
    でも、その方が健康的かも知れない、と最近つくづく思ったりします。
    パパゲーナさん、隊長さん
    とりあえずなんとかご理解いただいているようで安心しました。
    なるべくわかりやすく、といって妥協せず、なんとかやってみます。