横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.048 病の起源

hitori48-a.jpg横浜院長の柏です。今日は昔語りをします。ちょっと専門的なお話になりますがご容赦下さい。NHKスペシャルで、「病の起源」なる番組が始まりましたね。
皆さんご覧になりましたか?様々な病気を、人類の進化に伴う必然、宿命としてとらえるchallengingな番組です。私はこうした進化論的な考え方は大好きで、ワクワクして番組を見ておりました。
ここまでがん、脳卒中が扱われ、なぜか後半は10月に飛んで、心臓病で3大成人病を制覇したのち、第4集で「うつ病」が予定されています。脳卒中の回では、人類の大脳の急激な進化に血管がついて来られなかったことが示されました。思い返すと、私が受けた四半世紀前の医学部の講義というのは、知識の詰め込みが多くあまり面白いものではなかったのですが(失礼)、印象に残っている講義はこうした進化論的なものが多かったように思います。耳鼻科の講義で、大脳がさらに発達すると「大大脳」になるはずなのだが、ウィリス動脈輪などの血管走行から考えてそれは不可能である、といったものがありました。またこれはたしか基礎医学の講義で、人類は直立歩行になり頚椎の上に頭が来たことで脳を発展させることができたが、一方で直立したことで骨盤が小さくなり、出産時に骨盤を新生児の頭が通り抜けるのが難しくなってきたこと、これ以上脳が進化すると帝王切開以外で出産不可能になるだろう、といったものもあり、脳の進化一つをとってもいろいろ考えさせられました。
系統発生学の講義も印象的でした。「個体発生は系統発生を繰り返す」三木茂夫先生の講義はピカイチでした。これは、受精卵から出産まで、人間のかたちができあがるまでの間、胎児の形はどんどん変化していくが、その様子は、まるで魚類から両生類、哺乳類へといった人類の進化の縮図をなしている、といったものです。「胎児の世界」は名著です。ぜひご一読下さい。こうした考え方を「反復説」と呼びますが、この心理面への外挿がフロイトの精神分析理論とも言え、精神医学の見地からも大変興味深い視点です。
三木先生と双璧で私が大好きだったのが養老孟司先生です。当時第二解剖学教室の教授でいらしたのですが、その後ベストセラー作家、テレビにも出られたりしてのご活躍は皆さんご存じの通りです。が・・・当時はと言うと講義は難解でしゃべりは下手だし、はっきり言って学生には人気なかったなぁ・・・。テレビで拝見すると、いつの間にこんなに話が上手になったんだ??というのが一番の印象です。特訓でも受けるんですかねー。養老先生と言えば、当時本郷三丁目の駅から大学まで、ずっと本を読みながら歩いておられる姿を何度か見かけました。いろいろな意味ですごい先生でした。その後解剖学教室は、廣川教授をheadに分子生物学の手法を駆使し、素晴らしい研究成果を上げ続けています。しかし、養老先生や三木先生のように独自の道を行き、学生に強いインパクトを残せる先生が今大学にどれくらいいるのか、ちょっと気がかりです。
さてさて、「病の起源」第4集の「うつ病」ではどんな仮説が飛び出すのでしょうか。プロローグでの紹介では、我々の祖先が魚類だった時代、弱肉強食の世界で獲得した防衛本能の暴走がうつ病につながっている、とのことでしたが・・・。私なりのうつ病の成因に関する作業仮説については、ブログNo.010ですでに書かせていただきました。NHKがどう出るか、10月が楽しみであります。パクるなよ、NHK(笑)。

コメント

  1. 隊長 より:

    興味深い番組ですね。
    10月ですか。
    覚えておきます。

  2. まねきねこ より:

    解剖学の話で、いつか聞いてみたいと思っていたのですが、先生は初めての解剖の時はどうだったのでしょうか?私は「白い巨塔」(70年版)の手術シーンがどうにも苦手で、今回は逃げ出すまいと毎回頑張っても、結局逃げ出しました。作り物だとわかっているにもかかわらず。医学部に進学するような優秀な人は、多少苦手でも克服できるのだと思っています。しかし最近、芸大の「師匠」の告白で、師匠は学生の頃、解剖学も選択し、筋骨の観察をしに東大の医学部に見学に行くことになったのですが、当日、敵前逃亡したと言うことでした。芸大と言えば60倍とも70倍ともいわれる異常な競争率。それでも「ならぬものはならぬ」というわけなら、個人の性格なのでしょうかね。
     それにしても、レッサーパンダの風太や猫カフェの猫がうつ病になったりして、人間以外の動物も、うつ病になるご時世ですなあ。

  3. 横浜院長 より:

    こんにちは。解剖ですか?私も入学前はドキドキでしたが、フタをあけてみるとみんな医学生。女子も含め、誰も苦手を表に出してはいなかったと思います。私も大丈夫でしたよ。
    芸大ですか。三木先生も当時芸大からいらしてました。まだ若くして鬼籍に入られてしまったのが残念でなりません。
    動物も精神障害ありますよ。友達が東大で動物の精神科医をやっています。いずれそのことも書きましょうかね。

  4. パパゲーナ より:

    初めてコメントさせていただきます。
      10月のNHK特集“病の起源”、ワタクシも楽しみにしております。
    幾つかの病を得てから、書店等に行っても身体や病気の書籍の背表紙にばかり目が行ってしまうクセがつきました(笑)。星の数ほど沢山の病気がある中、ヒトが毎日、健やかに過ごせること自体が、“奇跡のような偶然。。。”と思えてなりません。
      友人が美大の助手を勤めていた時のことですが、“学生達に衣服の下、人体のフォルムの下にある、構造にまで思いを馳せてデッサンをして欲しい!!”という講師の熱い思いの元、某医大解剖学教室へ学生を伴ってデッサン・見学会に同行したことがありました。助手である友人も学生達も、大変に興味深く、目を開かされた有意義な時間になったそうです。
      友人は「歴代の教授方のご遺体の標本が、恭しく立ち並んでいた様子が一番印象に残ったわ。。。」と言っていました。
      私のような一般人には、絶対に分かるはずもないアカデミックな世界の事ではありますが、なかなかに強烈な話でした。医大とは不思議な場所のように思えます(笑)

  5. 横浜院長 より:

    パパゲーナさま
    ようこそ。モーツァルトファンでしょうか?
    わが母校にも「踏朱会」という医学部内の美術サークルがあり、裸の男女のデッサンなどやっていましたね。人体についてよりよく見て知るためのことだったのでしょう。当時、学生には裸の女性を描いていることのインパクトはありましたね。私は絵心ないので入りませんでしたが。今もあるのかな、踏朱会。

  6. パバゲーナ より:

    レスポンスありがとうございます。
      ご明察です(^^)モーツァルトファンです♪
      “裸婦画を描くことは花を描くことと同じなの。至上の美を描くことなのヨ♥”と友人の美大助手は語っておりました。。。ロマンですネ~、何となく分かるような気がします。
      ワタクシは以前、web上のインタビューで、柏先生が、“音大に行きたいとも考えていました”と答えていらした記事を拝見し、“カッコ良すぎます、柏センセイ。。。f(^^;)”と舌を巻いた患者の一人です。ワタクシは演奏はからきしですが、リスナーとしては、オーストリア音楽の旅に飛び出すくらいの鼻息のアラさがありました(笑 発病前ですが)
    3.11以来の省エネ対策で、クリニックの待合室の液晶大画面から、美しい風景と、クラシックの音楽が消えて久しいですが、またいつか拝見できる日が来ると素敵だな~と考えております。

  7. 横浜院長 より:

    パパゲーナさま
    きゃ〜(>_<)こっぱずかしいものをほじくり返さないで下さぁい。。
    待合の液晶画面の件、ご意見ありがとうございます。省エネ圧力はあるのですが、スタッフで検討してみますね。

  8. パパゲーナ より:

    ありがとうございます。
    液晶大モニターの際稼働される日を楽しみにしております!
    。。。。院長先生、すみません 。
    先生のWeb上でのカッチョイイお話し、すでに、あらん限りの方々に語ってしまいまたァ。
    ∵⃝♡⍢⃝ ⍤⃝ ⍨⃝ ∵⃝♡⍢⃝ ⍤⃝ ⍨⃝ ∵⃝♡⍢⃝ ⍤⃝
    (女の口と壊れたチャックは閉められない。。お恥ずかしい。)
    院長先生を知るみなさんは驚きながらもなぜか、
    “柏センセイなら、さもありなん。。”という風情でニンヤリ(^^)
    実に感慨深気な反応でした〜。