横浜院長のひとりごと

横浜院長のひとりごと No.097 摂食障害3 拒食の成分

hitori97-a.png富岡製糸場が世界遺産認定、いまや全国注目のぐんま出身、横浜院長の柏です。「に:日本で最初の富岡製糸」群馬県民ならみな覚えてる上毛カルタにもありますね。家族で上毛カルタ全部言えるの私だけですが、えばってもハァ?というリアクション・・・逆に横浜市歌を歌えないのが私だけ(かみさんは横浜出身)で、バカにされる始末・・・くそ、覚えたるわい。


さて、摂食障害の話に戻りましょう。No.094, No.095でお話しした通り、摂食障害には拒食症と過食症がありますが、その両者は連続的です。病気の本質・治療を考えるためには、拒食症と過食症ではなく、「拒食の成分」と「過食の成分」を考えることが大切です。前者のみ、後者のみという方もいらっしゃいますが、多くは両方をあわせ持っています。今回は、「拒食の成分」について考えてみましょう。
拒食。やせるため、体重を落とすために食べることをやめる、制限することです。いわゆるダイエットではありますが、拒食の場合はその程度とともに質が違います。とにかくやせることを絶対視、体重が100gでも増えると不安でたまらなくなります。高所恐怖症の人に、ビルの屋上のはしごをさらに一段上ってごらんというようなもの、といえばここをご覧のご家族にもそのこわさが伝わるでしょうか。こうした恐怖・不安の裏側にあるのが強迫性です。「拒食の成分」の強い方は基本的にまじめです。何事もきちんとしているよい子であった場合が多い。まじめでしっかり者ですが、裏を返すと頑固で融通がきかない。これが体重、体型の方向を向くと、やせないと気がすまない、さらには体重というわかりやすい数値にこだわり、減らさないと気がすまない、そんな状態になります。
強迫性を一番体現しているのはブログNo.023, No.024でご紹介した強迫性障害という病気ですが、拒食症はそれこそ「現代の強迫性障害」と呼んでもよい病気だと考えます。治療は、身体的に危機的な状態であればまず身体管理を行います。30kgを切るような極度のるいそうや、心臓などの臓器に負担が見られる場合はまず入院です。私も以前病棟医であった時は、体重の増加に伴って活動範囲を広げていく「行動制限療法」という、一種の行動療法に取り組んでおりました。体重が増えるほど認知の歪みは改善されるため理にかなった方法ではありますが、実際に行っていくのはなかなか大変です。外来でも、あまりに体重が低いうちは心理療法を行うのは困難が大きく、ある程度体重が戻ってから対人関係療法などのアプローチを行います。薬物療法は、強迫性障害に準じて行います。私は薬物療法を併用する際は、ほとんどの場合に抗うつ薬(SSRI)であるフルボキサミン(商品名ルボックス、デプロメール)を使います。うまく作用すると、食事や体重に対するこだわりがやや和らぎ(こわさが弱くなり)、回復がスムーズになることが期待できます。
まとめると、「拒食の成分」=強迫性、こだわり、固着性といえます。
そこまでこだわらなくても、Let it Go〜ありのままで・・・いられるようになりたいですよね。

コメント

  1. 摂食障害の娘を持つ母 より:

    それぞれに 成分というものがあるんですね。
    過食嘔吐 というのは拒食の成分ととらえるのでしょうか?
    娘の頑固さは 先生の折り紙つき?(笑) ですよね。
    痩せる にしても やるときはやっちゃいますからねー!
    色々な枠がはずされて回復してきた今 人として柔らかくなったように思います。(^-^)
    知り合いのお嬢さんで 拒食から過食へ移行。長いこと過食のみということで 体型を気にして外に出られない。という方がおられますが 過食の成分 もあるのですか?
    続きは また次?
    というか それより「我が家のボカロ」の方が気になり 検索してしまいました!
    先生!!
    か、かなりマニアックなんですね。(>_<)
    お子さんにとっても 楽しいお父さんでしょうね。(^-^)

  2. mos-mos より:

    横浜市歌!懐かしい!!!
    小学生の時は校歌とセットで覚えてました(*^O^*)♪
    ♪いーまは、ももふね もーもちぶねー のところが特に好きです。
    市歌がこんなに浸透してる所も珍しいんじゃないかと思いますが、はまっこの地元愛が強い証拠ですね。v(○^ー^○)vエッヘン

  3. 横浜院長 より:

    お母さんへ
    過食嘔吐は過食の成分になりますので、次回をお待ち下さいね。
    mos-mosさん
    作詞は森林太郎=鴎外なんですね。さすが横浜です。
    ちなみに、私の大先輩だったりもします。
    ついでに、私の出た高校の校歌は山田耕筰作曲だったりします。

  4. 摂食障害の娘を持つ母 より:

    そうなんですね。
    目的が痩せるということだし、吐いてしまうので 拒食の成分だとばかり思いました。
    また 内容的にも娘そのもののような気がしたので。
    だとすると過食の成分てなんでしょうね?
    お話し 楽しみにしています。

  5. まねきねこ より:

    富岡製糸場の世界遺産認定に、群馬県は県民挙げて盛り上がっていますよね。もし、鎌倉が世界遺産に認定されても、盛り上がるのは鎌倉市民で、神奈川県民全体と言うわけにはいかないのではないかとやな予感。神奈川県は市単位で独立性が強いですからね、鎌倉が世界遺産に認定されないのも、県民一体となった盛り上がりに欠けるからなのではないかと、私は考えるのです。箱根とセットに、富士山も見えるのですから、いっそ、山梨県と静岡県と「3国同盟」で富士山、箱根、湘南、鎌倉で世界遺産に押したらよかったのでは?とも思います。
     さて、摂食障害、私は薬の副作用なのか、更年期障害なのか、病気の症状の一つでもあるのか、異常な食欲に悩まされる時があります。夜、寝る前あたりにお腹が空いて、我慢しているとイライラするし、胃がミシミシっとしてくるので、チーズを一個だけとか食べるのですが、一度食べだすと止まらなくなりします。バルプロ酸は、食欲増進の副作用があるのでしょうか?セロクエルも怪しいのですが。精神疾患の多くの人が、異常な食欲に困っていますよね。異常な食欲を抑える薬はあるのでしょうか?巷では、ハゲの薬とデブの薬はどっちが早く世に出るのだろうか?と言われていますが・・・マジンドールと言う薬は、効き目があるのでしょうか?先生は、食欲抑制剤みたいな薬は使っていますか?

  6. まねきねこ より:

    追加です。横浜市歌は、森鴎外先生の作詞なんですよ。是非!

  7. 横浜院長 より:

    まねきねこさん
    食欲を抑える薬・・・よく聞かれるのですが、いつも答えは同じ。「毒しかないですね−」
    精神科・心療内科の薬は基本的に元気を出すためのものですから、食欲も出るものがありますよね。食欲を落とす=元気をなくす、ですから毒しかないわけです。
    マジンドール(商品名サノレックス)は高度肥満専用(BMI35以上、160cmなら90kg以上)ですが、アンフェタミン類似の精神刺激薬です。頼まれることもありますが、精神刺激薬は相当慎重な扱いが必要です。私は医師になってから一度も出していないと思います。
    まあ食事量の計算と適度な運動が王道ですよね−。

  8. 匿名 より:

    まねきねこさんは鎌倉の人なんですか?
    「神奈川の掟」って本ありますが、その通りと思います。まさしく関東のユーゴスラビア状態ですよね。